2021年9月28日
発達障害
「いくら説明しても理解できない」
「何度言ってもいうことを聞かない」
子育てをしていて、このように悩む場面は多いと思います。人が情報を認知し処理する過程で、何を手掛かりにしているのかは、人それぞれタイプが違います。
今回は、私の子育ての経験をもとに、「視覚優位」と「聴覚優位」の二つのタイプについてお伝えしていきます。
長女はとても穏やかな子供でした。1歳位から言葉を話し、発育は順調に見えました。特に絵本を読んでもらうことを大変喜び、何度が読み聞かせると全部覚えて一人でページをめくりながら再現していました。また、私が聴いていたポップスの音楽などもあっという間に覚え、歌詞を口ずさむことが出来たのです。
一方で娘には気がかりなことがありました。言葉を暗記することは出来るのですが、会話がかみ合わないことが多かったのです。
さらに絵が苦手で、2歳を過ぎても殴り書きのようで、意味のある絵を描くことが出来ませんでした。また、積み木やブロックで遊ぶことはありませんでした。
私の不安は的中しました。
2歳児検診の簡単なテストがクリアできなかったことで、発達相談に行くように促されたのです。
相談員さんが作った通りに積み木を積まなければいけないのですが、娘は出来ませんでした。また、「昨日何して遊んだの」という問いに「おじいちゃん家に、スヌーピーのぬいぐるみがあるんだよ」と、かみ合わない会話をしてしまいました。
おそらく「遊んだ」というキーワードから連想したことを話してしまったのだと思います。
検査の結果、3歳の頃に「軽度の自閉症スペクトラム」と診断されました。また、空間認知能力が年齢に比べて大きく劣っているという指摘もされました。
私は工作が好きで、小さい頃はブロックでおうちを作ったり積み木でロケットを作ったり、想像を膨らませて毎日過ごしていたのを覚えています。
しかし娘に教えてみると、冴えない表情で全く楽しくなさそうです。私から見ると、娘が何に困っているのかも分からないという状況で、積み木を教えるのはやめてしまいました。
診断の結果を受け、絵の描き方も教えてみました。
横につきっきりで何度も教えると、丸や四角は書けるようになりましたが、三角形がどうしても書けません。
そんなことで困った経験がない私は何から教えたらよいのか困り果て、ネットで色々と検索してみました。「子供 絵 書けない」「子供 図形 苦手」などと検索すると、興味深いキーワードが出てきました。
視覚優位 目から得た情報を処理することが得意
聴覚優位 耳で聞いた情報を処理することが得意
つまり、絵をかいたり工作したりすることが得意な私は「視覚優位」で、あっという間に読み聞かせを覚えてしまう娘は「聴覚優位」ではないのか、ということに気づきました。
今まで私は、見本を見せて「同じようにやってごらん」と声かけしていました。それは、私にとって一番理解しやすい方法だったのです。
何か分からないことがあると、私は説明書を読んで解決しています。チャート図などにまとめてあると非常に分かりやすく感じます。
反対に、Youtubeなどの動画解説を聞くことは非常に苦手です。
娘は聞くことが得意なのだから、言葉で伝えたら良いということに気づきました。
「でも、どうやって伝えたらいいんだろう」
まず、積み木で小さな家を作る練習に取り組んでみました。
「こうやって、次にこうやって」これではうまくいきませんでした。
「赤の棒を縦に置いて、その横に青をくっつけて置く。青と赤の上に、三角を置くんだけど、はしっこがちょっとずつ出るように置くと、家に見えるよね!」
ここまで言葉で表現すると、娘も積み木を完成させることが出来たのです。
このように、親はつい、自分が上手くできた成功体験をもとに子供に接しがちです。
親子で感覚が似ていることも多いので、大抵はそれで解決するのかもしれません。
しかし、もし「いくら教えてもうまくいかない」と感じることがあれば、ご自身とお子さんがどんな認知特性を持っているのかを考えてみるとよいでしょう。
どのような特性を持っているのかを知ることで、苦手を克服するだけではなく、得意なことを伸ばすこともできます。
