児童虐待の背景に子育て?虐待が起こる原因と防止策

2022年6月20日

子育て

第一章 児童虐待とは

誰もが一度は耳にしたことがある「児童虐待」

実は児童虐待は誰もが足を踏み入れやすいものであり、特に子育てと虐待は隣り合わせなのです。

児童虐待とは、保護者が子どもの心や身体に傷をつけ、子どもの健やかな発育や悪い影響を与えることを言い、一言でいえば家庭内の大人から子どもに対する不適切な力の行使です。

ここでいう保護者とは、親だけでなく祖父母や祖父、祖母、年齢の離れたきょうだいなどの親族、親族以外の同居人も不適切な力の行使による加害者として当てはまります。

児童虐待が起こる要因は4つあり、4つの要因により児童虐待を招いてしまいます。

① 保護者の要因
第一に多いのが「保護者の要因」です。

虐待に走る様な保護者には、もともと何かおかしな面があるのではないかと考える人も多いのですが、必ずしもそうではありません。

どこの親子関係にもあるようなつまずきが不幸を招き、虐待へと発展してしまうのです。
② 子どもの要因
保護者の要因の次に多いのが「子どもの要因」です。

虐待される子どもが悪いというわけでは無く、育児に保護者がつまずきそうな特徴を子どもが持っている可能性があり、こうした要因が虐待に繋がっていくのは保護者の子どもに対する受け止め方に根本的な原因があるのです。

③ 家庭の要因
次に多いのが「家庭の要因」です。

虐待が起きる家庭において見られる特徴としては、家庭内における夫婦の役割と親子の役割のバランスの崩れです。

このバランスが崩れ始ると親子間のコミュニケーションにも支障をきたし、虐待に繋がっていくのです。

④ 社会全体の要因
最後は「社会全体の要因」です。

家族の生活形態の変化や複雑になった人間関係、地域の教育力の低下などは指摘されるところがあり、それらが要因で虐待に繋がってしまうということもあります。

また、児童虐待は下記の4種類に分類され、4種類の虐待行為を「児童虐待」と定義します。

●身体的虐待
身体的虐待とは、身体に傷を生じさせるような行為のことを言い、打撲傷、あざ、骨折、頭部外傷、内臓損傷、火傷、刺傷を言います。

また、生命に危険を及ぼす行為である、首を絞める、投げ落とす、乳児を激しく揺さぶる、熱湯をかける、炎天下や真冬に戸外に締め出す、縄などで拘束する行為、さらには意図的に子どもを病気にさせる行為を身体的虐待と言います。

身体的虐待は外傷が残る場合は比較的発見しやすい虐待であると言われています。

切り傷や擦り傷、火傷や内出血など外傷にもさまざまな種類がありますが、身体的虐待によって生じる外傷は内腿や腰などの外側からは簡単に見えないような場所に出来ていることが多く、肩の後ろや耳の後ろなど、子どもが普通に生活していればあまり怪我をしないような部位に外傷があることがあります。

●ネグレクト(保護の怠慢、養育の放棄)
ネグレクトとは、保護の怠慢や養育の放棄のことを言い、極端に不適切な生活環境である食事を与えない、衣類が不潔、不衛生な環境での生活などが該当します。

また、子どもの健康や安全への配慮を怠る行為もネグレクトに含まれ、家に閉じ込める、子どもの意に反して登校させない、病気でも受診させない、乳幼児を家や自動車内に置き去りにすることであったり、同居人などによる虐待の放置もネグレクトとなります。

ネグレクトは、子どもに対する攻撃的な言動があるわけではないため、非常に境界線を定めにくい虐待の一つでもあります。

しかし、学校現場では比較的疑うことが安易な虐待であり、季節や気候に全くあっていない服装、提出物の遅れ、持ち物の不備などを通じて疑いを持つことが出来ます。

●心理的虐待
心理的虐待は、児童に対して著しい心理的外傷を与える言動を行うことをさし、暴言や脅迫、無視や否定的な態度、外のきょうだいとの著しい差別、子どもの面前での夫婦間の暴力のことを言います。

「お前のせいで俺の人生は台無しになった」「産まなければよかった」などといった子どもの存在を否定するような言動が代表的な例であり、これほど直接的な否定でなくても、きょうだいの間に不当なまでの差別的な対応をするといった場合もあります。

