親子で楽しめる英語絵本の読み聞かせ

2021年11月30日

知育

【はじめに】

はじめまして、kokoriと申します。現在2歳の子どもを育てています。もともと絵本が大好きだったことと、学生時代に絵本を使った英語教育法を学んだ経験から、自分の子どもにも英語絵本を読みきかせしています。この記事では、英語絵本の読み聞かせ初心者の方向けに、英語絵本の良さや、読み聞かせをする際の具体的なポイントなどを分かりやすくお伝えします。第3、4章では、ひとつの作品を例に、具体的なアイデアもご紹介します。英語に少し苦手意識のある方にこそ、この記事を読んでいただきたいと思っています。

早期英語教育は、専門家によっては否定的な意見があります。一方で、幼い子の音感の良さなどから、早くから英語にふれさせた方が身につきやすいとする意見もあります。どちらがよいと簡単には言えませんが、日本語が未熟な時期に、英語ばかりの英語漬けにしてしまうのは、リスクが伴うと考えます。そもそも私は、「我が子をバイリンガルにしたい」と思って英語絵本を読みきかせしているわけではありません。私個人の意見ですが、周囲が日本語を話す環境で、バイリンガルに育てることは難しいのではないかと思います。将来、学業や仕事など、どうしても自分にとって必要となれば、自ら本気で身につけるだろうと楽観的に考えています。そんな私が、我が子に、英語絵本の読み聞かせをしているのは、英語でのコミュニケーションを楽しめる人になって欲しいからです。英語は、世界への興味の入口になります。英語が嫌だからという理由で、広い世界との関わりを躊躇してしまうとしたら、とてももったいないと私は思います。発音の良さや流暢さなどは、それほど重要ではないと考えています。知りたいという「興味」があって、相手のことを理解したい、自分のことを伝えたい、という思いが根底にあれば、つたなくても間違いがあっても、コミュニケーションは成り立ちます。翻訳機もどんどん発達しており、もはや、私たち自身が英語を身につける必要もないのかもしれません。でも私はできれば我が子に、理解できない、伝わらないもどかしさも含め、コミュニケーションを楽しむことができる人になって欲しいのです。その素地を育むために、英語絵本の読み聞かせは有効だと考えています。
子どもは「楽しいこと」に敏感です。英語絵本は、純粋に楽しいです。現在2歳の子どもは、日本語英語どちらの絵本も大好きで、お気に入りの英語フレーズは、日常生活で自然に使うこともあります。小さな子向けの絵本では、楽しくて分かりやすい絵と短いフレーズが出てくるので、小さいなりに理解し、覚えて、自然に使うようになりやすいのだと思います。我が子が特別というわけではありません。決して勘のよい素直なタイプではないので、きっと多くのお子さんが、英語絵本を楽しみ、沢山のことを吸収できるはずです。

この記事をきっかけに、英語絵本の読み聞かせを始めて、その楽しさを実感していただけたら、嬉しいです。

1【英語絵本の読み聞かせのよいところ】

まず、英語絵本の読み聞かせのよいところを4つお伝えします。

① 親子で英語を楽しめる

親子の距離を感じながら一緒に楽しめる点は、英語絵本ならではだと思います。
また、子どもももちろんですが、お母さんお父さんにこそ楽しんでいただきたいです。子どもより大人の方が、新しいことや苦手なことに取り組むのは、ハードルが高いことです。英語にあまりふれる機会がなく、少し苦手意識があるような場合、英語絵本の読み聞かせが、よいきっかけになると思います。英会話教室に通うよりずっと手軽ですし、子どもと一緒に、子どもの反応を見ながら楽しくやる方が、無理なく続けられるのではないでしょうか。お母さんお父さんの楽しそうな姿は、きっと、子どもにとってもよい刺激になるはずです。

② 子どもの抵抗感が少ない

日本語の絵本は書店でも沢山見かけますが、英語絵本はあまり馴染みがないですよね。実は、日本語訳されて長く親しまれてきた作品も多く、色鮮やかな絵や登場人物の表情豊かな様子、繰り返しのフレーズなど、子どもの興味をくすぐるポイントも多いのです。「さあ!学ぼう!」と迫ると身構えてしまうところ、いつも身近にいる、お母さんお父さんの声で、楽しい絵本を読みながら英語にふれるのであれば、子どももリラックスできます。3、4歳くらいまでのお子さんですと、初めから抵抗感なく楽しみやすいと思うのですが、色々と物事が分かる年齢になると、「なんだかいつもと違う」と嫌悪感を抱く場合もあります。そういった時こそ、お母さんお父さんと一緒にというのが、安心感につながると思うのです。
また、我が子の性格や好みを一番知っているのは、お母さんお父さんなのではないでしょうか。近い存在だからこそ、お子さんの興味のありそうな絵本を選択し、様子を見ながら上手く工夫することができるのです。