これをきっかけに娘にピアノを習わせてみましたが、こちらは平凡な腕前です。娘は言葉を覚えることは得意ですが、音感はそれほど良くはないようです。
もちろん「聴覚優位」で音楽の才能のある方もきっとたくさんいらっしゃるでしょうし、色々試してみるとよいでしょうね。
小学生になった娘は言葉を覚えるのが得意なので、今は演劇の仕事に興味があるようです。大好きなアニメ「鬼滅の刃」のセリフを言ったりして、毎日楽しく過ごしています。
算数は苦手ですが、九九は暗誦することでスムーズに覚えられました。
視覚優位のお子さんは目にするものすべてに興味を示し、知的好奇心が高いことが多いように思えます。
一方で、聞くことが苦手だと相手の話を聞いていなかったり、指示に従えなかったりするなど、集団行動でトラブルが生じることもあるようです。
視覚優位の子供は図鑑が大好きです。私の長男は昆虫や動物など、様々な図鑑を欲しがりました。同じ「セミ」でも大きさや色が少しずつ違い、それぞれに名前がついていることが面白いようです。
絵本もストーリーは重視せず、絵が印象的なものを選ぶ傾向にあります。
長男はシンプルな絵本はすぐに飽きてしまっていました。大き目のサイズで、一つの絵の中に人や動物が細かく書き込まれているものを細部までじっくりと観察していました。
「レゴ」などに夢中になるお子さんは視覚優位の可能性が高いでしょう。頭の中にロボット、ロケットなどの明確な映像があり、それをブロックで見事に表現することが出来ます。
ミニカーを集めるお子さんは、車のパーツの一部だけを見て車種を当ててしまったりします。電車が好きなお子さんも、車体の少しの違いでこれは○〇型、と言うことが出来るのではないでしょうか。
車に乗っていて「コンビニに寄りたい」というとき、長男のほうが場所を教えてくれたりします。いつも通る道ならどこにどんな建物があるか把握しているようです。
ものごとを認知する方法には「同時処理」「継次処理」という二つのタイプがあります。
・「同時処理」は、まずざっと全体図を把握し、次にその中の各部分に注目するというタイプ。
・「継次処理」は、一つ一つはじめから手順を考え順番にこなし、最後に全体を確認するタイプ。
視覚優位の子供は空間認知に優れているため、「同時処理」が得意です。
プラモデルなどでは設計図で全体像を確認してから個々のパーツを作り始めるでしょう。また、私の長男は電車の路線図が好きです。ローカル線を何度か乗り換え、新幹線で長距離移動し、またローカル線で移動するなど、大まかな移動距離、位置関係をつかめているように思えます。
これは私の例ですが、話をするとき、「会社の帰りに、○〇に行こうとしたんだけど、途中でああなって、こうなって」と順番に話されると、話の内容が頭に入ってきません。
最初に、「今日うっかりして、帰りに忘れ物をした話なんだけど」と結論や全体像を先に伝えてもらうと、細部の情報もしっかりと聞くことが出来ます。
視覚優位のお子さんは、他の人は気づかないような情報まで目に入ってしまいます。
私も学生の頃、教室の水槽の泡の出方がいつもと違う、外に鳥が止まっているなど、些細なことが気になって集中できなかったことを覚えています。
「集中できない」ということは学業だけでなく、今後、人生で目標を達成するための大きな障害となりえます。集中できず何事にも全力を出し切れないということを繰り返していると「自分は何をやっても中途半端でだめなんだ」と自己肯定感の低下につながります。
視覚優位のお子さんは、耳からの情報を処理することが苦手です。
学校での講義などを聞くだけでは学習の内容を理解できないかもしれません。
板書が少なく口頭で説明するタイプの先生の場合は、内容が頭に入ってこないので、授業がつまらないと感じるでしょう。長男も残念ながら、学校は給食と休み時間だけが楽しみのようです。
また、大事なことを指示されていても聞き洩らしていたりします。私の長男は、宿題はメモを取るように指示されるものの、テストの予定は口頭で伝えられるため、次の日がテストだと気が付かずに復習できなかったという経験が何度もあります。
これは先ほど述べた「集中できない」ということにも関連しています。目に入るものに気を取られ、注意力が散漫になっているときに話を聞き逃すことも少なくありません。