また、心理的虐待の重要なポイントとして、ドメスティックバイオレンス(DV)の目撃という事例もあります。

ドメスティックバイオレンスについては「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)において、「配偶者からの暴力」として規定しており、「配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」をいうものとされています。

ここにいう「配偶者」には法律上の配偶者だけではなく、事実上婚姻関係にある者や離婚した元配偶者も含まれます。

平成16年の虐待防止法の改正により、ドメスティックバイオレンスを日常的に目撃していた子どもは、たとえ直接的には暴力や暴言にさらされていなかったとしても心理的には虐待を受けた判断とするものとされました。

その理由は、ドメスティックバイオレンスを日常的に目撃することが、子ども自身が心理的虐待を受けた時と同じくらいに心にダメージを負わせているということだとわかってきたためです。

●性的虐待
性的虐待とは、児童にわいせつな行為をすること又は児童を利用してわいせつな行為をさせることを言います。

わいせつ行為とは、直接的に性行為を行うことだけではなく、性的な満足を得るためにしたり、させたりする行為など、より広い行為が含まれます。

子どものヌード写真を撮って販売したりすることも性的虐待に含まれ、子どもが誰かと性行為をすることを強要したり、その性行為によって得られた金品を利用したりすることも含まれます。

児童虐待による社会問題は深刻であり、虐待で子どもが亡くなっていくニュースは後を絶ちません。

そのため、ママやパパの子どもへの接し方が虐待に当たるのではないか、何をすると児童虐待となってしまうのかと悩みを抱えている人は少なくありません。

また、過去には児童虐待と疑われてしまい、通報されたり出頭を求められてしまい、今後の生活に不安を抱えている人もいるでしょう。

そこで、児童虐待に当たる行為と量刑をご紹介します。

●身体的虐待
身体的虐待は暴行罪や傷害罪にあたる可能性が高く、暴行罪の量刑は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。

さらに暴行の結果として障害を与えてしまった場合には「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」を科されます。

●ネグレクト
ネグレクトは保護責任遺棄に該当し「3か月以上5年以下の懲役」に処せられる可能性があります。

●心理的虐待
心理的虐待は、脅迫罪や強要罪にあたる可能性があります。

脅迫罪の量刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」、強要罪の量刑は「3年以下の懲役」です。
また、児童の心身に異常をきたせば傷害罪にあたる可能性もあります。

●性的虐待
性的虐待は、強制わいせつ罪や監護者わいせつ罪があり、量刑は「6か月以上10年以下の懲役」となります。

また、性交、口腔性交、肛門性交をした場合には刑法の強制性交等罪に問われ、量刑は「5年以上の有期懲役」です。

ほかにも、児童福祉法違反の児童に淫行をさせる行為として、「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科」となる可能性があります。

また、被害者である子どもは、他に適した親族がいる場合はそこで養育されますが、そうでない場合には児童相談所に一時保護され、その後は児童養護施設に預けられたり、里親に委託されたりします。

第二章 なぜ子育てから虐待が起こるのか

「愛しているのに虐待をしてしまう」そういった悩みを抱えているママやパパはとても多く、意に反して虐待をしてしまったと答える人は数多く存在します。

児童虐待が起こる要因は、保護者の要因、子どもの要因、家庭の要因、社会全体の要因があり、それぞれにはさまざまな特徴があります。

●保護者の要因
①自身が虐待された過去を持っている

虐待の加害者になった養育者の中には、自分も虐待を受けてきた人が多くいることが分かっています。

そのほとんどの人が「普通の子育てが分からずに初めての子育てに疲れていた」「自分がしつけとして親から受けてきたことを子どもにすると虐待と言われる」などと言い、その発言から養育者のSOSが出ていることが分かります。

子どもを助ける体制はあるのですが、養育者を十分に助ける体制は不足している状況が招くことであり、過去に虐待されていた養育者に対してもっと手を差し伸べられていたら虐待が減っていく可能性があるのです。

②精神疾患を患っている
精神疾患によって医療機関にかかって治療をしている患者数は年々増加傾向にあり、精神疾患の中には、うつ病や不安障害、統合失調症といったものやアルコール依存症などさまざまな病気が含まれます。

