『子ども』を育てることって、こんなに素晴らしいこと!

2022年1月21日

子育て

1. 『いずれ社会に出て活躍する人材を育てる』という大仕事

『共感』してくれる存在

『子育てには1人2000万円かかる』
『保育園に入れない』
『子どもの急な発熱や病気などで、仕事に迷惑がかかり、続けられなくなるのでは』
など、子育て支援策が増えてきたといっても、まだまだ子どもを育てるには、壁が沢山あるのが現状の日本社会です。また、
『子どもには個性があり、子育てには正解はない』
ということが、頭では分かっていても、
『不安だから検索する』
『子どもにとってベストな関わりをしたいから調べる』
など、『子どものため』という目的意識が、知らない間に情報に振り回されるという状況を作り出している、という方も多いのではないかと思います。

保育士である私も、子育てに悩む親の一人でした。しかし、大雑把で楽観的な性格であったこと、第一子の息子を産んだ10年前は、現在ほどSNSが普及していなかったこと、などの要因もあり、インターネットで育児についての検索をするものの、『悩みの答えを求めて…』というよりは、“寝ない”“食べない”などの悩みを、同じ子育ての悩みをもつ芸能人のブログを読むなどして、「よかった~わたしだけじゃない!」「わたしもがんばろう!」と、戦(育児)に挑む為の原動力を得る為だったように思います。

思うようにいかない育児に、どうしようもないほどイライラした時も、同じ悩みを持つ人の存在を感じることで、自分の悩みに『共感』してもらっているような気持ちになっていたのだと思います。
『共感』してもらえることで、ウソみたいに心がスッと軽くなっていくので不思議でした。

子育ては、自分の力ではどうしようもできない事態がたくさん起きます。
だからこそ、状況を良くする為の知識やスキルを手に入れることよりも、気の持ち方を変えることの方が大事である場合も多いと思います。

私自身にとっては、『共感』してくれる存在が、気の持ち方を変え、肩の力を抜き、前向きな考え方へと導いてくれることが多くありました。自分の思いに『共感』してくれる人の存在は、初めての育児が始まったばかりの頃も、今も、私にとってとても大きなものです。

人は昔から群れで子育てをしてきた歴史がある。

私の住まいは、実家が近く、義理両親とは敷地内同居、姉と妹家族も近隣在住という、恵まれた子育て環境です。頻繁に会うことが出来る友人も近くにたくさんおり、『子育て=弧育て』と感じたことは、一度もありません。
核家族が多い現在の日本では、ワンオペ育児や、いざとなった時に頼る人がいない子育て環境の問題点についてあげられることが多いですが、同居や私のような敷地内同居に対して、
「私には無理!」「すごいねぇ」とマイナスな捉え方をする方も少なくはありません。

『核家族は、子育てで大変なことはもちろんあるけれど、わたしだったら干渉されることの方がもっとストレスを感じるな…』と言うママ友に、何人も出会ってきました。

しかし、人類の子育ての歴史の中で、『核家族=家庭内のみで育児を行う=弧育て』というこの状況こそイレギュラーであり、人はもともと協力し合って子育てをしてきた生き物で、そのDNAが私たちの中には流れています。
縄文時代は、『子は宝。神様からの授かりもの』であり、自分の村が生き残るために大切な子孫と考えられていました。村が一つの会社であり、子どもは新しい社員。人手は多ければ多いほどいいとされてきました。『人権やプライバシーの感覚は?』と気になりますが、そこには、自分と人との垣根がありませんでした。
現在は、人は人権を獲得しました。
襖だけで、ほぼ個室のなかった日本家屋から、プライバシーを確保できる個室を持つようになり、やが
て家族の単位そのものが核家族となり、孤立してきました。
つまり、『子育て』とは、家庭の中だけで行うことができる簡単なことではなく、いろいろな人が手
を取り合い、協力し合ってやっと成し遂げられるもの、ということです。

子どもが通っている保育士さんに助けてもらうのは当たり前
困っていたらママ友に頼るのは当たり前
両親に手を貸してもらうのは当たり前

助けてもらったら「ありがとう」と言い
自分が助けられる立場になったその時には
自分も誰かの子育てを支える存在になろう
『人を育てること』とは、それくらいの気の持ちようでいても、全くおかしくないほどの大事業なのだ
と思います。

『誰かに頼ること自体が自分にとってはしんどい』
『子育ては夫婦2人で協力し合ってしたい』という家庭も、

『周りの力を借りて子育てをすることに抵抗がなくなれば、子育ての大変さが軽減し、もっと力を抜いて、それぞれが生き生きと子育てを楽しめる世の中に近づくだろうなぁ』と思うのです。