人の話を聞いていないと話し合いをすることが出来ないので、友達とトラブルになることがあります。
また、相手の話に関心がなく、自分の好きな話ばかりしてしまうことも。これは大人でも言えることですね。
全てのお子さんに言えるわけではありませんが、言葉にあまり関心がないので、言葉が遅れるお子さんもいらっしゃいます。
私の長男は、ものの名前はたくさん覚えていました。しかし、動詞のバリエーションはとても少なかったように思えます。
長男は長い文章を読むことも苦手です。小学校に入ると、絵本から児童書へとステップアップさせたかったのですが、文字ばかりのページを読むのはとても嫌がりました。
本を読んでいると「喧嘩して仲直りした」といった人の心の動きにはあまり関心がないようで、感想文を書くのはとても苦労します。
また、ひらがなや漢字はすぐに書けるようになったのですが、文章を読むだけでは情景をイメージするのが難しいようで、挿絵が大きな助けとなっているようです。
語彙が増えていかないと、込み入った話が理解出来なくなり、このことは先ほどの「人との会話についていけない」という苦手にもつながります。
聴覚優位の娘も話の内容を理解することに難を抱えています。
娘の場合は言葉を音として捉えることはできるのですが、言葉から視覚的にイメージが浮かばないため、意味を理解することが出来ないという理由です。
「言葉が遅れている」という同じ問題であっても、原因は子供それぞれ違うのです。その子供が何に困っているのかを把握して支えていくことが必要となります。
視覚優位のお子さんの得意なこと、苦手なことをまとめてみると、マイペースでものごとに取り組む場面ではそれほど大きな問題は起きないように思えます。
しかし、集団行動の中で他人とかかわりあっていく際には本人にとって困りごとが生じてくるようです。
人には承認欲求があり、子供は、親以外の周りの人たちに認められてこそ成長するものです。視覚優位のお子さんの自己肯定感を高めるために、聞くことへの困難を少しずつ支援していくことが大切です。
これまで、視覚優位のお子さんの得意なこと、苦手なことについて確認してきました。
・得意な「目で見て処理する」力を生かした学習方法
・苦手な「聞いて理解する」力を伸ばす方法
以上について、おすすめの商品も紹介しながら説明していきたいと思います。
◆視覚優位のお子さんにはタブレット学習がおすすめ
タブレット教材は、書き込むとすぐに正解・不正解が分かり、間違ったところも確認できます。視覚優位のお子さんは、目から得られる情報の処理速度がとても早いので、テンポよく進むタブレット教材はどんどん進めていくことが出来ます。
講義形式のものではなく、ペンで書き込む教材がよいでしょう。
視覚的に楽しめる工夫がされているものを選びましょう。
◆好奇心旺盛なお子さんと「工作」「実験」を楽しもう
視覚優位のお子さんは目で見る力が優れているので、創意工夫することが大好きです。
視覚優位のお子さんにとっては、工作や実験など自分で手を動かし、実体験から学んでいくスタイルが合っているといえます。
こちらの実験図鑑は、とにかく色がカラフルなのがおすすめのポイントです。
目で見て変化が分かる実験や、ポップでかわいい料理など、視覚優位のお子さんが夢中になるような実験がたくさん載っています。
おうち時間や自由研究に是非活用してみてください。
①国語
私の息子は国語がとても苦手です。特に、ストーリー性のある本を読みたがらないことが気になっています。
・図に書いて把握する
「視覚優位」の人は「同時処理」であるというところから試してみました。
読書では、物語の全体像を把握するために、相関図を作りながら読んでいきます。また、話が分からなくなったと言われた時は、これまでのあらすじを「家を出た」→「〇〇君に会った」→「二人で公園に行った」などと書き出して確認するようにしています。
児童文学の定番の、子供同士が喧嘩したり協力したりしながらお互いに影響しあうようなお話を読んでほしくて始めました。
実際にやってみると、図が完成したときは親子共々とても達成感があります!
