過剰歯ってなに?全身麻酔で抜歯手術!

2022年4月8日

子育て

第1章 過剰歯の発見

私には小学1年生の長男がいます。
今回はその長男に過剰歯が見つかったお話です。

小学校入学前の就学時健診で歯科を受診した際、幸い虫歯がなかった長男。

少し乳歯が抜けるペースが他の子よりも遅かったのは少し気になっていましたが、個人差もある事だし、12月生まれだからゆっくりなのかな?程度に考えていました。

通常は3ヶ月に1回、かかりつけの歯医者で定期検診に行っていたのですが、長男の小学校入学の頃はまだ新型コロナウィルスの感染が心配される時期でした。

就学時健診や入学後の学校内での歯科検診も問題がなかったため、かかりつけ歯科の受診にも足が遠のいていたのが実際のところです。
ようやくコロナウィルスも一時的に落ち着いたかな?と感じた8月、久しぶりにかかりつけの歯科を受診することに。

歯科受診の結果、虫歯はなく、歯のクリーニングとフッ素の塗布を受けました。

しかし、先生はなぜか不穏な表情。
あれ?と思っていると、先生から「A君、ちょっと過剰歯の疑いがあるのでレントゲン撮りますね。」と告げられました。

カジョウシ?何だろう?と正直すぐには思い浮かびませんでした。

レントゲン写真を見た先生が「やっぱりそうだねぇ。」と言っているのが聞こえます。
何か悪いものなのかな…と心配していると先生から呼ばれました。
「A君は上の前歯に『カジョウシ』があります。過剰な歯と書いて過剰歯と言います。」
「なるほど、過剰歯。」と答えました。

レントゲン写真を見せながら先生の説明が始まります。
「これが今ある乳歯です。その奥のこの歯茎に中に埋まっている二本が過剰歯です。」
確かに、レントゲン写真には歯茎の中に埋まっている二つの影がありました。

先生は続けて「過剰歯にもいろいろあって、放っておいても悪さをしないものもあります。この場合は無理にいじらず、そのまま放っておいても大丈夫なのですが。
A君の場合、ちょっとそのままにはしておけないので、おそらく抜歯手術になると思います。
このままだと生えてくるはずの永久歯を圧迫してしまって、永久歯が生えてこれないと思います。仮に生えてきても曲がった状態になってしまうので、抜歯が必要でしょう。」

「そうなんですね…。わかりました。ちなみに6月に校内の歯科検診をしたときには問題ないと言われたんです。その時にはわからなかったんですかね?」と私は聞きました。

「過剰歯は実は見つけるのがとても難しいんです。たまたま虫歯の可能性があってレントゲンを撮ったとか、けがをしてレントゲンを撮ったときに見つかるというのが多いんです。
A君の場合は虫歯はなかったんですが、私は乳歯が抜ける順番がちょっと変だったのが引っかかったんです。通常は二本の前歯が抜けて、そのあと隣の二本が抜けるんですが、A君は逆ですよね。」と先生。

そうなのです。実は長男は乳歯が抜ける順番がちょっと変わっていました。
下の歯は通常通り前歯から抜けたのですが、上の歯は前歯が抜ける前に隣の歯が抜けたのです。

でも、上の前歯もグラグラしていたし、近いうちに抜けるだろうと軽く考えていました。
何よりも、私にとって長男は第一子だったため今まで乳歯が抜ける経験がなかったことが影響したように思います。
二人目であれば、あれ?抜ける順番が変だな?ともう少し気にかけていたかもしれません。

「そうなんですね。もう少し早く連れてきてあげてればよかったですね…。」と悔やんでいる私に、先生は「まあ早いに越したことはなかったかもしれませんが、まだ対処ができる時期なので全然大丈夫ですよ!永久歯が斜めに生えたり、すき間が空いてきて気づく、というパターンもありますから。」とフォローしていただきました。