専業主婦の持つ謎の後ろめたさ。

私は、4年の育児休暇の間に2人の子どもを出産し、育休復帰後4年間働き、現在は15年間働いた保育士の仕事を休職して2年目になります。

育休復帰時は、3歳の息子と1歳の娘を朝の8時に園に送り、19時に迎えに行く毎日を過ごしていました。目が回るようないそがしい日々でしたが、息子が小学生になってからは、お迎えの場所が2か所になり、更にパワーが必要になりました。
反面、『早出の日は、できるだけ残業はせず、早くお迎えに行こう!』『残業はお迎えの時間まで』と、目安があるため、常に優先順位を考えて仕事をすることができ、独身時代よりもかなりメリハリのある働き方をすることができていたように思います。
基本は3時に起きて、仕事や溜まった家事、朝ごはんとその日の夜ご飯の準備を同時に行っていました。園や学校の書類の整理だけでも、地味に時間がかかります。
かなりの早起きですが、子どもと一緒に21時過ぎには就寝していたので、何とか頑張って起きることが出来ていました。
いつの間にか夫も、朝方の生活に変わっていきました。
朝の4時頃、録画してあるドラマを見ながら、私は食事の支度、夫はワイシャツのアイロンがけ、というのが、当時の早朝の我が家の光景でした。
そして、保育士退職後、娘は年長児であったので、1年間だけですが幼稚園ママの立場も経験することができました。

① 3歳11か月まで家庭で子育て
② 2児の子どもの子育てと仕事の両立
③ 学童
④ 幼稚園ママ
⑤ 小学生の放課後

現在は⑤の立場を経験中ですが、それぞれのステージで、たくさんの貴重な経験をすることができました。
④の幼稚園ママの時代には、たくさんの専業主婦の方と知り合うことができました。その時、よく言わ
れた言葉があります。

「仕事しながら子育てしてたなんて、ほんとすごいなぁ」
「わたしなんて、子育てしかしてないのに、毎日いっぱいいっぱいやで…」という言葉です。

仕事しながらの子育ては、とにかく時間に追われるため、もちろん大変なのですが、果たして本当に
『専業主婦の方が楽で、仕事をしている方が大変なのか?・・・』

わたしの育休復帰時の話ですが、
『トイレに行きたいときに行ける!』(保育士という職業柄、毎回そうではいきませんが)
『仕事帰りに寄り道ができる!』(時もある)
ということに対し、とても感激したその時の気持ちを、今でも鮮明に思い出すことが出来ます。
専業主婦の生活は、それほど子どもと密接していて、子ども中心になることが多く、自分のペースで動くことに抵抗を感じがちです。
仕事を始めたことで、今まで以上に時間のリミットがあるタスクは増えたけれど、それよりも、自分のペースで考え、動けるという、子どもが出来るまでに当たり前にしてきた生活を得られたことへの喜びが、私の場合は勝ったのでした。

過酷で壮大なプロジェクト!?子育てのゴールは?

情緒的、経験的に語られることの多い子育ては、仕事と違い『成果が見えにくい』ことにより、達成感が得にくいという面があります。それが、専業主婦のママ友の、「私なんて、子育てしかしてないのに…」という言葉を生んでいるのでは…とたびたび感じていました。
そんな時、「そんなことないで!!子育てっていう仕事に、毎日向き合っていて、本当にすごい!頑張ってる!」と毎回胸を張って返せる自分がいます。私自身が幼稚園ママで、専業主婦の時でさえ、自信を持って言っていました笑
保育の知識があることで、子どもの発達についてはもちろんですが、子どもを育てるということの『尊さ』や『責任』の大きさ、もちろん『大変さ』についても、子どもの専門家としての知識からも理解していたので、自信を持って言うことができたのです。
親になってから今日まで、沢山の苦労がありましたが、そんな中でも、『わたしってすごい!』『わたし、頑張ってる!えらい!』と、自分を褒めながらやってこれているも、支えてくれる人たちと、保育士としての知識と経験のおかげだと思っています。

尊くて難しくて、そしてとびきり大変なことだからこそ、人類が協力し合って行ってきた『子育て』。

1. 乳児期はしっかり『肌』をはなすな
2. 幼児期は肌をはなせ、『手』をはなすな
3. 少年は『手』をはなせ、『目』をはなすな
4. 青年は『目』をはなせ、『心』をはなすな

という、『子育て四訓』と呼ばれる言葉があります。

この言葉のように、子育ては『青年期』、一般的に子どもが自立をする時期まで続きます。
自立=就職=社会的に自立=心理的にも経済的にも自立
と考えると、自立後の子どもは、社会で活躍する人材の一員です。

『愛情をたっぷり受けて育った子どもが、いずれは社会に出て、誰かの役に立つ』ということが、子育てのゴールだと考えると、親としてこれほど誇らしいことはないと思いませんか。

