3歳以降に始まった反抗期

2021年11月10日

子育て

反抗期を迎えるまで

「育てやすい子」だった息子

 生まれたときからずっと「育てやすい子」と言われていた息子。赤ちゃんの頃から夜泣きも少なく、よく飲み、よく食べる子でした。覚悟して臨んだ卒乳も、初日こそ泣いたものの、翌日からはぐずりもせず、あっさりと成功。私の方が拍子抜けしてしまうほどでした。
 二歳児特有のイヤイヤ期もありましたが、それも許容範囲内。何をするにも「イヤ」「ヤダ」の連発に大変さを感じることもありましたが、きちんと言い聞かせれば分かってくれたので、「これも成長の証拠」と余裕を持って接することが出来ました。泣きわめいたり、暴れたりすることもなかったので、そこまで苦労を感じることもないまま、いつの間にかイヤイヤ期は終わっていました。

 もちろん子育てをしているのだから、大変なことも、辛いと思うことも、悩みだってありました。息子は大人しい性格で、児童館に行っても定位置は私の膝の上。同い年の子たちがママから離れて遊んでいるのを見る度に「ウチの子はこんなに私から離れられないままで大丈夫なのかな」と不安になったり、「言葉が遅いかも」と心配したり……。
 だけど、その悩みは「将来の心配」であり、「現在の悩み」ではありませんでした。
 息子は、多少人見知りはあるものの、元気いっぱいだし、夜泣きもしないし、わがままも癇癪もほぼない。心配事は月日が過ぎればいつの間にか解決していることがほとんどで、「魔の2歳」と言われる時期も、3歳になってからも、息子について現在進行形で悩み続けることはほとんどありませんでした。
 実際、友人の話やネットの情報と比べると、息子の子育ては楽な方だったと思います。月齢や年齢ごとの検診や児童館で、他のママが保健師さんや指導員さんを相手に熱心に相談している姿を見ては、「相談するようなことが何もないけれど、それはおかしいことなのかな?」と、かえって不安になるほど、息子は育てやすかったのです。
 「育てやすい子ほど、成長してからが大変」
 そんな話を耳にする度、「いつか猛烈な反抗期が来たらどうしよう」と不安になりつつも、それは、遠い将来の話なのだと思い込んでいました。
 まさか、その日がすぐ間近に迫っているとは考えもしなかったのです。

初めての「あれ?」

 初めて「あれ?」と思ったのは、3歳半を少し過ぎた頃でした。
 週に一度通っていた幼稚園のプレ教室で、紙コップを使ってけん玉を作成するというプログラムがありました。アルミホイルを丸めて作った玉にヒモをくっつけて、紙コップに貼り付けるという簡単なものです。ものを作るのが好きな息子は、大喜びでアルミホイルをくしゃくしゃにしたり、紙コップにシールを貼ってデコレーションしたりと、けん玉作りを楽しんでいました。
 完成後、さっそくやってみるものの、なかなか玉がコップに入ってくれません。コップの動かし方が難しいらしく、何度やってもうまく出来ませんでした。
 その日は作成がメインだったので、しばらくすると、先生から「そろそろ、絵本の時間にしましょう。けん玉はおうちでやってみてね」と、声がかかりました。
 プレ教室の最後は、先生の絵本の読み聞かせと決まっています。他の子供たちが絵本を持った先生のところへ駆けだしていくのに、息子はというと、けん玉をやり続けたまま、全く動こうとしませんでした。
 「絵本の時間だよ。けん玉はおうちに帰ってからやろうね」
 そう言っても、息子は無視をしたまま、けん玉をやり続けます。何度注意しても、先生に呼ばれても、息子は「イヤ!」「うるさい!」と怒りながら、コップに玉が入るまで黙々とやり続け、結局、読み聞かせには参加しませんでした。
 先生は「出来るまでやり通すのは立派だし、そういう気持ちは大事よ」と言ってくれましたが、今までは素直に言うことを聞く子だっただけに、私にはなかなかショックな出来事でした。