「ただ、うちの病院では手術ができないので、小児医療の専門病院に行っていただきます。今、紹介状を書きますね。」と先生。

普段は暴れん坊のくせに、いざとなると心配性で怖がりの長男は先生と私の話を聞いて心配そうな顔できょろきょろしています。

「抜歯手術ですか…。痛いんですかね?」と私が聞くと、
「おそらく全身麻酔になるので痛みはほとんどないでしょう。」と先生から一言。
「痛くないって。良かったね。」と長男に告げましたが、長男は変わらず不安そうな顔。
「やりたくない、やだ。」と何もしていないのに、すでに泣きそうな顔をしています。
「大丈夫だよ!眠ってる間に終わるから!全然痛くない!お兄ちゃんだもんね、頑張れ!」と先生に後押しされました。

紹介状を受け取ると「専門病院に電話していただいて、『過剰歯が見つかったので受診してくださいと言われた、紹介状ももらっています』と伝えてください。」と言われ、この日の診察は終了。

すぐに電話で予約しようかと思いましたが、もう受付時間外のため明朝に電話することにしました。

帰宅後、過剰歯についてインターネットで調べてみると実は割とよくある症状のようでした。
30~40人に一人程度に起こり、特に男性に多く見られるとのこと。
はっきりした原因は不明ですが、あごの骨の中にできる歯胚(歯の元となる卵)が余分に作られたり、分裂することでできると言われているようです。
知らなかったな、と感じたとともに40人に一人程度と比較的高い割合で起こっていることに少し安心もしました。

しかし、反対に疑問も多くありました。
長男にはまだ乳歯が二本とも残っています。この乳歯についてはどうなるんだろう?
全身麻酔って大丈夫なのかな?など、考え始めると色々と不安が募ります。

いつもは電話予約と言われると少し面倒に感じてしまう私ですが、今回ばかりは翌日、病院が開始してすぐに予約の電話をしました。
歯科外来に電話の取次ぎをお願いし、かかりつけで指示を受けた通りに過剰歯が見つかり手術を勧められたこと、紹介状をもらったことを伝えました。

すると、最短で予約が取れるのが翌週になるとのこと。
「初診なので書類の記入が必要になるため、30分くらい早く来てください。」と告げられました。

翌週、初めて小児医療専門の病院に訪れた私たち親子。
初診のため問診票を記入。既往歴やアレルギー、予防接種歴など驚くほど細かく記入します。これは確かに30分の余裕が必要かもしれません。

記入が終わり、ようやく歯科外来へ。
歯科外来に向かう途中に、レントゲン室や心電図検査室などの検査室の横を通ります。
あちこちにたくさんの本が置いてあったのが印象的でした。

歯科外来に到着し受付を済ませます。
長男は新しい病院に少し緊張しながらも、たくさんの本に満足しあれこれ読んでいます。
しばらくすると診察室に呼ばれました。

まず軽く問診を受け、かかりつけ医で過剰歯が見つかったことを説明します。
その後、長男の口の中を先生が確認。
「過剰歯ということなので、おそらく手術が必要になると思います。でも、まずはこちらでもう一度レントゲンを撮ります。そちらを見て、手術が必要か判断します。」と先生。

通ってきたところにあったレントゲン室でレントゲンを撮り、再び歯科外来に戻ります。
改めて、レントゲン写真を見て先生からお話。
「A君の過剰歯は、やはり抜歯の必要がありますね。過剰歯は必ずしも抜歯しなくても良い場合もあるのですが、A君の場合は二本の過剰歯があり、永久歯が生えてくるのをジャマしてしまっています。また、過剰歯がさかさまに生えているのでこのまま自然に出てくることもないので抜歯が必要でしょう。」

「わかりました。まだ乳歯が生えているのですが、時期としてはもうすぐにでも手術した方がよいのでしょうか?」と聞き返しました。

先生は続けて、「乳歯についてはもうグラグラしていてすぐにでも抜けてしまうので、問題ないでしょう。これだけグラグラだと、日常食事をするときもほとんど使っていないと思います。」と告げました。

目からうろこでした。確かに。よく考えたらグラグラの前歯では食べ物をかみ切ることはできないから、現段階でもほとんど使っていない。
前歯がなくなることばかり心配していたけど、そもそも使っていないのだから心配の必要はなかったのでした。