2. 保育士のわたしが経験した、子育てヘトヘト記

私ってこんなにイライラする人間だったんだ

わたしは、物心ついた時から、自分よりも小さな子を構うのが好きなおんなのこでした。
そんなおせっかいなわたしの将来の夢は、ずっと変わることなく『保母さん(保育士)』でした。

大学受験を控えた高校時代も、進路は迷うことなく保育士と幼稚園教諭の資格が取れる大学を選択しました。
その後、無事保育士として就職し、丸7年働いた後、第1子の息子を出産しました。

「保育士だから、子どもとの接し方には慣れてるよね」
と言われることが多かったのですが、新生児との関わりは初めてであり、戸惑いの連続でした。

その中でも『睡眠』に関しては、息子でも娘でも大変苦労し、苦い思い出がたくさんあります。

特に息子は、わたしの接し方なのか、もともとの性分なのか、眠ることが本当に苦手な子で、生後2か月頃から、寝かしつけに本当に苦労しました。
息子が2歳前の頃のエピソードがあります。
車で片道2時間ほどの場所に遠出をしました。
車が大好きな息子ですが、車に乗って出かけることは大嫌いで、いつも車に乗る前からチャイルドシートに乗せられることを拒んで暴れたり、走り出してしばらくすると大声で泣き始めたりします。
その日の息子は、ウトウトと眠気に襲われてしてしまうことが不快だったようで、
「おめめがかってにしまっちゃうよ~!いやだよ~!!」
と、大泣きし、自分の指で両目をこじ開けていました(笑)
結局、その後の1時間半ほどの道中は、大泣き&ぐずりながら、無事?一睡もすることなく目的地に到着した息子です。

『眠るのが苦手→嫌い』になっていった息子は、1歳の時から早々にお昼寝を拒否。
しかし、体は眠たがっているので機嫌は悪く、グズグズモードが長く続きます。
もちろん、眠る為に横になることも大嫌いなので、『添い寝』などできるはずがなく、『うっかり眠ってしまった』という奇跡的な状況を作ることもできません。

さらに、お昼寝を拒む上に、夜も眠る(横になる)ことを拒み、
『このちっちゃいカラダのどこにこんな体力があるの??』
と、母である私は、毎日ヘトヘトでした。
そして極めつけは、夜泣き。
あれだけ日中体力を使い、食事もよく食べ、お昼寝もしないのに、夜中何度も泣いて起きるのです。
それも、1回や2回ではなく、ひどい時は10分おき・・・
そして、添い寝では泣き止まず、眠ることも出来ず、毎回抱き上げて寝かしつけ・・・

ヘロヘロになっているわたしを見かねた夫が、『代わるよ』と、何度も助けてくれたことが唯一の救いでした。その当時は、帰宅が深夜になることもあるほどのハードワークだったのにも関わらず、
一緒に子育てを頑張ってくれていた夫。
子育ての大変さを共有してくれていた夫の存在は、とても大きかったです。
この頃のエピソードを思い出すと、
『今後何かあったとしても、熟年離婚は思いとどまることができるな!』
と、いつも思います。(笑)

そんな優しい夫に恵まれた私も、終わりの見えない夜泣きに、体力も気力も、冷静さも奪われていくのでした。

基本わたしは、息子が寝てくれなくても、夜何度起きても、どんと構えて、向き合うことが出来るタイプではあったのですが、寝不足が続いた時にはそのようにはいかず、

『何でねてくれへんの!?』
『立って抱っこするの、毎回疲れる・・・』と、ネガティブな考え方しかできないようになっていました。
抱っこの時の揺らし方にもイライラが現れてしまい、暗くて見えてはいなかったものの、息子を見る表情も、それはそれはひどい顔をしていたと思います。

『わたしって、こんなにイライラする人間やったんや・・・』
と、自分の見たくない嫌な部分を見せられているような気持ちになり、自己嫌悪。
思い描く、優しくて穏やかな理想の母親像とかけ離れている自分の姿に、何度もがっかりし、自信をなくしていました。

そんな息子の『とにかく寝ない』問題にも、成長に合わせて少しずつゴールが見え始め、
2歳5か月の時にやっと、朝まで1度も起きることなく目覚めることができる日を、迎えることができたのでした。
その頃には、下の娘も産まれ、ほどなくして娘にも『寝るのが苦手』問題が起きます(笑)
しかし、息子の時に十分鍛えてもらった私と夫は、『よっしゃ、なんでもこい!!』と、それはそれはたくましくなっていたのでした。
鍛えてくれた息子には、感謝です。
親として、人として、ちょっぴり成長させてもらったように思います。

そんな息子も、現在は9歳に。
ふかふかの布団で眠ることが大好きな小学3年生。
朝は何度起こしても、なかなか目覚めません。(笑)