そして、養育者がこのような疾患で苦しんでいる場合は子どもも虐待に苦しむ可能性が非常に高くなります。

養育者がこのような状況でも、子どもは病気だと認識することが難しく「元気がないのは自分のせいなのかな」と思い悩んでしまいがちとなります。

そのため、子どもは精神疾患を抱えた養育者から逃げることも否定することも出来ず、SOSが出せずに悩んでしまう子どもは多く存在するのです。
③育児に対する準備不足
望まない妊娠や出産であったり、配偶者や周囲の人から全く歓迎されないような妊娠であったりすることで育児を楽しもうとする態度を形成できないまま出産を迎えてしまうことがあります。

④育児以外のストレス
養育者が要因の場合、育児以外のストレスが養育者にかかっていることが考えられます。

例えば、重度の要介護者がいる、地域の人々とのコミュニケーションが上手く取れない、仕事が上手くいっていないなどです。

⑤生活基盤の弱さ
経済的に問題がある場合は虐待に発展する可能性が高いとされています。

●子どもの要因
①出生後のさまざまな疾患
子どもの出生直後にさまざまな疾患が現れることがあります。保育器に入らなければいけなかったこともその一つであり、育てにくい子と認識されることで虐待へと発展してしまうことは多々あります。

②障害の存在
子どもに何らかの障害があることで育てにくさが増大してしまい、このことから虐待に発展してしまうことがあります。

③外見的な特徴
「離婚した旦那に似ている」「愛嬌が無い」などといった容姿の特徴や髪の毛の質や肌の特性といった外見の特徴が時には「可愛くない」ように見えてしまい虐待へと発展します。

④望まない性別
「男の子ならいらない」「女の子ならいらない」「男の子だと聞いていたのに女の子だった」などと養育者の望まない性別の子どもが生まれてきたことで子どもを病院に置き去りにしてしまったというケースも少なくありません。

⑤親に対する態度
子どもの親に対する態度も虐待の要因となります。

●家庭の要因
①子どもとのコミュニケーションの歪み
保護者が子どもに接する時には、両親という役割でいることが望まれますが、両親役割や夫婦の役割がうまくパートナーシップが発揮されていないと、そこで解消されなかった欲求不満や怒りが子どもに向けられて虐待へと繋がってしまう可能性があります。

仕事のストレスを夫婦関係で解消することが出来ずに子どもに当たってしまったり、両親が子どもを味方につけようと争ってしまう場合もです。

いずれの場合も大人が適切な役割で子どもに向き合っているとは言えず、こうしたコミュニケーションの歪みが日常的に生じるようになると子どもの情緒発達には大きな傷が残ることとなるのです。

②両親になる準備が整っていない
男女が結婚し、その後二人の子どもが生まれます。

このような場合は結婚によりまずは夫婦という関係から始まります。

夫婦はそれぞれ違う家庭の出身のため、異なった生活習慣や好み、価値観を持っています。

こうした違いを相互に理解し「自分たちのやり方」にしていくまでにはそれぞれが時にはストレスを感じながら協力していくこととなります。

そのように安定した夫婦関係は子どもが生まれることによって両親という新たな役割を担うこととなり、夫婦という役割関係の上に両親という新たな役割関係が重なるのです。

③夫婦の役割と両親の役割のバランスの乱れ
夫婦の役割と両親の役割バランスが崩れると、保護者としての子どもへの責任よりも夫婦としての自分たちの欲求の方が優先されてしまうことも起こり得ます。

あるいは、夫婦役割の中で解決されなければいけない性的欲求が親子関係の中に持ち込まれてしまうと性的虐待に繋がります。

虐待が生じている家庭には何らかの形でこうした夫婦役割と両親役割のバランスの崩れが認められます。

また、最近では「教育虐待」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。

虐待とありますが、子どもを叩いたり蹴ったりするような虐待とは違い、教育的な虐待なのです。

●教育虐待とは
教育虐待とは、教育を理由に子どもに無理難題を押し付ける心理的虐待のことを言い、教育虐待は子どもに度を越えた勉強をさせる行為だけではありません。

子どもが望んでいないにもかかわらず、親が習い事を強要するといったことも教育虐待に含まれます。

教育虐待をする親が増えている理由は「何が正しい教育なのか親自身もわからなくなってきている」ことが原因であるとされており、自らの不安を解消するために子どもにさまざまなことをさせてしまうのです。

