子供の英語教育

2022年1月31日

知育

第一章 遊びながら音を覚える

娘にとって初めての英単語(Apple)

ベビーカーから眺める綺麗に光るリンゴたち。日本の物よりも少し小ぶりな赤いリンゴの隣には緑色のリンゴが山のように積まれています。

ここはシンガポールのスーパーマーケット。

Good morning, Baby!! How are you doing today?
(赤ちゃんおはよう! 今日の調子はどう?)

英語圏の国に「いらっしゃいませ」という言葉はありません。その代わりお店に入ってきたお客さんと店員さんは、”Hello!!” とか、“Hi”などとあいさつを交わします。

シンガポールも同じように毎日同じ時間に出勤するように現れる私たち日本人親子に気さくに挨拶をしてくれました。

いつもニコニコ笑顔の娘は若い店員さん達に可愛がられ、レジの下に隠しておいたケロッグの景品のお皿やコップ、時にはぬいぐるみまでよくもらっていました。

娘が言葉を覚え始めたある日、売り場に並ぶリンゴの山の前で「アレー!アレー!」と、ぐずりだしたのです。いつも気になっていたのでしょうか。リンゴが欲しいというのです。

そこを通りかかった店員さんが、
“Jasmin! Do you want to have some apples? Here you are.”
(ジャスミン! リンゴがほしいの?はいどうぞ!)
*なぜか娘はジャスミンと呼ばれていました。
といって、リンゴを一つ娘に持たせてくれました。

まあるくて綺麗なリンゴを手に持ちすっかり満足そうな娘に、店員さんが
“This is an apple. Say Apple!” (これはリンゴだよ。Appleっていってごらん)
と話しかけてきました。

もちろん発音できるわけもなくこの日は家に帰り、ありがたくいただいたリンゴを食べたのですが、リンゴを持たせてもらうということにすっかり味を占めた娘は、来る日も来る日もリンゴの前で「アレー!」と言うのです。

その日から、どの店員さんにも”Jasmin にリンゴを渡す”という謎の日課が出来てしまいました。
そして、”Apple“という言葉を娘に教えてくれたのです。

これが娘にとっての初めての英単語となりました。数日後、娘はリンゴの山を見て「ハポー!」と発音していました。店員さん達の言葉を聞くままに発音した結果、発音は「アップル」ではなく「ハポー」となったのです。

聞こえてくる音をそのまま発音する(フォニックスメソッド)

現在日本中にある子供向け英会話教室のほとんどが、このフォニックスメソッドを取り入れていると思います。

フォニックスメソッドとは、英語を発音するうえで必要な音から英語を学ぶ方法のことです。

日本人の小さな子供が言葉を放し始めるときも、文法から習得する子供はいません。まず、目に見えるビジュアル(ママの顔)と「ママ」という単語が一致した時に、これは「ママ」だと認識します。シンガポールのスーパーマーケットでAppleが丸くて赤い果物だと認識した娘の状態とよく似ています。

では、英会話教室では子供達にどのようにして単語を教えるのでしょうか。

まず先生は教科書の絵や写真、カードなどを使ってビジュアルを示します。そして、その示しているものを発音していきます。先生が言う単語を子供達に繰り返し発音させていきます。

フォニックスメソッドはこの時に、一つ一つの音を分解して教えます。

例えば、Aであれば「エイ」ではなく「ア」と発音します。Bの場合には「ビー」ではなく「バッ」と発音。単語として使用されるときに発音される音で発音していきます。

Apple→ア、ア、ア、アポー のようにAの音が単語の中でどのような発音をしているのかを教えます。

フォニックスメソッドの凄いところは、一つ一つのアルファベットがどのように発音されるのかを知ることで、人が言った言葉を聞いただけでスペリング(書くこと)できるようになるのです。

さらに英語の発音はアルファベットの数だけではありません。母音(a, e, i, o, u)と組み合わされて発音するもの、ph, sh, thなど子音を2つ組み合わせて発音する単語も出てきます。また、単語の最後につく発音しないe や、tやdなど単語の中に入ると消えてしまう消音など、フォニックスでは英語で発音する音の種類を隅から隅まで教えていきます。