しかし、図を書いて終わったのでは物語の内容が味わえないので、やはり図を確認したり本の内容に戻ったりして、「〇〇君はなぜこう言ったのかな」「あなたならどうする?」ということを話し合うことが大切だと考えています。
子供に「読みなさい」と本を与えるだけではなく、子供と同じ本を読み、思ったことについて意見を話し合い、共感しあえたら素敵ですね。目の前のことに追われる毎日でとても難しいことなのですが、これは視覚優位に限らず、どのような親子関係でも言えることかもしれません。
・文章を絵にする、絵を文章にする
息子に合った国語の教材を探していたところ、こんな商品を見つけました。
「文章を見て絵を描く」「絵を見て文章を書く」の両方がトレーニングできます。
息子は「文章を見て絵を描く」はとても面白かったようで、熱中していました。しかし、絵を見て文章を書くのは難しかったようです。
②算数
算数は、ブロックなどを使うと足し算、引き算の概念はよく分かるようです。
百玉そろばんも、繰り上がり・繰り下がりの学習にとても役立ちました。
この商品は、後ろに数字のボードがついているのがとても便利でした。
しかし、数字になるとイメージが沸かないようで、計算はよく間違えていました。
そこで、計算も目で覚えてしまったらミスも減るのではないかと考え、表を作ったりもしました。私は自作しましたが、販売されているものはカラフルで、それぞれ工夫がされていてとても覚えやすそうですね。
視覚優位の能力を生かして、ひとつの表にまとめることで全体を把握し、数同士の関係や規則も自然と理解できるようになったと思います。(4×3と3×4は同じ答えになるなど)
視覚優位のお子さんは、耳からの情報を処理することが苦手なため、先の見通しを立てることが苦手になることもあります。
また、苦手といえどもやはり、相手の話を聞く力もつけたいものです。
①生活を支援する方法
視覚優位のお子さんは「宿題をやって」「スイミングの時間だよ」などと声をかけてもなかなか動かない、といった問題もみられます。
そんなお子さんには「絵カード」がおすすめです。
このように、絵でスケジュールを管理する目的のものは色々な商品が発売されています。
せいかつ絵カードずかん ことばと習慣がぐんぐん育つ! 入園・入学準備に役立つ!
こちらは、「たのしい」などの感情を表す言葉、「はをみがく」などの生活習慣の言葉など、日常会話で使う言葉を絵で表したカードが528枚も収録されています。
ウォールポケットに入れて予定表にしてもよいですし、持ち物を確認するツールにも使えそうです。言葉の意味を覚えることにも役立ちそうです。
②聞く力を身に付ける
我が家では小学校受験はしていないのですが、お受験には「お話の記憶」という課題が出るそうです。クマさんやウサギさんなどが出てくるお話を聞いて、そのあとに「最初に〇〇したのは誰でしょう」などと、いくつかの質問に答えるというものだそうです。幼稚園の年長でそんな高度な問題が出来るとは、お受験で合格されるお子さんは素晴らしいですね。
この課題をクリアするには「お話の要点をおさえる」ということが重要なのではないかと考えます。
また、小学校に入学すると「聞きながら書く」「聞きながら考える」など、複数の作業を同時にこなすということが求められます。人は、知らず知らずのうちに様々な感覚を同時に使いながら情報を処理しているのですね。
今回は「話の要点をおさえる」「聞きながら作業する」トレーニングが出来る本を紹介します。
ワーキングメモリーとコミュニケーションの基礎を育てる 聞きとりワークシート2 大事なところを聞きとろう 編
こちらは、ワークシート形式で聞く力を鍛えることが出来る教材です。聞くポイントや覚える工夫をすれば話が聞き取れるようになるのだそうです。
人の話を聞きながら作業するということは大人でも難しいことですが、この教材を使うと話をメモする、大事なところに印をつける、といったスキルも身に付けることが出来ます。
また、ポイントに注意して聞いていくと、話の流れがある程度予測できるようになります。このような力も、こちらの教材で身に付けることが出来ます。
今回は、視覚優位のお子さんを支援する方法とおすすめ教材を紹介しました。
聴覚優位のお子さんは、人の話をしっかりと聞けるということが強みになります。
一方で教科書などを見て自習することや工作などは、目で見る力が弱いために苦手となることが多いようです。
①集団活動をしっかりと行える
聴覚優位のお子さんは人の話を聞いて理解し、行動することが出来ます。