「手術の時期についてですが、できるだけ早い方が良いと思います。このまま過剰歯がジャマをしていると永久歯の歯並びが悪くなり、矯正器具を使う必要があります。早い段階で抜歯した方が永久歯の歯並びにも影響を与えにくくなります。
さらに、過剰歯も歯なので成長するとどんどん大きくなっていきます。大きくなるほど手術が難しく、手術後の穴も大きくなるためできるだけ早い段階での抜歯をお勧めします。」と言われました。

第2章 過剰歯の抜歯に向けて 術前検査

医師の話しが終わり、さらに「時期はどうしますか?」と確認され、「待っていても良い事がないのであれば、早めにお願いします。」と私は答えました。

「それでは、手術のスケジュールを確認しますので少々お待ちください。」と先生。
パソコンで日程を調べながら、「あ、ちょうど来週の月曜日にキャンセルが出て、手術できそうですね。最短で、来週の月曜の午前中に取れますよ。この日にする場合、今日この後術前検査を受けてもらって、問題がなければ手術するという形になります。どうされますか?」と聞かれました。

「じゃあ、そこでお願いします。」と答えました。
「承知しました。じゃあ来週の月曜の午前中ですね。ラッキーですね。今通常2ヶ月くらいはお待ちいただいてるんですよ。…それじゃあ、この後術前検査と手術の説明を受けてもらいますね。手術後にCT検査があります。あまり不安になりすぎる必要はないのですが、CT検査には放射線被ばくがわずかながらありますので、こちらお読みいただいてサインをお願いします。」と先生。

小児CT等についての重要性とその被ばく量の説明が記載されており、確認の上サインしました。
続けて、「検査にはどのくらい時間かかりますか?」と確認。下の子どもたち二人も連れてきてしまったため、あまり遅くなると二人の機嫌が悪くなる…と少し心配に。
「混み具合にもよるけど、2時間弱くらいで終わるかな?今2時半だから4時過ぎくらいには帰れると思いますよ。」との答えでした。
4時に終わるならどうにか大丈夫かな…。と少し安心しました。
「それでは、一度待合所に出ていただいてお待ちください。担当の看護師がうかがいますので。」と先生に言われ、診察室を出ました。

待合所で待っていると看護師さんが来て、「それでは術前検査の案内をしますね。よろしくお願いします。少し項目が多いけど頑張ってね。」と言われました。
「よろしくお願いします。」と私は答え、長男はそわそわしています。

「検査は全部で5つ。身長体重測定、採血、心電図、レントゲン、PCR検査があります。最初に身体測定の場所までご案内するので、一緒に行きましょう。他は歩きながら説明しますね。」と言い、身体測定の場所まで案内されました。

「こちらが心電図とレントゲンのお部屋です。後ほどこちらで検査を受けてくださいね。外来の検査受付はこちらなので、レントゲンと心電図をとるときにこちらにファイルを出してください。PCR検査のキットもこちらに提出してください。
この先が身体測定、採血の検査をするところです。受ける順番はどこからでも大丈夫です。空いているところから受けてください。今、身体測定が空いてるからこちら、A君受けちゃいましょうか?」

長男が身体測定をしている間に、看護師さんが説明を続けます。「検査のうちPCR検査はこのキットをお渡しするのでお母さんがやってください。今少し、使い方を説明しますね。」

おぉ、よく見る検査キットだ!と思い、ついまじまじと見てしまいました。20cmほどのプラスチックケースと長い綿棒、名前の書かれているシールが入っています。
「こちらの綿棒を鼻の奥に2cmくらい入れていただいて、くりくりっと鼻の中で回してください。触らないように気を付けていただいて、このケースに入れてフタをしてください。ビニール袋に入れたまま外来の検査受付に提出してください。こちらにも説明が書いてありますのでもしわからなかったら参考にしてください。」と言われ、「はい」と答えました。

ちょうどそのタイミングで身体測定を終えた長男が戻ってきて、「それでは、こちらを参考に検査を受けていただいて、全部受け終わったらまた歯科の受付にいらしてください。」と看護師さんにピンク色のファイルを渡されました。

ファイルの中には、カルテのようなものと受ける検査とその場所が写真付きで書かれた紙が入っており、シールが4枚入っています。よく見ると各検査の写真のところにシールを貼る場所があります。
4つ全部シールを貼り終わったら、歯科に戻るようです。