すべての音を含めて、英語には1800の音があると言われています。50音しかもたない我々日本人が英語の発音に苦しめられるのも無理はないのです。なぜかって、今まで聞いたことも無い音を発音しなければならないのですから。

大人になってからこの音全てを発音することは不可能に近いですが、まだ言語の発達が発展途上の子どもたちは、いとも簡単に新しい音を認識していきます。

例えば日本語にはないRの音も、ごく小さな子供であれば簡単に発音することができます。そして、自分が発音できることによって、人が話している音も聞き分けられるようになるのです。

よくLとRの違いがわからないと言いますが、3歳からフォニックスを習っていた娘に言わせるとLとRは全く別物らしく、何故聞き分けられないのかもはやわからないそうです。

余談ですが、Thursday(木曜日)のThの音は、カタカナで書くと「サーズデイ」と書かれることが多いのですが、小さな子供には「スーズデイ」に近い音に聞こえているようです。

このように、一旦カタカナ英語を知ってしまった大人の脳とまっさらな状態に近い子供の脳では、聞こえてくる言葉の音がそもそも違ってしまうのです。

フォニックスを学ぶ適齢期

どの英会話教室のホームページを見ても、フォニックスの適性年齢があまり明確には記載されていません。

ではいつ頃が、フォニックスで英語を学ぶ適齢期なのでしょうか。

私の経験上、耳から入ってくる音を素直に発音できるようになるのは、ローマ字やカタカナ英語が入ってくる前だと思います。具体的な年齢は人それぞれだと思いますが、一旦カタカナ英語を耳に入れてしまうと同じ英単語が別の発音になってしまい、本当の発音に近づくことが難しくなってしまうのです。

例えば、紫は英語で「パーポー(purple)」のように発音します。2歳までシンガポールで育った娘は、色を英語で覚えていました。日本に帰国後、日本の保育園に通い始めたので、友達にもわかるよう日本語で「青」や「赤」を教えました。しかし、「むらさき」という日本語が娘には難しかったようで、どうしても「パーポー」になってしまうのです。先生達が笑って「そうだね、これはパープルだね」と同調してくれていたのですが、娘には「パーポー」と「パープル」が同じことを示しているとは思えないのです。

それほど、カタカナ英語と本来の発音はかけ離れているのです。

子どもが日本で育っている場合には、カタカナ英語が耳から入ってしまう確率は格段に高くなります。そのため、もし子供にフォニックスで英語を習わせたいと思っているのであればできる限り早いうちに、できるならば日本語を覚え始めたころに開始する事が妥当だと思います。

「耳から入ってくる音をそのまま素直に発音できる時期」がフォニックスに最適な時期だと言えます。

めちゃくちゃ楽しい英会話教室

幼児の英語教育は、とにかく楽しいです。フォニックスを教えるにも、全てが遊びの要素で満たされていなければ子供の興味をひくことはできません。

英会話教室の先生達は常に子供達の興味がどこにあるのかを探っており、小さな子供であれば塗り絵やシール貼りを取り入れたり、小学生であれば人気のアニメを登場させたり、いつも敏感に研究しています。

娘が日本で英会話教室に通い始めたのは3歳の頃でした。優しいイギリス人の男性の先生でしたが、「初めて見る男性」を怖がってしまった娘はしばらく一人で教室の中に入ることができませんでした。それを数か月かけて少しずつ少しずつ私から放し、最終的には先生のことを大好きにさせてしまいました。

クラスはいつも5-6人の同じような年齢の子供達がいました。小さな頃は歌を歌ったり、踊りを踊ったりということを授業の中に取り入れていて、上手にフォニックスを教えていました。

子どもが少し大きくなると、もう歌や踊りには興味を示さなくなるので、今度はボールを投げたりゲームをしたり、いつも大きな笑い声が教室の中から聞こえてきました。そして時には教室の壁がドシンと揺れていることも…。

不思議に感じるのは、英語ネイティブの先生と子供達が常に通じ合っているということでした。レッスン中にするゲームのルールなども全て英語で説明されているのに、皆よく理解して楽しく過ごしていました。