ありのままを受け入れるという選択

眠るのが苦手な息子に悩まされた当時、
インターネットで同じ悩みを持つ方を探したり、寝かしつけのコツが書かれた本を購入して読んだりしていました。

しかし、一般的に言われる、
① 朝は朝日を浴びて、決まった時間に起こす
② 生活リズムを整え、できるだけ毎日同じ流れで過ごす
③ 睡眠時にはルーティーンを作る
④ 午睡は年齢・月齢に合わせた時間にし、寝すぎないように
⑤ 日中は、よく遊び、よく食べる

などは、すでに取り入れている習慣であったので、残念ながら、特に参考になることはありませんでした。
保育士の仕事でも、園生活に慣れず、入園当初のどの子も不安な時期の、一人ひとりの睡眠の個性を十分に掴みきれていない時でも、
わたしはどちらかというと、子どもたちのお昼寝の寝かしつけは好きで得意な方で、それぞれの個性に合わせて、安心して眠ることが出来る環境を作ったり、関わったりしてきました。

そんなこともありながら、
『この子は、寝ない子なんだ!』
『個性として受けとめて、開き直るしかない!』と、受け入れられるようになってからは、気持ちの面ですごくラクになったと思います。

それまでは、同じ位の年齢の子どもを持つ友達が、子どものお昼寝中や、就寝後に、『ドラマや映画を観た』『趣味の時間を持っている』などの話を聞くたびに、
『うらやましくてしょうがない!!』という気持ちと、
『何でわたしはうまくできないんやろ…』という自己嫌悪に陥っていました。

『息子の寝かしつけが大変』ということを知ってくれている人たちの存在にも、本当に支えられました。

『大変やのにがんばっているね』という声をかけてもらえると、心から救われる思いでした。
その人たちが夜泣きの対応を代わってくれるわけではないし、
わたしもそれを望んでいる訳ではないのですが、
そう声をかけてもらえるだけで、
『よし!今日もがんばろう!』
と思うことができました。

自分自身が眠気のピークで、本当にイライラしている時は、可愛くてしょうがない息子が、憎らしい存在にさえ感じることがあったので、恐ろしいものです。

つくづく、子育ては一人だけではできないなぁと感じます。
あの頃、もしも、寝不足のイライラを一人で抱えていたとしたら・・・

そんなことを考えると、恐ろしくてたまりません。

3. 知っているのと知らないのとでは、大きく変わってくるという話

おもちゃを譲ることができる子は、優しい子?

子どもたちの『睡眠』に関しては、とても苦い思い出があるわたしですが、保育士の経験の中で、たくさんの子どもに出会ってきました。
ひとつの場面に対して、何パターンもの子どもの行動を知っているので、自分自身の子育ての中でも、ある程度の事態は予測することができます。
予測ができることで、冷静に考え、対応することができます。

また、乳幼児期の子どもへの関わりが、いかに意味があり、尊いことか!
これを知っていることで、とても大変な乳幼児期の子育てに、意味ややりがいを見出すことができ、前向きに楽しく子どもたちと接することができていると思います。

そんな、わたしが『知っていて得をしたな!』と感じる子どもに関することを、日々、子育てに追われ、悩んでいるパパ、ママが、
『もしも知っていたら、悩みが軽減しただろうな』
『叱らなくてすんで、パパ・ママも、子どもも、互いにハッピーなのにな』
と感じる場面に出会うこともありました。

育休中、児童館で遊んでいると、子ども同士のおもちゃの取り合いの場面を見かけることが何度もありました。
平日の児童館は、利用者の大半が就園前の子どもなので、0歳児~2歳児(幼稚園でいう年少さんの、1学年下)の子どもが遊んでいることが多いです。

『人が使っているおもちゃは、取ったらダメなんだよ』
『貸してって言ってないでしょ』
『お友達と一緒に使わないとダメよ』

と、一般的なおもちゃの貸し借りのルールを、何度言っても守らない我が子にイライラするママ。
簡単な言葉を話し始めると、ついついいろいろなことを理解していると思い、いろいろなことを求めてしまいます。

それとは逆に、おもちゃを使いたそうに近寄ってくる友達がいると、自分からおもちゃを手渡したり、
「かして」と言われると、すぐさま、「いいよ」と言い、自分が使っていたおもちゃを譲ったりすることができる我が子の姿を見て、「偉いねぇ」と嬉しそうなママ。
お友達に譲っている姿を、『優しい子』と捉えると、褒めてあげたくなると思います。
そして、そんな『優しい子』の姿を見ると、おもちゃを取ってしまう我が子、「かして」と言えない我が子は、『ダメな子』に見えてしまうかもしれません。

このような場面は、児童館で日常的に見られました。
“躾”に関することは、家庭によって大事にしていることが違うので、他人がどうこう言えることではもちろんありません。
でも、おもちゃを取ってしまったことを叱られて泣いている子、おもちゃを譲ったことを褒められている子を見て、何だか切ない気持ちになるのでした。