初めての検査に少し緊張気味の長男ですが、続けて心電図とレントゲンの検査に向かいました。
外来の検査受付にファイルを提出すると、「では、心電図の検査を受けてください。心電図のお部屋の前にポストがありますので、そちらにファイルを入れて、長椅子にかけてお待ちください。」と言われました。

心電図の検査室の前にあるポストにファイルを入れ、長椅子に座って少し待っている間にPCR検査をしました。
鼻の奥に綿棒を入れられた長男は「痛い、痛い!」と涙目になっています。
「ごめん!ごめん!」と謝りながらどうにか終えました。

そのうちに、心電図検査室の看護師さんから「A君、どうぞ。」と呼ばれました。
長男は「一人で大丈夫かな?」と確認され、「うん。」と答えました。
「では、お母さんはそのままお待ちください。」と言われ、私は長椅子で待つことに。

数分後、長男が戻ってきて「終わった。」と言い、看護師さんからファイルを渡され、同じようにレントゲン室のポストにファイル入れ、レントゲン室前で待ちました。

すると「A君。」と呼ばれ、こちらも一人で検査を受けました。
レントゲン技師さんからファイルを返却されながら「それでは、再度検査の受付に戻っていただいて、こちらでの検査は終了ですね。」と言われました。

先ほどのPCR検査のキットとファイルを提出すると、「それではあとは採血ですね。先ほどの身体測定のお部屋でお願いします。」と告げられました。
最後の難関、採血検査。長男は、苦手な注射でブルーになっています。採血のお部屋に来ると、こちらでも看護師さんに「一人で大丈夫かな?」と聞かれ、一人で採血に向かいました。

長男は昔、予防接種を受けるときに名前を呼ばれたら「違います!僕じゃありません!」と告げて逃げ回っていたな…なんて思い出していると長男が戻ってきました。
少し涙目になってはいますが、もう逃げずに一人で注射を受けられます。
成長したなぁと思わぬところで少し感動しました。

「よく頑張ったね、お疲れさま。」と頭をなでてあげると、照れくさそうにしながらもうれしそうな長男。
これで晴れて、術前検査が終了しました。

すべての術前検査を終えて、歯科外来の受付に戻ってきた私たち親子。
受付にファイルを提出し「すべての検査が受けられましたかね?」と聞かれ、「はい。受けました。」と答えると「それでは、本日最後に麻酔科の先生から説明と確認がありますのでお待ちください。」

さすがに下の二人も疲れてぐずり始めました。「あとちょっとだから!頑張ろう!」と言いながら待っていると、麻酔科の先生から「Aくん。どうぞ。」と声がかかりました。
お部屋に入ると子ども向けのDVDが置いてあるのが見え、子どもたちはすでにそちらに群がっています。
「こちらにどうぞ。麻酔の担当をさせていただきます。」と女性の先生が告げました。
「DVD観たい?いいよー。なにがいい?」と子どもたちの好みのDVDをみせてくれました。
「ありがとうございます。もう疲れちゃってて機嫌悪かったので…助かります。」と言うと、「疲れちゃうようねぇ。大事なことはちゃんと話して、できるだけ早く終わりにするからちょっと待っててねぇ。」と答えてくれました。

「それでは、麻酔と入院の説明をさせていただきます。全身麻酔は初めてですかね?色々心配かと思いますが、安心してくださいね。
まず、今回の全身麻酔は埋没している過剰歯の抜歯手術のために行うものです。
全身麻酔を伴う手術ですので、日帰り入院ということで術後約半日、院内で過ごしてもらいます。

手術の前日は21まで食事を摂取できますが、それ以降は食べられません。当日は7時までお茶やお水、スポーツドリンクを200ccくらい飲めます。それ以降は何も飲食禁止となります。これは絶対に守るようにしてください。

全身麻酔では、のどに管を通すため術後にのどの痛みや声のかすれ、歯がぐらつくことがあります。これはわりとよく起こりますが、数日中に良くなると思いますので様子を見てください。
非常にまれに、臓器障害やアナフィラキシーショックが起こることがあります。万が一、このような事が起こったとしても、こちらは小児専門の総合病院です。最善を尽くしますのでご安心ください。
全身麻酔での医療事故はほとんど起きてはいないのですが、それは体調が万全であることが前提です。軽い風邪でも引いていると思わぬリスクもありますので体調管理には十分気を付けてください。」と伝えられました。