教育虐待にあたる行為は下記の通りです。
・子どもをスケジュール漬けにしている
・子どもの勉強スケジュールを細かく管理している
・友達と遊ぶことを許さない
・夜遅い時間まで勉強させる
・志望校や職業など、子どもの将来を勝手に決める
・成績が悪いなどの理由から子どもに暴力をふるう
・机や壁を叩いたり、怒鳴るなどの好意で子どもを威嚇する
・子どもの自尊心を傷つけるようなことを言う

また、教育虐待に当てはまる言葉は下記のような言葉です。
「なんでこんなに間違えたの」
「努力が足りない」
「〇〇中学校に合格しなければうちの子じゃない」
「一番になりなさい」
「最低でも〇〇大学に行きなさい」
「親の言うことが聞けないなら出ていけ」

このように親が子どものためと思って言っている言葉でも、子どもにとっては脅迫的な言葉にしか感じず、「この子のために」という気持ちがエスカレートして教育虐待へと発展していってしまうのです。

●教育虐待をしやすい親の特徴

① 両親がともに高学歴で社会的地位が高い
「成績が良くて当たり前」「出来なければ問題児」という考え方を持ち、万が一我が子が良い大学に入れなかったらという不安があると、子どもに対して高成績を望み続けてしまいます。

② 自分の学歴に劣等感を抱いている
親自身が学歴で苦労してきたなどといった思いがある場合は子どもに同じ思いをさせたくないがために過度な期待をしがちになります。

③ キャリアを捨てて子育てに専念している
やりがいのある仕事についていたのに、さまざまな理由から仕事を辞めざるを得なかった親は今までのエネルギーが子どもの教育に向けられる可能性が高くなります。

④ 子どもの成績などに責任を押し付けられている
子どもの成績が悪いのは母親が原因だなどといったプレッシャーがある場合は親せきや父親からの重圧に耐えるべく教育虐待をしてしまう可能性があります。

⑤ 両親どちらかのみが教育熱心
父親は無関心だけど母親は教育熱心であったりと片方だけが教育熱心な場合は「なぜ勉強をしなくてはいけないのか」という哲学が無いため、情報に踊らされてしまいます。

⑥ パートナーの教育虐待に反論できない
パートナーの教育方法が明らかに虐待だと感じていても直接反論することができない親は、パートナーの考え方に洗脳されてしまっている可能性が高いです。

⑦ 両親がきょうだい間の成績の差に劣等感を抱いている
「お兄ちゃんは国語が得意なのに」などときょうだいと比較されて育った場合は劣等感を持ったまま育ってしまっているため、子どもの教育にも厳しくなりがちとなります。

多くの教育虐待は「無自覚」で行われていることがほとんどであり、親はその行為が虐待であると認識していません。

その行為が虐待と気が付いていないというのが、教育虐待のややこしいところなのです。

第三章 児童虐待を予防するためには

児童虐待と一口に言っても身体的虐待、精神的虐待、ネグレクト、性的虐待とさまざまです。

ニュースで取り上げられる虐待は死に至るような暴行があった場合のみであり、体に出来た傷などの目で見てわかる被害に世間の注目は集まりがちですが、虐待による本当の被害は身体的な外傷だけではありません。

大人でも毎日DVを受けていたら精神の安定を保つのは困難となり、上司に日々起こられて精神的に病んでしまう人や性犯罪に遭ってしまった女性がトラウマで引きこもりとなってしまうケースも多々あります。

そういった被害を逃げ場がなくまだ人格形成が出来ていない子どもが受けてしまうと大人以上に重大な影響を受け、その後の人生が一気に変わっていってしまうのです。

そこで、子どもが虐待を受けた場合の身体面や精神・行動面への影響をご紹介します。

●身体面への影響
全身状態では低身長や栄養発育障害が珍しくありません。

十分な食事を与えられていなかったことが一つの原因ですが、愛情のない環境で育った場合、成長ホルモンの分泌が障害されることがあり、そのための低身長が見られることもあります。

外傷では、新しい傷と古い傷跡が混在して認められるのが特徴であり、多発性で反復するという特徴もあります。

複数の火傷跡や骨折、火傷、薬物誤飲(タバコを含む)などの外傷事故を繰り返すというものです。

注意が必要なのは乳児の骨折であり、これはそれだけで虐待の可能性を考えます。

乳児の骨折はよっぽど不自然な外力を加えない限り骨折するということは無く、薬物から見ると親が薬やさまざまな物質(体温計の水銀、尿、糞など)を子どもに飲ませたり、注射するなどをして子どもを病気にするということも多々あります。