保育士という立場から考えてみる

対象を1,2歳児と想定し、この場面での子どもの心の発達を考えてみると・・・

■おもちゃを取る、貸してもらえなくて大泣きする
・自分以外の周りの世界への興味関心が広がっている
・観察力がある
・「そのおもちゃで遊びたい!」「そのおもちゃが好き」という思いが育っている
・自己主張ができている
・自分の思いを、安心して他者に表現することができている

■おもちゃを譲る、取られても泣かない
・「そのおもちゃが大事」「もっと遊びたい」という自分の思いは?
・自己主張が苦手?
・自分の思いを安心して他者に表現することはできる?

などと考えられます。

もう少し年齢が上がると、捉え方もまた変わりますが、おしゃべりが上手になってきたとはいえ、これくらいの年齢の子どもたちは、子どもだけで貸し借りを上手にすることはまだまだ難しい時期です。
大人が繰り返し貸し借りのモデルとなったり、言葉を補ってあげたりしながら貸し借りをする経験ができるようにする、などの援助が必要で、『おもちゃを取ってもしょうがない』『おもちゃを譲ることは難しい』
と思っていた方がよいと思います。

それは、我が子がお友達のおもちゃを取った時に、『何も声をかけなくてもいい』という意味ではもちろんありません。
おもちゃを取った時であれば、
『〇〇ちゃんも使いたかったんだね。急に取っちゃうと、お友達がびっくりしちゃうから、“かして”って言おうね』
などと声をかけるとよいと思います。
“〇〇したかったんだよね“と、子どもの思いにまず共感するようにすると、子どもたちは、その後の大人の言葉に素直に耳を傾けてくれます。

取ってしまった相手の子どもには、
『びっくりしたよね。急に取っちゃってごめんね』
と親が代わりに声をかけてあげるとよいと思います。
子どもに無理やり言わせた『ごめんなさい』よりも、親が謝る姿を見せることで学ぶことは多いです。

このような経験を、何度も何度も繰り返し積み重ねていき、子どもたちは、自分の気持ちをコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりし、人と関わる術を学んでいきます。

今回のこの“貸し借り”のエピソードでは、『おもちゃを取ってしまう子』は、一見『乱暴な子』『叱られてしまう子』、
『おもちゃを譲ることができる子』は、『優しい子』でした。

その場の子どもの行動だけを見ると、
『今ちゃんと叱らないと!』と捉えていた姿も、
子どもの発達という側面から見ることができれば、
『自分の気持ちを表現することができたんだな!』
と、プラスの姿として捉えることができていたかもしれません。
さまざまな子どもの姿を、プラスに捉える視点があるのとないのとでは、その後の声かけの仕方も、関わり方も、大きく変わってきます。

大人の子どもへの関わり方は、月齢や年齢によっても変わってきます。
もちろん、子どもそれぞれに個性があり、子どもによっても関わり方は変わります。
親の関わり方が、子どもの成長に大きく関わると思うと、責任の大きさに荷が重くなりますが、
『誰よりも我が子のことを知っているのはわたし!!』
と胸を張り、子どもの思いを大切に接すると、今の我が子がどのような発達段階にいるのか、どのような関わりが必要なのか、見えてくると思います。

乳幼児期に、自分の気持ちを十分受けとめてもらい、安心して表現できる経験を積み重ねられた子どもは、何にも代えられない大切な力を得ることができます。
これらは、子どもたちが大人になり、“自立”への道を歩んでいくためにも、欠かせない大切な力です。
そう考えると、
『乳幼児期の子育てって、なんてやりがいがあり、尊いものなのだろう』
と私は思うのです。

4. 正解はないからこそ、自分らしく楽しめばいい

赤ちゃん時代の子育て

歩いたり、おしゃべりをしたりする前の、赤ちゃんの時期の子育ても、その後の育ちにつながるとても意味のある大切なものです。

おむつを替えて、授乳をし、寝かせる…
お世話が中心になり、どうしても事務的に、機械的になってしまいますが、それらの中での関わり方を意識することで、人が豊かに生きていく上で、とても大事な部分を育むことができます。

保育士や幼稚園教諭は、それぞれ“保育所保育指針”“幼稚園教育要領”“幼保連携型認定こども園教育・保育要領”などに基づき、保育を行っています。

それらの中には、保育の内容や運営に関する事柄が示されています。
また、それぞれの時期の子どもの特性や、保育の内容・方法が細かく記載されています。

小学校での『国語・算数・理科・社会』のように、保育に関する領域は、『健康・人間関係・言葉・環境・表現』の5つに分かれており、『5領域』と呼ばれています。
これらを基に、子どもが様々な経験を積み重ねられるよう、総合的に保育しています。

『子どもとただ遊んでいるだけ』

と言われることもある、保育士等の仕事ですが、実は深くて広い知識と、きめ細やかな配慮の元、日々の保育を行っているのです!