そのため、幼稚園や学校などの一斉指示にもしっかりと従えます。
また、小学校に入学後も、宿題や持ち物についての指示も把握し忘れずに準備できるため、学校の先生からは「しっかりした子」という印象を持たれることも多いものです。
子育てについての記事においては、聴覚優位についてよりも視覚優位についてのほうが情報量が多いように思えます。
視覚優位のお子さんは耳での情報を処理することが苦手なため、入園・入学後に学校などでのトラブルが発生しやすくなります。
その点、聴覚優位のお子さんは発表会や運動会はそつなくこなし、表面的にはあまり問題がないように見えることで、親御さんの悩みも表面化しにくいのだと考えられます。
②授業を聞き、理解することが出来る
聴覚優位のお子さんは、授業に集中し、内容を理解することが出来ます。
日本の教育システムはほぼ講義スタイルなので、これはお子さんにとって今後とも大きな強みとなります。
私の娘も、家で自習しているときは「分からない!」と癇癪を起こすのですが、学校の先生の授業は面白くて分かりやすいと言っています。
③音楽や外国語の習得に適している
聴覚優位の人の中には、音楽や英語がとても得意な方がいらっしゃいます。
音感がよく、ピアノなどの楽器が得意なお子さんや、リスニング教材できれいに英語を発音出来るお子さんは聴覚優位の可能性が高いです。
私の娘は音感はそれほど良くないのですが、大人向けの難しい歌詞を何度か聞いただけで覚えてしまいます。また歌詞の中に英語のフレーズが入っていても、日本語の歌詞と同じように覚えることが出来るようです。本人は「意味は全然分からないんだけど覚えられるんだ」と言っていました。
また、英語の教材を始めたところ、すぐに発音できるのですが、こちらもやはりセンテンスの意味までは理解が出来ないようで、テストにはなかなか合格できません。
娘については、聞き取った言葉の理解が進めば大きな武器になるのに、と考えているところです。
聴覚優位で言語感覚も優れたお子さんは、難しい言い回しが出来たり、聞いた内容を深く理解したりすることが出来ます。
④ものごとを認知する方法には「同時処理」「継次処理」という二つのタイプがあります。
2章でも述べましたが、ここでもおさらいしておきます。
・「同時処理」は、まずざっと全体図を把握し、次にその中の各部分に注目するというタイプ。
・「継次処理」は、一つ一つはじめから手順を考え順番にこなし、最後に全体を確認するタイプ。
耳で聞く情報は、連続的に流れていくものですので、聴覚優位のお子さんは「継次処理」の能力が長けています。
何か作業をする時には、はじめから1つ1つ工程をこなしていくタイプです。
長女は工作をする時、これからどのような作品に取り組むのか、最後に何が出来上がるのかはあまり知りたがりません。今何をやるべきなのかを確認できると落ち着きます。とりあえず目の前の作業を懸命にこなします。最後に出来上がった姿を見て「かわいいおうちが出来たね」と全体を確認するようです。
聴覚優位のお子さんは、全体指示がある集団活動では問題なく過ごすことができます。一方で、目からの情報を処理することが苦手なため、図などを見て自分で学習する場面では問題が生じることがあります。
①自由時間が苦手
学校での活動に問題がないので、活発なお子さんを持つママ友からは「〇〇ちゃんはいつもちゃんとしてていいわね」と羨ましがられることがあります。
しかし私の長女は、幼稚園の自由時間が苦手でした。長女の場合、視覚認知がとても遅れていたため、一人遊びは出来ず、他人から手取り足取り指示されなければ遊びがままならない状態だったのです。結局、リーダーシップのある気の強い女の子の言いなりになっていたようで、わがままに振り回されてあまり楽しくなかったようです。
②図や絵を見ること、書くことが苦手
聴覚優位のお子さんは、空間認知力が劣っているため、図で示されただけではものごとを理解できない傾向にあります。
1章でも説明しましたが、長女が絵を描けないことがとても気になっておりました。目の前のものを真似して描くことは苦手ですし、頭の中にものごとに関しての視覚的なイメージが少ないため、想像力を発揮した絵を描くことも少ないです。
女の子はお姫様やお城など、ファンタジーの絵を描いて見せあうことが多く、長女は「友達に絵を見られるのが恥ずかしい」と嘆いております。
③不器用で、工作や球技が苦手
聴覚優位のお子さんは目で見る力が弱いため、手先を使うことが苦手になりがちです。
また、動体視力がないと、ボールをキャッチしたりする運動にも問題が生じます。