絶命が付かないような身体状態の持続があれば疑わなければいけません。

●精神・行動面への影響
年少児では、過食や盗み食い、異食などの食行動の異常が頻繁に見受けられます。

また、身体的虐待が続いている場合には、痛みに対してほとんど反応しないということも認められており、多動、乱暴、落ち着きがないという行動も見受けられます。

対人関係ではきわめて警戒的で内にこもるか、一見人懐っこいが表層的な対人交流しかもてないかの2タイプが認められます。

年長児では、集団内での問題行動や反抗期、攻撃的な行動が特徴となります。

周囲から見ると非行としか見られない行動の背景に虐待が隠れていることは少なくありません。

具体的には、離席、教室から抜け出す、集団行動をとらない、怠学、不登校、暴力的、友人とのトラブル・喧嘩が多い、指示に従わない、虚言、器物破壊、学校等で飼育している動植物を殺す、盗み、徘徊、家出、喫煙、飲など多くの行動があります。

特に単独で非行を繰り返している子どもは最低でもネグレクトを受けている可能性があります。

また、性的虐待を受けている場合は、性的免脱行為、性非行なども生じやすくなります。

児童虐待はどこの家庭にも起こる可能性があり、家族間のストレスや住居や経済的な問題、親子の孤立などさまざまなことが原因で虐待が起こってしまう可能性があるのです。

子育てをするなかで生じる不安や寂しさは決して特別な感情ではなく、虐待をしている養育者自身がやめたいと悩んで苦しんでいる場合も多いのです。

そこで、虐待を起こさないために、繰り返さないために必要な対策方法や、身近で虐待が行われている可能性がある場合の対応方法をご紹介いたします。

●虐待を起こさない・やめるために必要な対策方法
① 外部とのつながりを持つ
虐待を起こさない、繰り返さないためには外部との繋がりをもつことが重要です。

家族だけの関係性の中で虐待が進んでいくことは多く、地域から孤立している人ほど虐待に発展しやすいことがわかっています。

そのため、地域のコミュニティサークルに行く、子育て支援サービスを利用するなど、グループに参加をして色々な機会で繋がり続ける、何かあったら聞いてもらえる環境作りをしましょう。

② 自身をよく観察する
毎日セルフウォッチングを行うことで危険な状態になったかどうか気づける可能性が高いと言われています。

自分をいつも観察してこのままいくと危ないというときにちょっと席を外すか、冷蔵庫を見に行く、スマホやテレビを見る、深呼吸をするなどと時間の流れを中断する「タイムアウト」がものすごく重要となります。

●身近で虐待が行われている場合の対処法
①虐待かな?と思ったらすぐに通報する
近隣の住宅から子どものひどい泣き声が聞こえ、虐待が行われているのではと感じた場合は、匿名で通報できるダイアルへ連絡しましょう。

どこへかけていいか分からない場合は、児童相談所全国共通ダイアルの189(いちはやく)に通告・相談してください。

このダイアルは匿名が可能であり内容の秘密もしっかりと守られます。

② 近隣に関心を持つ
挨拶やちょっとした声掛けなど、少しずつ出来ることから始め孤独を感じさせないようにする。

③ 虐待に関する知識を深める
地域住民全体で「暴力・虐待を許さない」という意識を高め、児童虐待に関する知識を学ぶことが重要です。

④ 虐待をしている養護者(親)を責めない
児童虐待は親自身の育ちの問題や家族の孤立、貧困などさまざまな心理・社会的な要因が複雑に絡み合って生じることがほとんどです。

虐待する親をひどい親と思いがちですが、子育ての大変さを家族や周囲に理解してもらえず、親自身も苦しんでいたり、孤独だったりして、そのストレスを子どもに向けていることも多いのです。

親を責めるだけでは虐待問題は解決されず、虐待をする親と子どもには周囲の温かい支えと適切な援助が必要です。

虐待しているとみられて地域住民に敬遠されると社会から孤立してしまい、より悪い方向へと進んでしまう可能性もあるため、虐待が起こった家庭にこそ地域住民が温かい手を差し伸べる必要があるのです。