③ 習い事の費用が抑えられる

親がさせる子どもの習い事の上位には、大抵の場合、英語教室がランクインしています。子どもの習い事にかける金額の平均は、未就学児(公立)で、年間約6万円だそうです(※ 平成30年度子どもの学習費調査/文部科学省のデータ参照)。周りの子育て中の家庭を思い浮かべると、もっとかかっている印象です。塾・家庭教師代は、習い事費とは別に約2万円とのことなので、子どもの教育費は小さいうちから結構かかるものですね。
もし、これから英語教室に通わせようと考えているのであれば、一旦様子を見て、英語絵本の読み聞かせを始めることをオススメしたいです。英語教室にかかる月謝が5千円以上だとすると、絵本の読み聞かせにかかる費用の方がずっと安いのではないでしょうか。英語絵本一冊の値段は、決して高くありません。「ボードブック」という、小さな子が破いたりできない、固い厚手の紙でできたタイプのものでも、千円程度で買える作品は沢山あります。Amazonなどで簡単に手に入ります。また、メルカリなどで出品されているケースも多いので、中古品ならばより安価で購入できますし、図書館によっては英語絵本の取り扱いのある所もあります。私は、この全ての方法を使って、手軽に読み聞かせをしています。
また、英語絵本は、ネイティヴスピーカーの声が収録されているCD付きのものも多くあります。発音に自信がないなどの理由から、そのような絵本を手にしたくなるかもしれません。ただ、そのようなタイプの絵本は、当然ながら割高です。そういった時は、まずYouTubeなどで動画を検索してみてください。沢山の人が、英語絵本の読み聞かせ動画をアップしてくれています。その動画を見るだけでも、十分に発音の確認ができると思いますし、読み聞かせのアイデアも得られると思います。

④ ひとつの作品を長く楽しむことができる

英語絵本は、小さな子向けの作品でも、年齢が上がってからも楽しむことができます。まずは、音や絵、リズムを感覚で楽しむことから始め、年齢が上がるにつれ、フレーズが自然と口から出て、内容も深く理解できるようになっていきます。また、何度も読んでいるうちに、英語のワード、文法にも自然に興味が向きやすいです。
日本語の絵本であれば、小さな子向けの内容は、年齢が1、2歳上がるだけで、つまらなく感じてしまう場合もあります。でも、英語絵本であれば、外国語で書かれているという特性から、年齢が上がっても好奇心をくすぐることができます。日本語の能力が上がり、理解力が上がるからこそ、幼い頃から読み聞かせしてもらってきた作品の魅力を、深く認識できるのではないかと思うのです。

2【読み聞かせのコツ】

次に、実際に読み聞かせをする際のコツを、具体的にお伝えします。日本語の絵本の読み聞かせに共通する部分もあります。

① 発音は完璧でなくて大丈夫

日常的に英語を使っている方であれば、英語絵本の読み聞かせに抵抗はないと思いますが、多くのお母さんお父さんはそうではないですよね。YouTubeなどの動画で、読み方など数回確認してから始めると、やりやすいとは思いますが、完璧さは求めなくて大丈夫です。英語が母国語の人というのは、実はそれほど多くありません。世界の多くの人が、第二外国語として英語を使っているのです。それぞれの国の癖が入るのは当たり前で、それをあまり気にせず積極的にコミュニケーションを取っています。日本人の性格なのか、完璧さを求めすぎてしまうケースも多いので、気にしすぎないで大丈夫です。
ただ、次の2点は、少しだけ意識してみてください。発音が日本独特のものになっていないかを確認し、文の抑揚に気を付けて読む、という点です。日本で馴染みのある英単語でも、日本独特の発音で定着していて、元々の発音とは異なるものもあります。分かりやすい例だと、「apple」は、日本では「アップル」と言いがちですが、海外では「アポー」と発音しますよね。他にも独特の発音で定着しているものは沢山あります。自分の認識と相違がないか、一度確認してみるとよいと思います。また、抑揚がはっきりしているのが英語の特徴であり、日本語を読む時とは異なるので、その点にも意識を向けていただきたいです。これらのことを意識すると、相手に伝わりやすい英語になります。言葉でご説明すると、なんだか面倒に感じるかもしれませんが、それほど苦にはならないと思います。絵本に出てくる文は、短く、言いやすいものが多いからです。動画などで確認してマネをしてみれば、すぐに上手くなります。完璧にではなく、意識をしながら読むということが大切です。

② 導入でひきつけよう

前章でも少しふれましたが、物事が分かってくる年齢になると、抵抗感が出てくる子もいます。英語を嫌がることもありますし、そもそも絵本を一緒に読みたがらない、というお子さんもいらっしゃるかもしれません。そういう時には、導入が大切になってきます。いきなり本を読み進めるのではなく、パラパラとページをめくって、お子さんが興味を持つ絵を探すところから始めてみるのもよいです。また、絵を見せながら、中に出てくるワードやフレーズを言ってみて、まず音やリズムの面白さを感じてもらうのも、ひとつの方法です。効果音(例えば、動物であれば鳴き声、乗り物であれば動く時の音など)を自分なりにつけてみるのも興味をひきやすいと思います。子どもは面白いと感じるとマネをすることも多いので、気に入った箇所を何度も一緒に声に出し、少しリラックスしてから、本全体を読む方向にもっていってもよいでしょう。
これらの導入は、英語絵本に限ったことではなく、日本語の絵本でも同じです。導入で子どもの心をひきつけられるかどうかは、絵本を読み進めていく上で大切です。