「わかりました。気を付けるようにします。」と返し、「よろしくお願いします。それでは、手術後、経過を見ながら少しずつ飲み物と軽食が出ます。飲み物はお水、お茶、スポーツドリンクから、軽食はゼリー、プリン、ヨーグルトから選べます。何にしますか?」と返されました。
甘党の長男は迷わず「スポーツドリンクとプリン!」と答えます。
「はい、わかりました。それでは、質問等なければこちらで終わりになりますが、なにかありますか?」「いえ、大丈夫です。」「それでは書類をそろえて、本日はこれで終わりになります。書類をそろえるまで少々お待ちください。」
子どもたちはおとなしくDVDを見ています。

麻酔についての説明や入院についての計画書、同意書等の書類をそろえて渡され、「お疲れさまでした。では、最後に受付に行っていただいて終わりです!」。
最後に再度、歯科の受付で手術当日に必要な持ち物、時間、当日の動き方を説明され、お終いになりました。

一日ですべて終わってよかったと安心した半面、とても疲れた一日でした。

第3章 過剰歯の抜歯 手術当日~術後

術前検査を終えて五日後。
ついに抜歯手術の前日となりました。

説明を受けたとおり、手術前日の食事は午後9時まで。
普段はしませんが、夕飯後に「明日は朝ごはん食べられないからもしまだおなか空いてたら何か食べてもいいよ?」と確認しました。

すると長男は「小さいおにぎりが食べたい」と回答。
眠る前でしたが、特別に小さなおにぎりを握ってあげました。

日帰りとはいえ入院・手術をするため書類もたくさん書きました。
食事はないものの入院のためアレルギーの用紙なども記入が必要に。

持ち物も不安で前日、病院に確認の電話をしました。
必要なものは
● 大中小、三種類のタオルを二枚ずつ
● 前あきのパジャマ
● おむつ二枚

パジャマ、タオル共に病院から貸してもらえ、おむつは購入可能ですが通常よりも高いので、おうちにあれば持ってきてくださいと言われました。
心配であれこれ持ったらかなりの荷物になりました。

手術当日。
この日は朝8時30分に病院に行かなくてはなりません。

先に下の二人を幼稚園に送っていかなければならないため、7時過ぎにうちを出ました。
バタバタと朝の準備をしたため、朝ごはんのことが気にならないほど。
長男は7時から水分補給もできなくなるため、忙しく家を出ることで気がまぎれて、ちょうどよかったかもしれません。
無事、8時20分くらいに病院に到着しました。

手術・入院の場合は、総合受付ではなく直接、歯科外来に直行します。
まだ診療時間前なので待合にも当然人がいません。
すぐに「Aくん、どうぞ」と診察室に呼ばれ、麻酔科の先生が内科健診、当日の体調と食事と水分補給の確認をします。
「前回の検査も問題なく、今日の体調も問題ないのでこのまま手術になりますね。」と先生。

「それでは、こちらに着替えてください。」と看護師さんがパジャマを持ってきてくれました。

長男はちょっと緊張してそわそわ。
私も緊張していましたが、長男に伝わらないよう「大丈夫だよ。」と平静を装いました。
少しすると看護師さんから「では、お隣の部屋にお願いします。」と指示を受けます。

隣の部屋に入ると先生や看護師さんたちが4人ほどと見慣れない器具がたくさんありました。
真ん中にベッドがあり、「じゃあAくん、ここに寝てくれるかな?」と先生と看護師さん。

長男は少しビビりながらも横になります。
すると先生が「じゃあこれからマスクつけるからね、リラックスしてて大丈夫だよ。お母さん、こっちにきて手をつないで手上げてください。」と、酸素マスクをつけます。

ちょっと抵抗するように、暴れる長男。
私は怖くなってしまったのかな?と思い、「大丈夫だよ、落ち着いて」と数回声を掛けましたが、看護師さんからは「もう眠る前の動きなので大丈夫ですよ。」と諭されました。