また、児童虐待について子どもや親本人から電話相談があることもあり、その件数は年々増え続けています。

そのため、子どもや親から虐待についての電話相談があった場合は適切に対処して下さい。

●子ども本人からの相談の場合
子どもは自身がひどい状態であってもあまりストレートにはそれらを表現せず、はじめはふざけて電話をしてきたのかと勘違いするほどです。

そのため、話の中に少しでも気になることがあった場合は事実関係を明らかにするのではなく、とにかく受容的に話を聞くことが大切です。

子どもは受け入れられている、安心して話せると感じた時に次第に本当のことを話す傾向があります。

また、自分自身のことを友達の出来事のように話すことも多々あり、その際も追及せず、受容の姿勢を保ったまま聞くようにして下さい。

●親本人からの相談の場合
児童虐待への関心が広まっていることで「自身も虐待に当てはまるのではないか」「虐待してしまいそうだ」といった相談内容は多く、件数も右肩上がりとなっています。

電話をしてくる養護者のほとんどが乳児や年少の子どもを持つ母親であり、一般的な子育ての相談から児童虐待と思われるものまで幅広くなっています。

「子どもの寝顔を見ると悪かったと反省する」「子どもはかわいいと思う」などと言った言葉を聞くとどこからが虐待と考えるか悩む所ではありますが、親の意図がどうであれ子どもが健康にすくすくと育っていれば問題ないということを伝えましょう。

しかし、指導的に一方的に話し続けると責められたと感じてしまうこともあるため、身長に対応しましょう。

「今日はよく電話してくれました」「そのことでずっと悩まれていたのですね」などと受容の姿勢で受け止め、その行為を肯定するような言葉かけをすることを心がけましょう。

そうすることで今後の継続に繋がり、養護者との縁が切れることなく繋がりを持ち続けることが出来るのです。

第四章 しつけと虐待の違い

児童虐待のニュースが鳴りやまない中で「しつけのつもりだった」と言う言葉が後を絶ちません。

また、育児をする中でどこからがしつけなのか、どうしたら虐待なのかと迷ってしまうことも少なくなく、虐待としつけの境界線はどこなのかと悩んでいる人はたくさん存在します。

●しつけとは
しつけとは子どものセルフコントロール力(自己統制能力)を養うために親が行う行為のことを言います。

例えば、赤ちゃんは「お腹が空いた」「眠い」などと自分が不快な状態のときに泣いたりぐずったりして大人の手を借りようとします。

そこでママやパパなどの養育者が声をかけ授乳や抱っこなどをして快楽の状態にしてあげるための手助けをすることを「しつけ」と言います。

心身の発達とともに子どもの不快の内容は変わっていきますが、肌の触れ合いや言葉でその都度快楽の状態となる手助けを繰り返すことが重要なのです。

そうすることで成長とともに思い通りにならずに不快になってもママやパパなどの言い聞かせによって我慢したり、気持ちを落ち着かせることが出来るようになり、これをセルフコントロールと言うのです。

●しつけと虐待の定義

しつけの定義は、親が肌の触れ合いや言葉かけによって子どもが不快から快の状態になるように繰り返し手助けしていくことです。

また、虐待の定義は親が日常的にたたいたりどなったりして力づくで子どもをコントロールすることを言い、親が日常的に自分の感情にまかせて子どもの存在価値を否定するような言葉をぶつけることをさします。

●しつけと虐待での子どもとの関係
しつけと子どもとの関係は、子どもの横に立って気持ちを受け止めて応援することであり、虐待は子どもの上に立って子どもをコントロールすることです。

●しつけと虐待での子どもへの影響
しつけによる子どもへの影響は親に愛されている、大事にされていると感じ、それらが自立に繋がりますが、虐待は親の顔色をうかがって行動するようになり、「良い子」として認められることを諦め自己肯定感が低くなります。

しつけと虐待の違いはなかなか難しいものであり、育児をしていると線引きがわからなくなってしまうことは多々あります。

しかし、しつけと虐待は根本的に全くと言っていいほど異なるものなのです。

虐待は親が権力をふりかざし威嚇をし、子どもを押さえつける行為です。

泣いている子どもに「うるさい!静かにしなさい」などと怒鳴りつけたり、叩いて泣き止ませるなどの行為です。

これは親が子どもとの関係を利用して優位な位置に立ち、精神的な満足感を得ているだけなのです。

しつけも虐待も子どもが泣き止むという結果は同じなのですが、そのプロセスが大いに異なり、子どもが言うことを聞かない時に「厳しく叱る」「叩く」などといった行為は子どものためではなく、親が無意識のうちに子どもを支配するために行っていることなのです。