長女は視覚優位の長男とは違って、レゴなどのブロック遊びは全く出来ませんでした。
2つのブロックがうまくはまっていなくても気づかないようです。また、ボール遊びも不得意です。地域の支援センターで受けた作業療法では、ボールをラケットに乗せて歩く運動や簡単なビーズ通しなどの訓練を受けましたが、苦手を克服するまでには至っていません。
長女のように、聴覚優位で空間認知が劣っていると、「手と目の協調運動」に問題が生じます。このことは、先ほど述べた「絵が苦手」ということにも関連します。
また、ひらがなや漢字など、文字を書くことに困難を示すお子さんもいらっしゃいます。
④全体を見て一瞬で理解することが苦手
最近では、一目で見て全体が見通せるように工夫された教材がたくさん開発されています。
このような図解式の教材は、聴覚優位のお子さんにとってかえって分かりづらいものになってしまいます。長女も1つのページに様々な情報が盛り込んであると、どこに注目したら良いのかが分からないようです。
また、複数の作業がフローチャートなどにまとめられていると、どこから手を付けてよいのかが分からなくなります。聴覚優位のお子さんにとっては、順序だてて1から説明されている教材のほうが合っています。
このように、聴覚優位のお子さんは耳から得た情報を処理し、集団行動ではしっかり指示を聞き、判断することができるという強みがあります。
一方で、目で見た情報を処理することは苦手なため、図で表した説明書などを理解することや、手先や身体を動かす活動は苦手になることが多いようです。
これまで、聴覚優位のお子さんの得意なこと、苦手なことについて確認してきました。
・得意な「聞いて理解する」「順序だてて取り組む」力を生かした学習方法
・苦手な「目で見て処理する」力を伸ばす方法
以上について、おすすめの商品も紹介しながら説明していきたいと思います。
◆聴覚優位のお子さんには講義形式の学習方法、リスニング教材がおすすめ
聴覚優位のお子さんは、学校の授業のような講義を聞くことが得意です。
学習塾に通わせるのもよいですし、苦手な分野があるようでしたら個別指導もおすすめです。
ただし、一斉指導では分からないまま授業が進んでいくというデメリットもあるので、お子さんは「分からないことを質問する力」が必要となってきます。
そこで、最近話題になっている、自宅で学べるオンライン授業の動画がおすすめです。動画なら、分からないところは繰り返し見返すことが出来ます。Youtubeなどには無料動画も数えきれないほどアップされているので、お子さんが気に入ったチャンネルを見つけるのも良いでしょう。人気講師の動画配信を売りにしている学習塾も有名ですね。
経験を積んだ講師は、子供を惹きつける話し方・伝え方を身に付けていらっしゃいます。有名講師の授業が自宅で受けられることは、聴覚優位のお子さんにとっては大きなメリットとなります。
九九や英語などでは、リスニング教材もおすすめです。
ただし、空間認知や言語理解が遅れているお子さんは、流れてきた内容をそのまま暗記することは出来ますが、内容の理解が追い付かないこともあります。
ですので、ただ聞くだけで身につくという教材ではなく、説明書や動画とセットになっているものをおすすめします。
◆手順通りに進めることが得意なお子さんには「料理」がおすすめ
4章で、聴覚優位のお子さんは工作が苦手なことが多いと述べました。
しかし、料理の本ではまず材料を洗い、包丁で切って、下味をつける、といったように順序だてて説明されています。分量もしっかり記載され、作業の内容も明確で、手順通りにこなせば完成させることが出来ます。
私の長女は工作はやりたがりませんが、料理には興味を示し、一緒にお菓子を作ったりすることが出来ます。工作では、不器用だと色がはみ出たり紙が破れたりしてよい仕上がりになりません。しかし、料理では切った野菜の形がいびつでも、美味しく出来れば見た目はあまり問題になりません。長女は料理では上手く出来たという「成功体験」を得られるようです。
こちらの料理本は、子供が一人で家族の食事を作れる工夫がされています。
長女もこの本を読んで、朝食の目玉焼きや、お昼ごはんのチャーハンを作れるようになりました。私の体調が悪い日、主人と子供たちで協力し、一日のご飯を作ってくれました。
自分で作ったご飯はなによりのごちそうですし、家族の役に立ち、喜んでもらえるということは子供にとって自信につながり、かけがえのない体験となります。
◆教科別の学習方法
①国語