そして、赤ちゃんの時期、乳児期の保育では、今後5領域につながっていくものとして、
① 『健やかに伸び伸びと育つ(身体的発達)』
② 『身近な人と気持ちが通じ合う(社会的発達)』
③ 『身近なものと関わり感性が育つ(精神的発達)』
という、『3つの視点』というものが定められています。

感覚では何となく分かっている、
『小さい頃の子育てが、その後の子どもの人格形成にも大きく影響するし、すごく大事!』ということについて、
この“3つの視点”から、赤ちゃんの時期の子育ての大切さについて考えてみたいと思います。

赤ちゃんは、とにかく泣きます。泣くのがお仕事です。
言葉でのやりとりができない乳児期は、まだはっきりと区別のつかない喜怒哀楽(未分化の情動)で周囲の大人とのやりとりをしています。
親が自分の働きかけに応答してくれることで、今、自分の感じていることが『気持ちがいい』ということなのか、あるいは『不快だ』ということなのか、それとも『うれしい』ということなのかを徐々に理解していきます。

例えば、『オムツを替える』と関わりでは、
・『きれいになるって気持ちいいな』ということを知る。 ・・・ ①
・泣いたら駆けつけてくれ、不快を快にしてくれる大人の存在に、安心感を抱く。 ・・・ ②

などの力が育ちます。
これらのやりとりが繰り返されるなかで、自分の欲求が満たされ、いい気持ちになる時にはいつも、人の温かい優しい声と顔があることを経験し、人はよいものだと感じていきます。

また、生後0か月~3か月の赤ちゃんは、動くものや光るものによく注目し、目で探索します。
5~6か月になり、腹ばいの姿勢がとれるようになると、ものに手を伸ばしてつかんだり、なめたり、という探索を始めます。
特定の大人との愛着関係ができる乳児期後半になると、赤ちゃんの好奇心は外へ向かい始めます。
この頃には、親にとっては『困った行動』になることも増えますが、③の力が大きく育つ時期です。
これら、身近な環境に興味や好奇心をもって関わることは、『感じたことや考えたことを表現する力の基礎』となります。

オムツを替えても泣きやまず、寝かせてあげようと、抱っこをしてあげても泣きやまず、ハイハイをし始めたら、次から次へと何でも口にして・・・という状況が続くと、私たち親は、心配から次第に、イライラの感情が芽生えてしまうこともあると思います。

しかし、そんな時、自分が毎日当たり前のようにしている、赤ちゃんへの関わりの一つ一つがとても意味のあるもので、赤ちゃんの成長につながっていると思うと、毎日の育児にやりがいが生まれませんか?

わたし自身の赤ちゃん時代の子育てを振り返ると、慣れない育児で、バタバタといい加減なもので、心配やイライラの連続ではありましたが、1日が終わるときには、いつも達成感がありました。
『今日も、わたしにしかできない、重要な任務をこなした!』
と思っていました。
我ながら、楽観的で単純だと改めて思いますが、これくらい単純に考えられた方が、子育てへのパワーが蓄えられるのかもしれません。
親が元気で楽しそうだと、子どももごきげんで前向きになるはずです!!

大事な時期だからと気負いせず、親が自分らしく

泣き止んでくれない、寝てくれない、ミルクや母乳を飲んでくれない・・・

待望の我が子、愛おしい我が子なのに、なぜこんなにイライラするのだろう。
なぜこんなにずっと不安なのだろう。

『子どもを産んで、親なり、初めて密に子どもと関わった』という人が、多い今の世の中。
子どもを知らずに親になったとしたら、不安で、心配で、悩んで当たり前だと思います。

歩き始め、おしゃべりを始め、友達との関わりを求めるようになり、就園するようになれば、子どもをきっかけに、出かける場所も増え、おのずと親の世界も広がるかもしません。

しかし、ほとんど寝て過ごす赤ちゃん時代、社会から取り残されたような気持ちになり、孤独を感じることもあると思います。

でも、そこにあるのは、人としてとてもとても大事な、根っこの部分を育むことができる日々です。

なぜ泣き止まないのか、あれこれ考えることも、
フラフラになりながらする、深夜の夜泣き対応も、
当たり前と思い、定期的に行うオムツ交換も、
自分のペースで行けないトイレも、
子どもの相手を合間にするため、進まない家事も、

すべては子どもが、『人っていいな。あったかいな。』と感じる心につながっていきます。
親が自分を大事にしてくれた、ということは子どもにとっての最大の財産です。
そんなことを少しでも頭の片隅に置きながら、小さな我が子に関わることができると、子どもにも、自分にもより優しくなれますよね。