文法など余計なことを考えすぎない子供達には、英語の先生の言葉が自然に理解できるのではないかと感じます。

第二章 小学生の英会話

恥ずかしさが出てくる時期

小学校低学年の頃、キャッキャと楽しそうに笑ったり歌ったりしていた教室が、いつのころからかとても静かになりました。

3年生か4年生の頃だったでしょうか。誰からともなく突然子供達の中に訪れる「静けさ」。
彼らは無邪気だった幼児期をいつの間にか卒業し、恥ずかしさを感じるお年頃になったのです。

誰が一番大きな声で発言できるかを競い合っていた小さな頃からは打って変わり、「できることならこの場で発言したくない」という謎の雰囲気に教室中が包まれてしまいました。

こうなると先生は、何を聞いても反応が薄く、蚊の鳴くような小さな声で返事をする子供の声を聞き逃さないように耳を澄ませて英語を教えなければなりません。傍から見ていて、先生がとても気の毒でした。レッスン中ずっと教室の中がシーンと静まり返っているのですから。

フォニックスレッスンは淡々と続行していましたが、あわせて、この時期には少しずつ自分で短い文章を作る練習も始まっていました。しかし、頑なに発言することを拒んでいる相手に言葉を教えることは、ほぼ不可能に近い状況だと感じました。

ローマ字とカタカナ英語

2年前、日本中の学校がコロナウィルスの影響で休校となりました。それまで政府が計画していたGIGAスクール戦略は急ピッチですすめられ、とうとう全国の小中学校にタブレットが配布され始めました。

コロナウィルスの影響で、世界の先進国の中で最低レベルのIT遅滞国だったことが露呈してしまった日本ですが、今後を担う子供達にはどうにか教育していかなければならないのです。

まだまだ始まったばかりの戦略ですが、PCを使用しての授業では必ずローマ字変換が必要となります。そのためタブレット配布に先駆けて、小学校でもローマ字の勉強が始まったのです。

小学生は現在1年生から英語の授業を始めていますが、ローマ字を教えることは英語を発音から覚えることの妨げになっているのではないかと密かに思っています。

前の章でもお話しましたが、日本語には50音しかありません。濁音などを含めてもせいぜい100音あるかないか、くらいなのではないでしょうか。

ローマ字で日本語を書くことにより、英語の発音をこの50音に当てはめて表現できるのではないかという錯覚に陥るのです。これが、いわゆるカタカナ英語の始まりになります。

例えば、前にも出てきた「パーポー(purple)」をローマ字読みすると、どうしても最後にLがついているためLの発音である「ル」を読みたくなってしまうのです。

こうしてカタカナ英語である「パープル」が出来上がってしまう、というわけです。

日本人の子供達が、カタカナ英語とフォニックスで習得した発音のどちらを使用するかと言うと、発音が極端に少なくて済むカタカナ英語を使用する方が断然簡単なのではないでしょうか。

こうして小さな頃に習得したフォニックスでの発音はどんどん退化していってしまうのです。

日系カナダ人の家庭は何語で話しているか

逆もまたしかり。私の友達の日系カナダ人の家庭で見た面白い話をします。

ご両親は2人とも日本人でしたが、夫婦が若い頃カナダへ渡りました。ご夫婦はカナダの地で3人の子どもを産み育てましたが、3人とも日本に興味はあるものの日本語がほとんど話せないのです。

私の友達は3兄妹の一番下の弟でしたが、一度カナダのお宅に遊びに行ったことがありました。その時に見た衝撃的な光景とは、両親は日本語で話しているのに、子供達は皆英語で返事をするのです。

何故こうなってしまったのか尋ねてみましたが、恐らく学校に行き始めたころからこうなってしまったということでした。

もっと小さなころは、家の中でお母さんと日本語で話していたとのことですが、学校に通い始め、友達と過ごす時間のほうが長くなり始めることで、英語の会話のほうが楽になってしまったのだそうです。

小さな頃に習得した日本語は、時とともに退化してしまったというわけです。
(家族が家の中で日本語を話していても、です。)

全てプライベートレッスン(オンライン英会話)

あまりに盛り上がらない英会話教室でのレッスンを見かねたことと、コロナウィルスにより全員がマスク着用となってしまったことで、娘は予てから興味のあったオンラインレッスンに切り換えました。