聴覚優位のお子さんは、文字の習得に時間がかかる場合があります。
文字を視覚でうまくとらえられないところを、「聞く力」で補うとよいでしょう。
こちらは、長女のひらがなの練習で利用しました。
ひらがなは何とか覚え、たどたどしく書けるようになったのですが、進級して字の指導が厳しい先生が担任になってしまいました。赤ペンでお直しが入ると悲しい気持ちになるようで、きれいに書けるように練習している最中です。
こちらの教材では「あ」を書くときに「みじかくてななめうえ」「そる」「つきのようにまるく」と、分かりやすく言葉で説明が添えられています。この本は発売されたばかりなのですが、こちらは説明をつぶやきながら練習できるので、聴覚優位のお子さんにぴったりの教材だと考えました。
また、絵を描く練習をするときに、同じ著者のあきやまかぜさぶろうさんの本に助けられたので、ここで紹介しておきます。こちらの本で、絵が苦手な長女も動物や果物の絵を描けるようになりました。
決定版 1日10分で えがじょうずにかけるほん 3さい~6さい対象
②算数
算数では、足し算や引き算をブロックで説明しても、計算問題がなかなか解けなかったので、こちらはドリル教材を使って「暗記する」方法を選びました。
計算問題は「2たす3は5、2たす4は6」「1くりあがって」などと、言葉に出しながら毎日続けることでクリアしました。
長女は文章題も苦手で、まだうまくいった方法がないのですが、根気よく何度も問題を声に出して読み、条件を確認するように声かけしています。
聴覚優位のお子さんは、図を見て理解することが苦手になりがちです。
また、目と手の協調運動が苦手なので、手先が不器用、運動が苦手といった問題も生じてきます。
これらの分野を支援する方法について説明していきます。
◆ビジョントレーニングに取り組もう
ビジョントレーニングとは、視覚機能を向上させるための訓練です。目を動かしながら手先や身体を動かすトレーニング方法です。長女が療育で受けたのはこの内容が中心でした。
学ぶことが大好きになるビジョントレーニング〈2〉見る力をグングン伸ばして楽しく学習
「ビジョントレーニング」と聞くと特別な内容のように思えます。しかし、実際に療育で受けた内容は昔ながらの遊びばかりです。以下に挙げてみます。
・ボール遊び(ラケットにボールを乗せて運ぶ)
・低い平均台の上を歩く(昔はブロックの上などをよく歩いたものです)
・ビー玉を転がし、キャッチする
・折り紙
・パズル
・めいろ
これらはどれも、目の動きと身体や手先の運動を同時に行う活動です。
このような目の動きを鍛える知育玩具についても紹介します。
こちらは長女が大変気に入りました。作ったものを友達にあげるのが楽しかったようです。
楽しみながら平面図形を認知する力を養えます。
考える力を育てる 天才ドリル プチ てんびょうしゃ 【4歳以上】
「点描写」は難しいものもたくさん出版されていますが、長女にはこれが一番合っていました。
簡単なようですが、隣と見比べながらまっすぐに線を引くことは長女にとっては大変な作業でした。眼球と手先を協調させる訓練になります。
こちらは立体の感覚が磨かれます。
得意なお子さんは超大作を作ってネットで公開されていたりします。しかし、苦手なお子さんは、このように作れるものが決まっている小さなシリーズから始めてみるとよいかもしれません。
ここまで、「あなたのお子さんは視覚優位?聴覚優位?認知特性を知って子育てに生かそう」といったことを説明してきました。
今までのポイントを振り返っていきたいと思います。
日ごろお子さんが好きなこと、苦手なことをよく観察し、お子さんがどちらのタイプなのかを知りましょう。
また、地域の専門機関で受けられる発達検査でも特性が分かります。発達障害が疑われる場合は自己判断せず、まずは専門家への相談をおすすめいたします。
人はつい、自分が良いと思った方法を試そうとしがちです。
あなた自身のこれまでの経験を振り返り、あなたの特性についても考えてみましょう。
あなたの特性とお子さんの特性を照らし合わせたうえで、普段お子さんに接するとき、声かけの方法などを変えてみましょう。
話題の商品をすぐに試すのではなく、学習の教材はお子さんに合っているかどうか、よく確かめて選びましょう。
学習支援は、お子さんの意見を聞きながら、お子さんが理解しやすい方法を探してみましょう。
私の体験が、少しでも多くの方の役に立てれば幸いです。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
田中さんより