 家に帰ってから「けん玉をやりたかった気持ちは分かるけど、先生に呼ばれたら行かないとだめだよ」と息子に話すと「うん、分かった!」と、いつも通りの良いお返事が戻ってきました。それもあって、ショックを受けはしたものの、私も「今日はどうしてもけん玉がやりたかったのだろうな」と、あまり重く受け止めることはしませんでした。先生が言うように、最後までやり通したいという気持ちを尊重することも大事なのでは、と思う気持ちもあったのです。
 プレ教室での出来事を報告すると、夫も、「そうやって、段々と自分の意思を伝えられるようになるのかもしれないね」と、むしろ好意的に捉えているようでした。息子は内弁慶気味で、家の外ではなかなか自己主張が出来ないところがありました。これから始まる集団生活に向けて、これをきっかけに少しずつ主張が出来るようになればと考えていたようです。
 私も夫も、これが長い反抗期の始まりだとは、露程も思っていなかったのです。

ついに始まった反抗期

 それから徐々に、息子が我を通そうとする場面が増えていきました。自分の思い通りにいかないことがあるとすぐに怒るようになり、物を投げつけるようなこともありました。今までにない行動に戸惑いつつも、最初は、「自我が出てきたということだな」と、私も夫も成長の一環と捉えてゆったりと構えていました。「どうせ一過性のもので、すぐに終わるだろう」と、楽観的に考えていた部分もあったのです。
 しかし、予想に反して息子の反抗はそう簡単には終わりませんでした。それどころか、日に日に増長していったのです。特に、自分に出来ないことがあると激しく怒る傾向があり、うまくいかないと癇癪を起こすようにもなりました。正しい成長過程だと分かっていても、怒り続ける息子と向き合うのは簡単ではなく、叱りつけることが増えていきました。
 その頃にはもう、悠長に構えているような余裕は一切ありませんでした。そして、激しい反抗期が始まったのです。
 
 今、振り返ると、息子が「育てやすい子」だっただけに、私にも夫にも子供の反抗に対して免疫がなかったことが、激化した原因の一つだったと思います。接し方や叱り方も適切ではなかったと、今になってみればそう思います。
 だけど、今まで「育てやすい子」だった息子の突然の反抗期に、どう対処していいのか、あのときは全く分からなかったのです。

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突然訪れた反抗期

常に怒っている息子

幼稚園のプレ教室での出来事をきっかけに、突然始まった反抗期。初めは悠長に構えていたものの、そうは言ってもいられないほどに、息子の反抗は激化していきました。
 とにかく、朝から晩まで常に怒っているのです。
朝、「お洋服に着替えてね」と声を掛ければ「今テレビ見てるから!」と怒る。何度言っても着替えをせず、今度は「着替えないとテレビ消すよ」と言えば、「分かったから!」と答えはするものの、動く気配はなし。ついに痺れを切らしてテレビを消すと「なんで消すんだよ!」と言って、泣きわめく。何とか宥めてようやく着替え始めたと思ったら、今度はシャツのボタンを掛け違えていて、それを指摘するとまた怒る……。
毎日が、こんなことの繰り返しでした。
落ち着いてから、「朝テレビを見ていいのは、ちゃんと着替えが終わってからだよ」と話すと「うん、分かった」と言うのに、次の日になると、また同じことを繰り返すのです。
何故、だめだと分かっているのに同じ行動をとるのか理解不能でした。

その他にも、「スーパーに買い物に行こう」と言えば「イヤ。行きたくない」と返ってくるし、「お風呂に入ろう」と言えば「イヤ。入らない」。
 二歳の頃の「イヤイヤ期」とは違って、ちょっと言い聞かせたくらいでは全く言うことを聞いてくれません。それどころか、何か言うことで余計不機嫌になり、癇癪を起こしてしまうことも。そうなると、しばらくは動くことが出来なくなります。
「成長の証拠」だとは分かっていても、息子をおいてスーパーに行くわけにはいかないし、お風呂などの生活習慣を変えるわけにはいきません。毎日繰り出される息子の「イヤ」に振り回され、私もほとほと疲れ果ててしまいました。  