看護師さんの発言から30秒もしないうちに、長男は眠りにつきました。
病室のベッドに横たわってからわずか1分足らずだったように感じます。
驚くほど、あっという間に麻酔って効くんだなと実感しました。

長男が寝付くと「それではこれから始めます。後ほど受付から説明がありますので、お母さんは待合でお待ちください。」と告げられました。

時計を見るとちょうど9時になるところでした。
待合に出るとすぐに受付で呼ばれ、長男が手術を受けている間の行動を説明されます。
「まず、総合窓口の近くにある入院窓口で、入院についての書類を提出してください。
その後、入院のお荷物を病室に置きに行っていただきます。
入院のお部屋では飲食禁止なので、なにか召し上がりたいときは談話室やロビーを使ってください。
書類の提出後は自由に動いて大丈夫ですが、必ず病院の建物内にいてください。
こちらのPHSをお渡しします。手術が終わった場合などにこちらから連絡させていただきます。
この電波が届かなくなってしまうので、たとえ駐車場でも外には行かないでください。」

まず、指示を受けたとおり入院の手続きを済ませます。
すでに診察時間が開始していて総合の窓口は込み合っています。
入院の窓口は空いていたため書類を提出し、すぐに済みました。

次は、入院のお部屋に。
長期の入院部屋と異なり、歯科外来専用の日帰り入院のお部屋が準備されています。
インターホンを押して入院病棟の中に入れてもらい、看護師さんから部屋の使用方法やトイレの場所を説明されます。
ベッドは全部で4つ、お部屋の中に洗面台とおもちゃ、絵本がありました。
今日は長男のあとにもう一人こちらの部屋を利用するそう。

説明が終わると、私も朝から何も食べていないため今のうちに軽食をとっておこうと思い、入院部屋を出ました。
売店が開店していたため、お茶とパン、少しお菓子を購入しました。
談話室に行ってみると、すでに3人ほどいてそれぞれ本を読んだり食事をとったりしていました。
私も食事を済ませ、ケータイをいじりながら待っていましたがなんとなく居心地が悪く。
もう飲食はしないため、病室に戻ることにしました。

病室で待っていると渡されていたPHSが鳴ります。思ったよりもあっという間で、
時間にして1時間30分程度でした。

歯科外来に向かうと「では、お母さんはこちらで執刀医から説明があります。」と診察室に案内されました。
先日診察をしてくれた先生とは異なる先生でした。
「お疲れさまでした。手術は無事に終わりました。こちらがAくんの抜歯した歯です。」とキレイに洗われた4本の歯がジッパー付きのポリ袋に入れられていました。
見覚えのある乳歯2本と不思議な形の歯が2本。
思ったよりも大きかったです。過剰歯は1~1.5cmくらいありました。

「手術は無事に終わったのですが、傷はかなり大きく開いています。この大きさの歯をとっているのでお分かりになるかと思いますが、上あごを大きく開けて手術をしています。
基本的に日常生活は通常通りにしていただいて大丈夫ですが、それだけのケガをしていると思って生活をしてください。
今日は入浴せず、軽くシャワーで済ます程度にしてください。
1週間くらいは激しい運動はできるだけ避けて、体育も3日間くらいはお休みした方がよいでしょう。
お薬は二種類、痛み止めと抗菌剤を出すので飲んでください。
少しの間はあまり固くない食事がよいでしょう。
傷は縫ってあって、歯茎がしっかりしてくるとぽろぽろっと取れてきます。
来週に術後の診察をするので、くっついていたらその時にとってもよいですし、取るのがいやだったらそのままでも自然に取れてくるので安心してください。
何かありましたら、歯科外来にすぐに連絡していただいて大丈夫ですよ。」

先生はこちらの質問にも答えてくれながら、とても丁寧に、やさしく説明してくれました。
説明の後、診察室を出ると長男もストレッチャーで運ばれてきました。
少し麻酔が切れかかっているのか、もぞもぞと動いています。
「それでは、入院のお部屋に行きましょうか。」と看護師さん。