そうはいっても、思うようにいかない子育てのその瞬間は、辛くて前向きになれないものです。
しかし、未来を生きる子どもたちが、健やかに育っていくためには、何よりも育てる側である大人の心が自由で豊かで、生き生きしていなくてはなりません。

親が自分のしたいことをする、ということは、子どもを大事にしていない、ということでは決してありません。
何でも子ども優先にする必要はなく、親が楽しそうにしていることが、子どもにとっても良い環境にもなります。

私自身は、育児の合間に温かいお茶を飲むことで、疲れが取れ、気分転換をすることができました。
朝、お気に入りの保温ポットに満タンのお湯を入れ、お気に入りのカップに入れて飲むお茶は、体中に
染み渡りました。

行政のサービスを使い、ほんの数時間だけでもショッピングに出かける。
好きな音楽を聴く。
こっそり一人で高級スイーツを食べる。
夜ご飯をカップラーメンにして、子どもとゆっくり関わる時間を持つ。
スポーツや宅トレなどで体を動かす。
地域の子育てサークルに入る。

など、自分の『ごきげんをとる方法』を、ぜひ見つけてほしいです!

5. 親になって、世界の見え方が変わる

子どもが教えてくれる、何気ない日常の中のたくさんのシアワセ

子どもを産む前は、外に食事に行ったり、遊びに行ったり、深夜まで起きてのんびり自分の好きなことをしたりすることを、楽しい時間、リフレッシュできる時間だと感じていました。

子どもが産まれると、そのような時間を持つことは難しくなります。

『あの頃のように過ごしたいな』
と思ったり、
主人に子どもを預け、授乳の合間の数時間、外に出かけることができても、
『時間を気にせず、好きなことをしたい』
と思ったりしていました。

出産して間もない頃は、環境の変化に自分自身が追いついておらず、価値観か以前のままであったのだと思います。

しかし、次第に、新しい親としての生活の中で、得るものが多くなっていきました。

子どもの可愛さはもちろん、
親になる前と後では、同じものを見ても違った感じ方をするようになりました。

まずは、生活。
『規則正しい生活の心地よさ』を実感するようになりました。

朝は早く起き、効率よく家事をこなし、午前中にしっかりと体を動かす。
夕方にお風呂に入るなんて!
17時に晩御飯を食べるなんて!
子どもを持つ前の自分が知ったら、びっくりです!

子どものリズムに合わせて生活を進めるため、わたし自身も、早々にちゃんと眠たくなります。

子どもや家族のためにと、自分なりに栄養を考えて作った食事を食べ、早寝早起きをし、毎日子どもの遊びの付き添いで適度に体を動かす。
こんなに規則正しい毎日の中です。
体は元気、お肌は調子が良い!!
わたしは、一人だとついつい怠けてしまう性格なので、
『子どものおかげで、わたしも健康やわぁ』
と、子どもたちの存在に感謝しています。
子どもが大きくなってきた今は・・・いい加減がよい加減、です!!

また、『身の回りの見え方が変わる』という変化もありました。

子どもと一緒に歩く道。
子どもの目線に合わせ、しぜんと自分の視野も下がります。
すると、道に咲く花や植物が目に入るようになり、
毎日見るうちに、それらの成長を感じ、変化が分かるようになり、
そのうち、空や雲、木々やまちの様子にも目が向くようになりました。
四季の移ろいをいろいろなものから感じるようになり
その美しさにハッとさせられる瞬間が増えました。

子どもが産まれる前には、見えていなかったこと、感じられなかったことが多かったのだな。
と思います。
わたしは、子どものおかげで、日常の景色がより豊かなものに見えるようになりました。
また、当たり前の毎日のありがたさを、身に染みて感じるようになりました。
当たり前の毎日の中に、尊いものが沢山あるんだな、ということを、子どもに教えてもらいました。

子どもがある程度大きくなると、特別な場所に出かけ、その場所で見て、感じる、特別な感情もあると思います。
しかし、子どもが幼い頃は特に、いつもの場所のいつもの景色の中でも、美しいもの、気づかされることがたくさんあります。
子どもの視線や言葉に心を寄せ、そんな毎日を楽しむことがおすすめです。
身近なシアワセをたくさん見つけ、感じられる心を大切にしていきたいです。

そして、『言葉を大事にするようになる』という変化もありました。

大人だけの生活のなか、気心の知れた人間関係のなかでは、相手が自分の思いを汲んでくれて、言葉足らず、配慮不足であっても、思いが伝わったり、やりとりが成り立ったりすることがあったと思います。
幼い我が子に伝えるための日本語は、オノマトペ(擬音語など)や、子どもに分かるようにかみ砕いて説明する言葉など、大人だけの生活の中では使わない言葉をたくさん使います。
可愛い我が子には、できる限り綺麗な日本語を使いたくて、表現の仕方にも気をつけてきました。