私もイライラ

初めは「これも成長の証」と思い、息子の反抗期をゆったりとした気持ちで受け止められていましたが、ただでさえ、子供の反抗に耐久性のない私。次第にイライラが募るようになりました。
そして、ついに我慢の糸がぷつりと切れる日がきました。毎日注意しても同じことを繰り返す息子に、感情的に怒鳴り散らしてしまったのです。
しかし、怒鳴られたからといって大人しくなるような息子ではありません。最初は、私の剣幕に驚いていたようですが、すぐに怒鳴り返してくるようになりました。いつの間にか口も達者になっており、私が何か言ってもポンポンと言い返してきます。それに対し、さらに言い返す私。結局、収拾が付かないくらいの激しい言い合いになってしまいました。
一度、感情的に怒鳴り散らしてしまうと、大きな声を出して怒ることのハードルがぐっと低くなりました。そしてそのうち、毎日息子と激しい言い争いのケンカをしているような状態が続くようになってしまったのです。
私が怒鳴ったところで、息子が落ち着くわけでもなく、それどころか、息子の怒りはエスカレートしていったように思います。だけど、このときは自分でも怒ることを止められなくなっていたのです。
ある日、いつも通りの怒鳴り合いの最中、ふと鏡に目を向け、ぎょっとしました。そこには、眉間にシワを寄せ、目をつり上げた般若のような恐ろしい顔が写っていたのです。もちろん、私の顔です。どうしてかわいい息子に、こんなにも恐ろしい顔を向けているのだろうと思うと、泣きたい気持ちになりました。
毎晩、息子のかわいい寝顔を見ては、明日はもっと優しく接しようと思うのに、朝になると、また怒鳴ってしまう。感情的に怒っても逆効果だと分かっているのに、自分で自分の怒りをコントロールできないことにゾッとしました。
 ちょうどこの頃、世の中ではコロナウイルスが猛威を奮っており、外出を制限している時期でした。気晴らしに出かけることもできない。友人に会って愚痴をこぼすこともできない。そんな日々が、さらにストレスを増大させていったのだと思います。きっと息子も、自由にお出かけできないストレスを抱えていたのでしょう。
息子と二人きりで家の中で過ごす毎日が、この頃は辛くて仕方ありませんでした。

ついに夫も!

 夫は仕事が忙しく、平日は息子が起きる前に家を出て、息子が寝てから帰ってくるようなことも珍しくありません。息子の反抗期について相談はしていたものの、実際に見ることが少なかったせいか、「そのうち落ち着くだろう」と、呑気に構えていました。
それでも、休日が訪れるごとにエスカレートしていく息子と私の状態を見て、さすがにおかしいと思ったようです。あまり育児に口を出さない夫でしたが、息子の剣幕と私の般若の顔に危機感を覚えたのか、怒鳴り合う息子と私の間に入ってくるようになりました。
最初は、息子に対して諭すように優しく接していましたが、もちろん怒っている息子には通じません。次第に、夫も息子のことを大きな声で叱るようになりました。しかし、夫に叱られたからといって、息子が落ち着くわけではありません。息子は癇癪を起こし、私もイライラ。そんなことが続き、ついには、夫までもが怒りを爆発させるようになってしまいました。
 なにしろ、家族みんなが怒っているのです。家庭内はめちゃくちゃ。どんよりとした空気が漂っていました。