私は、英語の発音を習得しようとするときに、先生の口の動きが見られないことと自分の口の動きを先生に見せられないことは、非常にマイナスなのではないかと感じていました。そこで、思い切って、オンラインで英会話を教えている教室の体験レッスンを片っ端から受けさせてみたのです。

ほとんどの教室が、SkypeかZoomを利用してレッスンをしていました。

また、オンライン英会話は、グループレッスンを自分から予約しない限り全て1対1のプライベートレッスンとなりますので、以前のように蚊の鳴くような小さな声でボソボソを話していては相手に何かを伝えることはできません。

そして、プライベートレッスン中は思いのほか集中力が必要になります。今まで教室にいる何人かに分散していた先生の目が、全て自分に集中されてしまうのです。つまり、休憩する時間がないのです。経験するとよく分かるのですが、プライベートレッスンは疲れます。そのため、オンライン英会話は1コマ25分程度と短く設定されており、短時間で集中的にレッスンを行います。

また、教科書だけを進めていくだけではなく、「今日これから何するの?」とか「ランチに何食べたの?」などというフリートークが多いです。そのため、答えられないところも多々出てくるのですが、先生に誘導されながらなんとかして先生に伝えられるようになっていきます。

そして、ここではかつて英会話教室で習得したフォニックスが非常に役に立ちます。

先生は、マレーシア、フィリピン、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、南米等様々な国の方々が現地からオンラインの画面に入ってきます。カタカナ英語で話しても先生が理解できないのです。

娘の様子を見ていると、フォニックスレッスンで習った発音を駆使して先生に何かを伝えることに必死になっています。この様子を見ていて、幼児の英会話教室からオンライン英会話に切り換えたことは非常にメリットが多かったと感じています。

オンライン英会話のデメリットは、リスニング力がある程度ない場合、少し難しいかと思います。ある程度先生が何を言っているのかがわからない場合、25分間という短いレッスン時間に何が行われているのかわからないまま終わってしまう可能性が考えられます。そのため、オンラインに切り替える前に、通常の英会話教室でレッスンを受けてから切り替えたほうが理想的だと思います。

日本人としてのアイデンティティー

シンガポールで暮らしていたころ、娘はまだ小さな赤ちゃんで学校に通うことなど遠い先のことのように感じていました。しかし、いつも公園で遊んでくれていた少し大きな子供達のママは、しきりに子供達の進路のことについて話し合っていました。

子どもを地域のローカルスクールに入学させるべきか、日本人学校に通わせるべきか、はたまた日本にあるような私立のインターナショナルスクールに通うべきかという話でした。

一部はローカルスクールで地元の子供達と一緒に勉強することになりましたが、ほとんどの子供達が日本人学校に通う選択をしました。

せっかく英語圏の国にいるのに、何故わざわざ日本人学校で日本語の教育を受けさえたいのか、当時の私には理解できませんでした。

しかし、そこには切実な理由があったようです。

親が日本人である以上、いつか皆、日本に帰る日がやってくるかもしれません。

現地の学校でシンガポール人と一緒に学ぶことも楽しい思い出となりますが、前述した日系カナダ人家庭のように、学校に通い始めることにより、子供達は急速に学校の友達と話す言語が標準語となってしまうのです。子供達が新しいことを吸収する力は大人が思っているより早く、日本語で考えるより英語で考え事をするようになっていくでしょう。

もし、日本への帰国が決まった場合、子供達は日本語のみで生活することになります。

慣れ親しんだ英語での生活から離れ、慣れない日本語で一から友達を作り授業も全て日本語で受けることになります。

自分が産まれた場所から離れ、違う言語と異なる文化の中にいきなり入れられることは、子供達にとってどんなにストレスになることでしょう。

そのため、ほとんどの家庭が少しでも日本と似た環境で過ごすことできる日本人学校に入学することを選択していたのです。

海外で暮らしているとき、自分が日本人であることを常に感じます。故郷を懐かしく思う気持ちや帰りたくなる場所があることは、人としてとても大事な事のように感じます。自分が何者なのか、自分の原点はどこにあるのかということなしで、言語の習得はできないのかもしれません。

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