子どもが言葉を発するようになると、自分の姿を映しているようで、反省させられたり、
一緒に絵本を読むと、日本語の持つ意味や響きの美しさに、改めて気づかされたりすることも多々ありました。

子どもに伝わるように、分かりやすい言葉で話す。
子どもが分かるように、ゆっくり丁寧に話す。
子どもに知ってほしい、美しい日本語を選ぶ。

こんなことを意識しているうちに、子どものおかげで親になってからも、新しい言葉にたくさん出会うことができました。

子育てのなかの『ユーモア』

自分のために働き、自分のためにお金や時間を使うことができた生活から、ある日突然親になり、子ども中心になる生活に、心も体も追いつかないこともあると思います。

誰だって、子どもを持って初めて親になります。

初めての『子育て』がうまくいかなくて当然です。

保育士として、たくさんの子どもと関わってきたわたしも、そのうちの一人でした。

四苦八苦しながらも、知っていて得をしたことはたくさんあり、中でも、心掛けてきて『よかったな』と思えること、
小学生になり、日に日に口が立つようになってきた我が子と関わりの中でも、今後も『続けていきたい』と思えることがあります。

それは、『ユーモアをもって関わる』ということです。
『ユーモア』って、抽象的で、何だか難しく感じますが、私がしてきた方法は簡単です!
コツは、『何に対しても面白がってみる』『ちょっぴりふざける』ことです。
『なんで今、こんなことするんやろ・・・』とあきれてしまう、イライラしてしまう子どもの行動を、あえて面白がってみる。親が興味をもつのです。
すると、子どもの心の動きや、子どもの興味や好みの傾向が分かるようになり、子ども自身も、親に共感してもらった喜びから、その後起こるかもしれない、大人にとって不都合な行動(ぐずる、泣く、怒るなど)が結果的に減る、ということにもつながるかもしれません。
そして何より、イライラしていた気持ちが解けていき、発想の転換をすることで、親自身も気持ちを切り替えることができます。

また、イライラしてついつい子どもへの言葉がけがきつくなってしまいそうな時こそ、あえてふざけてみる。
例えば、『早くして!!』と言いたいときには、鬼教官のようになりきり、『きみに残された時間は少ない!急ぐのだ!』と言ってみる。
一方的に叱るより、子どもの手は早くなり、効果抜群です!
怒鳴らずにすみ、怒った後にやってくる自己嫌悪からも回避できます!

また、子どもの戦いごっこやおままごとのなかでも、全力でふざける。
大人ならではの巧みなジョークに、子どもは意外とハマってくれます。

イライラを抑えることは、とても難しいですが、親のイライラは子どもに伝わります。
でも、親が楽しそうでいると、子どもも前向きになります。

イライラを抑え、子どものすることを面白がり、ちょっぴりふざけて子どもに接していると・・・
いつの間にかイライラが消え、子どもも私自身もハッピーに!!
そんなことが今もたくさんあります。
親それぞれの得手不得手に合わせた、『ユーモア』を、子育ての中に取り入れられるといいな、と思います。

これらの経験から身についた『気持ちの切り替え方』『ユーモアを持つ』ことは、育休復帰後の仕事の中でも、わたしをたくさん助けてくれました。

これからも

今までの人生にない体験をすること、そして人の成長に触れることが子育ての大きな魅力です。

子どもは『小さくて弱い=守ってあげなければならない存在』であることには間違いないけれど、親の所有物ではないし、親が思い通りにできる存在でもありません。それを忘れてしまうと、いつの間にか自分の思い通りにならなくてイライラしてしまいます。

子育てとは・・・

人類の歴史の中で、人と人とが協力し合い、何とか成し遂げてきたものであり、
相手が赤ちゃんであっても、『ただのお世話』なのではなく、ひとつひとつの関わりがその後の健やかな成長につながっていくものであり、
いずれは社会で活躍する人材を育てる、とても大切で尊いものであり、
子どもだけでなく、親である自分自身も一緒に成長させてくれるものです。

私自身の子育ても、子どもが小学生になった今は、保育士としての知識にはない発達段階に入り、未知の領域に入りました。
しかし、身の回りのものごとへの興味関心が、学習意欲につながり、
早寝早起きの習慣が、基本的な生活習慣の自立につながり、
子どもの思いに共感し、やりとりをしながらたくさん遊ぶことが、子ども同士の友達関係にもつながっている、子ども達の姿を見て、
家庭内での子育てのパワーを実感する日々です。

いずれ迎える子育てのゴールまでの間、これからも何度も悩み、苦しむことがあると思います。

これからも周りの人にたくさん支えてもらいながら、我が家らしく、わたしらしく、子育てを楽しんでいきたいと思います。

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