このままではいけないと、夫と何度も話し合いをしましたが、これが「反抗期」で、息子の成長のために必要な時期だということは分かるものの、一体どうすれば終わるのか、答えは出ません。
いつか終わるものだと思い、動じずにドンと構えていられれば、それが一番いいとは思うものの、私にも夫にも、それは不可能でした。どうしてもイライラしてしまうし、ダメだと分かっていても感情的に怒ることを自分でも止められないのです。そして、自己嫌悪に陥るという繰り返しでした。
 このままでは苦しいし、家庭内の雰囲気も悪くなる一方です。そこで、まずは自分が怒らなくて済むための対策を考えてみることにしました。
まずは、ネットで反抗期についての情報を集めてみました。今までもネットの情報は頼りにしていて、いくつか対処方を試してみたことはあるのですが、今ひとつ効果を感じられることはありませんでした。だけど、ネット上にはたくさんの方法が載っています。それを一つ一つ試してみたら、どれか一つくらいは効果が出るのではと思ったのです。
ここから、息子の反抗期を少しでも和らげるべく、試行錯誤の日々がはじまりました。

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試行錯誤の日々

情報収集の日々

息子の反抗期と、それにイライラする私と夫で、どんよりとした空気が漂うようになってしまった我が家。
息子の反抗を少しでも和らげようと、また、少しでも自分が怒らなくて済むように、ひたすらに反抗期対策の情報を集める日々が始まりました。
まず頼ったのはインターネットです。ネット上には、幼児期の反抗期に関する記事がたくさんありました。体験談も盛りだくさんで、「悩んでいるのはウチだけじゃない」と思えるだけでも少し心が楽になったような気がしました。
 対処方も、専門家が提唱しているものから、実際に先輩ママが試して効果があったものまで色々と記載がありました。何が効くのか全く分からなかったので、とにかく、気になったものから片っ端に試していきました。
その中でも、効果があったものをいくつかご紹介します。

何でも競争!

 一番効果があったのは、「子供と競争する」ことです。
 毎朝の着替えのイヤイヤには、これが効果てきめんでした。朝、「早く着替えられた方が勝ちだよ!ママと競争ね」と声をかけるだけで、今までずっと、テレビに夢中で私の言うことに見向きもしなかった息子が一生懸命に着替え始めるのです。
 これは、特に競争心の強い男の子に効果のある方法だそうです。
競争しながら着替えるようになってから、朝の時間が一気に楽になりました。今までは、ほぼ毎朝怒りながら着替えをさせていたのに、競争するようになってからは、笑い合いながら着替えが出来るようになったのです!
 この対策のおかげで、我が家の朝は平和になりました。

カウントする

これは、出かける前やお風呂に入る前のイヤイヤによく効きました。「出かけるから、お靴履いてね。5、4,3・・・」とカウントダウンすると、走って玄関に行き、一人で靴を履き始めるのです。お風呂前も同様に、カウントを始めると急いで服を脱ぎ始めてくれます。ニコニコと楽しそうに準備を始めてくれる上に、時間のロスがなくなるので、本当に助かりました。
カウントダウンをすると、何故か条件反射のように動き出してくれるので、この対策はあらゆる場面で役に立ちました。反抗期が終わった今でもよく使っています。  

他にもいろいろ……

他にもたくさんのことを試しました。言い方を「~をやって!」というような命令口調ではなく、「~をしてくれるかな?」とお願いをする言い方にする。息子が怒り出したら、とにかくすぐに抱きしめる。息子の言うことを否定せず、必ず共感してから話す……。
 これらは、息子にはあまり効果はありませんでしたが、「優しく話さなくては!」とか、「まずは共感してから…」など、私が怒りを爆発させる前にワンクッション置いて考えることができたので、私自身の感情をコントロールするという面では非常に役に立ちました。