●虐待を受けて育った子はどうなるのか

虐待を受けて育った子どもは、健全な成長が出来ない可能性が非常に高く、受けた虐待の種類や年齢、性別や性格などで個人差はありますが、虐待を受けた子どもには下記のような特徴が見受けられます。

① 身体的・知的発達の遅れが出る
十分な食事や栄養が与えられないために発育不良を起こしたり、頭を殴られる、蹴られるなどの頭部外傷が原因で脳や神経系に障害が起き、知的障害になったりなど、身体的・知的発達の遅れが見られる子どもが多い傾向にあります。

② 愛着障害、人間関係の構築困難
人を信用できなくなったり、人間関係の構築が上手くできなくなります。

また、他人の大人に対してべたべたと甘えたり、すぐに性的な関係をもったりと良好な人間関係を作れなくなります。

※愛着障害(アタッチメント障害)とは養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態です。

主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子どもとの間に愛着が上手く芽生えないことによって起こります。

乳幼児期に養育者ときちんと愛着を築くことが出来ないと、過度に人を恐れる、誰に対しても馴れ馴れしいなどといった症状が現れることがあります。

③ 非行、攻撃的な性格
親(養育者)から受けた暴力を克服しようとして暴力的な性格になったり、親からの暴力をトラブルの解決方法として学習したためにトラブルが起こった際に暴力をふるったりと、攻撃的な性格になることがあります。

攻撃的な性格のまま成長すると非行に走ることに繋がる場合が多いです。

④ 自己肯定感の欠如
子どもは親(養育者)から愛され慈しみを受けることで社会や人に対する信頼関係が構築され、共感性や道徳性の発達の基礎が作られると言われています。

虐待を受けた子どもは人や社会に対して信頼関係を築くことが出来ずに、自分に自信を持つことが出来なくなるのです。

そのため、劣等感や虚無感が強くなり、自己肯定感が低くなってしまいます。

虐待を繰り返してしまう親(養育者)の中には「自分自身が幼い頃に親から日常的に虐待を受けていた」という人が多いのは事実です。

加えて、経済的な事情や仕事と家庭のバランスをとるのが難しいなどといったストレスが積み重なることも虐待に繋がる一つの要因として考えられています。

しかし、そもそもたたいたり怒鳴りつけたりすることで子どもの成長をコントロールするのは子どもの育ちに有害であるということは心理学や脳科学分野におけるさまざまな実験により実証されています。

虐待を受けて育った子は「いい子」として認められることを諦め、自分が悪いことをすることで周りの人から認められたいといった悪性のアイデンティティを築いてしまうことがあります。

また、セルフコントロール力が養われにくく、些細なことで激しい怒りを爆発させてしまうこともあります。

子どもをたたいてしまう人や、そういった経験がある人やそうでない人も我が子に対する接し方を振り返り、「しつけ」について考え直す必要があります。

子育てをしていると、どうしてもイライラしてしまい子どもをたたきたくなってしまうことがあります。

しかし、そんな時は「たたく」のではなく「言葉で伝える」努力を行うことが重要です。

子どもを叩いてしまうなら、叩きたくなる原因=子どもの言動を「叩く」という方法ではなく、具体的な言葉で伝える努力から始めてみましょう。

しかし、子どもに言葉で伝える際に「ダメな子」などと子どもの人格を否定するような言葉は禁止です。

子どものどんな言動にイライラし、困っているのかを自分の気持ちとして子どもにきちんと伝えるのです。

言葉に出すことで親(養育者)の気持ちも少しは落ち着かせることが出来、さらに子どもも親が何にイライラしていたのかを知ることが出来ます。

しつけの本質はとてもシンプルであり、まず最初に「子どもは親とは別の人格」であることを認識することが大切です。

その子なりの感じ方や考え方を受け止めながら肌の触れ合いや言葉で安心感を与えてあげる、それが重要なのです。

しかし、どれだけ注意して接していても怒鳴ってしまうこともあります。

そんな時は「怒鳴ってごめんね」などとすぐに謝れば親子関係を修復することが出来、子どもも理解してくれます。

子どもの上に立って押さえつけてコントロールするのではなく、常に子どもの横に立って気持ちを受け止め、子どもの自

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