病室に向かい、ストレッチャーからベッドに移すと長男に異変が。
麻酔が切れて眠りが浅くなり、寝ぼけて暴れだしたのです。
すかさず看護師さんはベッドからの転落を防ぐよう、「お母さんもベッドで寝ちゃってください。」と促します。
長男は半分眠りながら、でもはっきりとした口調で「痛いー!!きもちわるいー!!いやだー!!!」と泣き叫び、暴れています。
口からは手術のあとが生々しく見え、見てるこっちが痛くなります。

「無事に終わったから大丈夫だよ、よく頑張ったね。」とこちらも必死に声を掛けますがまったく聞いていません。
しばらくそのようなやり取りをしていましたが、ふと気づきました。
『あ、そうか。まだ眠いのか。』
そこで声を掛けるのをやめ、長男が落ち着いて眠れるよう添い寝をしてトントン。
だんだんと動きもなくなり、やがて寝付きました。

看護師さんは眠っている間に体内の酸素濃度が低くならないよう酸素を送るマスクを口の周りに置くように説明し、脚の指に酸素濃度を測る機械を取り付けていきました。
併せて、目が覚めて落ち着いている様子だったら水分補給を開始すること、30分置いて異変がなければ軽食を食べ、1時間くらい様子を見て問題がなければ退院できるとのことでした。

長男は1時間半ほど眠り、目を覚ましました。
今度はすっきりと目が覚めたようで、暴れる様子はありません。

私もできるだけ長男が不安にならないよう、いつも通りに「よく頑張ったね、無事に終わったよ。えらかったね。」と声を掛けました。
目が覚めたらナースコールで呼ぶよう指示を受けていたため、看護師さんを呼びました。

看護師さんが病室に来ると長男の顔色を確認し、「もう大丈夫そうだね、飲み物飲めるかな?じゃあ持ってくるね。」と、酸素を測定する機械を外してから再び病室を出ていきました。

もうすっかり普段通りの明るい長男です。
「ベッドに横になったと思ったらここにいる!いつの間に!」と言い、私が「あっという間に麻酔で寝ちゃってたよ。」と伝えると「えー!!」と驚いていました。
「さっき泣いたのは覚えてる?」と尋ねると、長男は「え、ぼくが?…わかんない。」と覚えていないようでした。

そんな話をしているうちに看護師さんが飲み物を持ってきてくれました。
希望していたスポーツドリンクです。
半分程度は寝ていたとはいえ、朝7時から何も飲んでいませんでした。
のどが渇いていたでしょう。
「少しずつ、ゆっくり飲んでね。」と言われ、長男もできるだけちょっとずつ飲みました。

水分補給から30分くらい経つと看護師さんが様子を見に来て、「大丈夫かな?そしたら今度は軽食持ってくるね。」と準備をしに行きました。

お待ちかねの「プリン」。ゆっくりと言われましたが、長男はぱくぱく食べてしまいました。
「口の中が気持ち悪い」と文句を言いつつも、部屋にある本を読んだりおしゃべりをして、すっかり元気になった長男。

看護師さんも「もう大丈夫そうだね。」と笑顔。退院の許可が出ました。

手術から一週間後、再び病院で術後の経過を診てもらいました。
痛み止めを飲んでいたためか、術後、傷が痛むとは一度も言いませんでした。

経過は問題なく、数か月すれば永久歯も生えてくるでしょうとのこと。
引き続き、かかりつけ医での定期検診を受けるよう話されました。
長男も大仕事を無事に終え、安心したようです。

口の中の気持ち悪さが落ち着くまで2週間ほどかかりましたが自然と糸も抜け、1ヶ月程度ですっかりきれいになりました。
手術から3ヶ月ほど経つと、無事に永久歯も生えてきました。

手術から半年ほど経過した現在。
過剰歯の影響で、永久歯は少し曲がって生えてきてしまっているもののまだ大きな問題はないようです。

過剰歯を早い段階で見つけてくれたかかりつけ医にはとても感謝しています。

五年以上子育てをしていて初めて聞いた「過剰歯」。
思っていたよりも多い症例で、場合によっては手術が必要なものでした。
あの発見がなければ手術はもっと大変なものになり、長男にさらに辛い思いをさせてしまっていたかもしれません。

あらためて、定期的な歯科検診が大切だな、と感じた出来事でした。

 

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