 逆に、試してみたものの全く効果がないものもありました。
「複数の選択肢を用意する」という方法は、自分で選ぶことで自己主張の欲求が満たされ、効果があるとネット上に書いてあったのですが、いざ息子に試してみても、「全部イヤ」と一蹴されてしまいました。
 また、絵本の読み聞かせを習慣づけると情緒が安定するという情報もありましたが、そもそも「絵本は読みたくない」と拒否され、習慣づけることは不可能でした。
 当然の話ではありますが、やはり、子供によって合う方法は違います。息子の場合は、とにかくゲーム性のある「競争」や「カウントダウン」が合っていたようです。

効果はあったけれど……

 様々な方法を試したおかげで、確実に息子とぶつかる頻度は減っていきました。朝の着替え時のイヤイヤなど、ほぼ毎日繰り返していたことがほとんど無くなったことで、私のストレスはかなり軽減されました。  
 しかし、当然ながら反抗期が終わったわけではありません。イヤイヤにはだいぶ対応できるようになったものの、息子は相変わらず怒りっぽいままでしたし、私も、息子が癇癪を起こすと大きな声をあげて怒ってしまいます。
前に比べれば楽になったと思いつつも、「この反抗期はいつまで続くのだろう」という不安は、依然として残っていました。
さらに、毎朝の着替え競争と、お出かけ前、お風呂前のカウントダウンがすっかり日課となった頃、ネット上で気になる記事を見つけてしまいました。
子供の競争心をあおることや、カウントダウンの多用はよくないという記事です。競争心をあおることで相手との比較でしか自分を評価できなくなるだとか、カウントすることで「ゼロまでにやらなくては」と危機感を植え付けるのはよくないとか、記事にはそういったことが書かれていました。
その記事を読んでから、このまま競争やカウントダウンを続けて、息子の性格形成に悪い影響を与えてしまったらどうしよう、と、どんどんと不安が膨らむようになってしまいました。
今、振り返ると、この程度のことで将来に悪い影響を及ぼすわけはないし、第一、息子は楽しみながらやっていたのだから、何も問題はないはずだと分かります。だけど、あの頃は、ネットの情報に頼りすぎていたこともあり、あらゆることを深刻に捉えすぎていました。
「このままでいいのだろうか。何か、他に方法はないだろうか」
「そもそも、今やっていることは、根本的な問題解決にはなっていないのではないか」
 今度は、そんな風に悩むようになってしまいました。

そんな中、我が家である出来事が起こりました。
息子と夫が大衝突したのです。

息子と夫の大ケンカ

 きっかけは、休日の朝、息子と私の言い争いを仲裁しようと、夫が間に入ってきたことでした。それはよくあることなのですが、その日は何か違いました。
夫は、最初は穏やかに接していたものの、癇癪を起こしている息子は全く聞こうとせず、徐々に、夫も大きな声をあげて怒りだしました。いつもだったらある程度のところで終わるはずなのに、なぜかこの日はお互いにヒートアップし過ぎたのか、そのまま収集が付かないほどの大ケンカに発展してしまったのです。夫がこんなにも怒るのは、おそらく初めてだったと思います。  
 息子は叫ぶように泣いて、夫はというと、怒って家から出て行ってしまいました。私は、こんな状態のまま息子を放って家を出て行く夫にイライラ。
 せっかくの休日だというのに、家の中は過去最高に険悪な空気が流れていました。

 しかし、この夫と息子の大げんかが、息子の反抗期が終わるきっかけとなったのでした。

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反抗期が終わったきっかけ

大ゲンカのあと

三歳の息子と大ケンカをしたあと、家を出て行ってしまった夫。
その後、残された私と息子は、なんとか気分を持ち直して家で二人で遊んでいました。
夫はというと、数時間後に帰ってきました。夫自身もまだ機嫌は悪そうで、息子も夫には近づこうとしません。私も勝手に家を出て行った夫に対して怒っていたので、三人で同じ部屋にいるというのに、息子と私が話すばかりで、夫とは口をきかない時間が続きました。
さすがにこの状態は良くないと思ったのか、しばらくして、夫がポツリポツリと話しかけてくるようになりました。私もせっかくの休日をこんな状態で過ごすなんて嫌だったので、正直なところ、わだかまりはありましたが、夫の会話に応えることにしました。
息子はというと、意外と根に持つタイプなのか、なかなか夫の側には近寄りません。ですが、夫が「さっきは怒ってごめんね」と謝ったことで、ようやく夫とも話すようになりました。
こうして、どうにか我が家はいつもの状態に戻ることができました。

その後、夫から「散歩に行こう」と提案がありました。この頃はコロナウイルスが大流行しており、なかなか遠出が出来なかったため、休みの日はよく家族で散歩に行っていたのです。
私も気分転換をしたいと思っていたので、賛成しました。息子は、ただ歩くことがあまり好きではないので散歩を嫌がることも多いのですが、この日は素直に「行く」と答えました。

そして、この散歩が、長い反抗期が終わるきっかけとなったのです。

きっかけの散歩

散歩へは、家から少し歩いた先にある大学のキャンパスに行くことにしました。キャンパス内には散歩道もあり、そこなら自由に走ることも出来るので、息子は走り回って楽しそうに過ごしていました。息子の楽しそうな姿を見ることができ、私にもいい気分転換になりました。
そして、キャンパスからの帰り道、夫が突然立ち止まり、息子に、「ちょっとお話をしよう」と言いました。
散歩の途中で何を言うのだろうと思いましたが、夫がこんな風に切り出すことは珍しいので、私はあえて口を出さないことにしました。
夫は、穏やかな口調で「最近、息子が怒ってばかりで悲しい」ということや、「嫌なことがあったら、怒る前に伝えて欲しい」ということを話しました。
息子は、最初は話を聞くことを嫌がっていたのですが、「大切な話だからちゃんと聞いて」と夫に何度か言われ、最終的には夫と向き合って、きちんと話を聞いていました。
息子も夫に、「どうしても怒ってしまうのだ」というようなことを、つたない言葉で一生懸命話し、それを夫は、うん、うん、と黙って聞いていました。
お互いの話が終わってから、最後に夫は、「家族で仲良く過ごしたい」ということを言って、息子は「分かった」と答えました。
私からすると、夫の話はいつも私が息子に対して言っていることと同じように思えたのですが、息子にとっては違ったようです。
なんと、この会話以来、息子は癇癪を起こさなくなったのです。

突然終わった反抗期

反抗期の終わりは、あっさりとしたものでした。あの散歩以来、息子は癇癪も起こさず、四六時中怒ることもなくなりました。
息子とのバトルに慣れきっていたこちらが拍子抜けしてしまうほど、穏やかな日々が始まったのです。

夫が息子に伝えた言葉自体は、私が常日頃から言っていることでした。だけどきっと、楽しく走り回ったあとだったこと、私ではなく、夫が伝えたということが、息子に響いたのだと思います。
思えば、私が息子にそういう話をするのは、いつも怒鳴り合ったあとの、仲直りをした直後でした。まだ興奮も残っていたでしょうし、そんなタイミングで話しても、確かに素直な気持ちで聞くことは難しかったのかもしれません。
また、私と息子は常に一緒にいます。コロナ禍で、他の人とのふれあいが減り、さらに二人だけで過ごす時間が増えていました。私の言葉は聞き慣れすぎていて、息子の心には届きにくかったのでしょう。
それに、私はいつも一方的に話すばかりで、息子の想いをじっくり聞くことをしていませんでした。怒ってばかりで、息子自身も苦しかったと思います。その気持ちをちゃんと聞いてあげられていなかったな、と反省しました。

もちろん、反抗期自体がちょうど終わる時期だったのかもしれないし、あのタイミングで反抗が止んだのは、偶然だったのかもしれません。
けれど私は、夫が、しっかりと話し、息子の話に耳を傾けたということが重要だったのではないかと思っています。

反抗期を終えて

今回のことを経て、つくづく子育ては一人で出来ないのだと痛感しました。
あの頃の私は、息子の反抗にイライラしてしまうことが多く、解決策を探り始めてからは、そちらに熱中しすぎて、息子の心に寄り添うことが出来ていませんでした。
そんな状態では、息子も、私の言うことを素直に聞くことは出来なかったでしょう。
それに、コロナ禍でなかなか外に出ることが出来ず、私としか遊べないこと自体が息子にとってはストレスだったのではないかと思います。私自身、毎日、息子の遊びに付き合うことにうんざりしている部分もありましたし、外に出られないストレスを感じてもいました。そういう私の感情も、息子には伝わっていたのだと思います。それが、あの反抗期の息子の態度に繋がったのかもしれません。
 あのときは、一番近くにいる私以外の人の言葉が、息子には必要だったのだと思います。

反抗期自体はとても辛いものでしたが、得るものもありました。あの散歩以来、夫と息子の距離が、ぐっと縮まった気がします。
今までも、もちろん仲が悪かったわけではないのですが、夫は仕事が忙しく、息子とは顔を合わせない日も多かったため、育児のほとんどを私が担っていました。それが、今では休みの日などは積極的に息子と遊ぶようになりました。典型的なママっ子で、家の中でも私にべったりだった息子も、ときどき、自分から私の元を離れて夫のところに行って、「遊ぼう」と誘ったりもしています。

反抗期の真っ只中は本当に大変で、もう二度と経験したくないと心から思ってはいますが、今振り返ると、やはりあの反抗期は、息子にとっても、私たち家族にとっても大切な時間だったのだと思います。

反抗期を乗り越えた今、思うこと

反抗期のその後

息子の反抗期は、思わぬ形であっさりと終了しました。今、息子は、まだ怒りっぽいところはあるものの、急に癇癪を起こすことも一切ありません。その後、幼稚園に入園したこともあり、私以外にも、先生やお友達と過ごす時間が増え、毎日が楽しそうです。心配していた人見知りな性格も、いつの間にかずいぶんと改善されていて、新しくできたお友達と活発に遊んでいます。
あの大ゲンカしていた日々が嘘だったかのように、今では毎日穏やかに過ごしています。

反抗期が終わり、しばらくしてから、息子に「どうしてあんなに怒っていたの?」と聞いてみたら、「ママが怒っていたから」と答えて驚きました。
私からすれば、「あなたが毎日、癇癪を起こすからでしょう!!」と言いたいところではありましたが、息子にしてみたら、「ママが怒るから余計に怒ってしまう」ということだったのでしょう。
確かに、怒っている人に対して反発してしまうのは当然のことです。あの頃は、私自身に余裕がなく、そういうことにも考えが及びませんでしたが、もう少し息子の気持ちに寄り添うべきだったと、反省しました。

反抗期が終わったからというわけではないと思いますが、最近、息子はぐっと成長しました。
幼稚園が始まり、生活リズムが整ったことが良かったのか、あれだけ手こずっていた毎朝の着替えも、自分からするようになりました。今では、注意することすらほとんどありません。
話も日に日に上手になり、自分の考えも、きちんと言葉で主張してきます。
もう、なんでも大人しく言うことを聞いてくれる赤ちゃんではないのだな、と日々、実感しています。

息子の反抗期で得られたもの

とても大変な反抗期ではありましたが、そのおかげで、得られたものもありました。
まず一つ目は、第四章にも書きましたが、夫と息子の距離が縮まったことです。
今までよりも二人で過ごす時間が格段に増え、目に見えて仲良くなりました。夫の育児参加が増えたことで、私の負担も軽くなりましたし、なにより、夫と息子が仲良く遊んでいる姿を見ると、幸せな気持ちになります。
今回の反抗期をきっかけに、夫と息子の絆が深まったことは、私にとって一番嬉しいことでした。

そして二つ目は、私自身が、息子も自分の意思を持った一人の人間であると再認識できたことです。
それは当然のことではありますが、「やってあげることが当たり前」の赤ちゃんの頃からずっと一緒にいて、私が教えたことを覚え、どんどん成長していく姿を見ているうちに、いつの間にか、「息子は私の言うことを聞いてくれる」と思ってしまっていました。息子は「育てやすい子」で、大抵のことは素直に従う子だったのでなおさらです。
しかし、今回の反抗期で、息子が自分の感情を爆発させる姿を見て、息子にも意思があるのだと、再認識させられました。
当然ながら、子供だって一人の人間です。三歳にもなれば、自我が芽生えるのは自然なことです。これからどんどん自分の意思を持ち、私とは違う考え方をする人間に育っていくのでしょう。
そのことに、今、気が付くことができてよかったと、心から思っています。

そのほかにも、今回の反抗期であらためて気付かされたことがいくつかありました。
まずは、子育ては一人で抱え込もうとすると危険だということ。今回私は、コロナ禍ということもあり、息子の反抗期について誰かに相談することもなく、一人で対処しようとしました。夫には話していたものの、仕事に忙しい夫に現状の大変さを理解してもらうことはなかなか難しく、結局一人で向き合う日々が続き、結果、大爆発してしまいました。
あのとき、気軽に相談したり、愚痴をこぼせる相手がいたら、あそこまで怒鳴り散らすようなことはなかったのではないかと思います。
子供はとてもかわいいですが、1対1で過ごすのは、時として、とても苦しいこともあります。今回はコロナ禍という特殊な環境下で、なかなか人に会えない時期ではありましたが、もっと、電話やメッセージのやりとりなどを活用し、友人に愚痴をこぼすなどして、私自身のストレスを緩和することを考えればよかったなと思っています。

また、インターネットに頼りすぎることも良くないと実感しました。
今回は、誰にも相談できなかったこともあり、ネットの情報に頼り切ってしまいました。ネットの情報は確かに有益で、今回もとても助けられましたが、情報が多すぎる故、あまりに頼りすぎると心が不安定になってしまいます。
ネットの情報はあくまで「情報」として、自分が必要とするものだけを取捨選択しなくてはいけない、と考えさせられました。

反抗期を乗り越えた今、思うこと

今回の反抗期を終えて思うことは、正直なところ、「もう懲り懲り。二度と嫌だ」ということです(笑)。そのくらい、精神的に辛い日々でした。
心から「もう嫌だ」と思っていますが、それでも、その後の息子の成長を見ると、やはり必要な時間だったのだろうな、と思います。

今回、私たち家族は、どっぷりと息子の反抗期にはまってしまいましたが、すべての家族がそうなるわけではないと思います。それこそ、反抗期だと気付かないほど、サラリと終えてしまうこともあるのではないでしょうか。
それは、子供の性格や性質にもよると思いますが、親がゆったりとした気持ちを保ち続けるということが何よりも大事だと思います。
どんなに子供が暴れても、親がそれを「苦しい」と思わなければ、それは「大変な反抗期」にはなりません。私の場合、イライラをそのまま息子にぶつけてしまったことで、息子の反抗をエスカレートさせてしまいました。
他の場所でストレスを発散させて、もっと息子の気持ちに寄り添う行動がとれていたらと、とても反省しています。

今後も、息子の成長の度に、反抗期はやってくるのだと思います。そして、その内容は年を追うごとにハードになっていくのでしょう。
三歳のときですら、あれほど大変だったのにと、正直なところ、考えるだけでゾッとしますが、やはり反抗期は、息子の成長にとっても、家族にとっても必要な時期なのだと思います。
今後、いつ反抗期が訪れるのかは分かりませんが、今回のように、私自身が余裕を無くすことのないよう、うまくストレスを発散させて、息子にしっかりと向き合っていけたらと思っています。

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