③ オーバーリアクションを意識しよう

子どもに楽しいと感じてもらうのに大切なことは、大人がオーバーリアクションをすることです。子ども向けの教育番組や、保育園幼稚園の先生を見ていても感じると思いますが、子どもの前でとても楽しそうに大きな反応をしています。子どもにとってそれが分かりやすいからです。「日常生活ではなんとなく気恥ずかしい」というお母さんお父さんも、英語絵本の力を借りるとやりやすいです。英語は元々、日本語よりも抑揚がはっきりしているので、読むだけでもリズミカルに感じます。個人的な意見ですが、母国語ではないというだけで、別人格になりやすいように感じます。明るい色調の絵が多いことや、絵から読み取れる外国の文化がなんとなく陽気にしてくれる、という面もあると思います。日本語で読む時以上に、オーバーリアクションがしっくりくるのです。是非、いつもとはちょっと違った自分を、ご自身で楽しむつもりで、読んでいただきたいです。

④ 子どもの反応を見ながら

絵本を読む時に最も大切だと考えるのが、この「子どもの反応を見ながら」です。導入についての内容と重複になりますが、順番通りに読まなくても大丈夫です。「書かれていることを最初からその通りに読まなくてはいけない」と思い込んでいる方がいらっしゃいます。作品の世界観を大切にしているからこそと思いますが、もっと自由でよいのでは、とも思うのです。興味のある箇所から入り、改めて、本全体を読む流れになれば理想的ですが、そうならなくても大丈夫です。本全体を読むことにたどり着かなければ、お気に入りの所だけを読んで、一旦その本はお休みさせ、別の本に移ればよいです。これは、日本語英語関係なくいえることだと思っています。特に英語絵本は、内容が簡単な本でも、大きくなってからも楽しめることが多いので、しばらく眠らせておいてもよいと思います。その際、子どもが手の届く、本棚やオモチャ箱などに、入れておいていただきたいです。忘れた頃に一人でペラペラとめくっていたり、持ち出してきて読んでほしいとせがんだりすることがあります。絵本を大切にしたいという理由で、隠してしまっておくという方もいらっしゃいます。気持ちは痛いほど分かるのですが、できれば幼いうちから自由に絵本に触れるようにしておくと、絵本への興味が育ちやすいと思います。ボードブックで丈夫なものを揃えたり、うっかり破かれても気にならない安価なものにしたり、どうしても大切にしたいものだけ手の届かないところに置いたり、各ご家庭で合う方法を探してみてください。
また、「子どもの反応を見ながら読み方を変える」というのも大切です。読んでいるページの絵を指差したり、音をつけたり、動きをつけたり、どのよう読んだら、どのような補助を加えたら、子どもの興味が途切れないのかを見ながら、読んであげてほしいです。例えば、絵本に出てくる動作を、実際に子どもにもしてあげると、楽しみやすいです。我が子の場合、tickle(発音:ティコォ)「くすぐる」というワードが出てくる場面で、毎回実際にくすぐってあげていたのが楽しかったようで、今では、日常生活の中で、自分からジェスチャーを交えて使っています。
日本語の絵本の読み聞かせ法としては、「淡々と読むこと」もよいとされています。台詞口調で読むことや過剰な演出は、絵本自体への興味や内容理解を邪魔してしまうとの考えがあるからです。それももちろんその通りだと思うのですが、子どもの興味や集中が途切れてしまうのであれば、意味がないと思うのです。子どもの様子や成長に合わせて、「分かりやすく興味がわくように」読むのか、「子ども自身の感性や想像力に任せて」読むのか、使い分けることが重要だと考えています。特にご家庭での読み聞かせであれば、子どもの様子を見ながら読みやすいですよね。
英語絵本は、母国語ではない言葉で書かれているため、日本語の絵本以上に、補助が必要だと思います。言葉だけでは、何を言っているのか分からなくても、絵から得られる情報に、音や実際の動きなどの情報が合わさって、どのようなことを意味しているのか理解しやすくなるからです。また、コミュニケーション力を育てるという観点から、実際に子ども自身の口から、ワードやフレーズなどが自然に出て、適切な場面で使えることを目指したいので、子どもが自ら使ってみたいと思えるように、分かりやすい読み聞かせを意識した方がよいと考えます。子ども自身が成長し、内容を自分の力で理解できるまでになれば、日本語の絵本同様に、補助を控えるようにしてもよいと思います。

3【実際に英語絵本を読んでみよう】

ここまで、英語絵本のよいところや、読み聞かせのポイントについてお伝えしてきました。第3章では、ひとつの作品を例に、読み聞かせのアイデアなどをお伝えしたいと思います。

ここでご紹介するのは、「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See? 」という絵本です。「くまさんくまさんなにみてるの?」という題名で、日本語訳もされています。有名な作品なので、既に読んだことがある方もいらっしゃるかもしれません。カラフルな動物たちの、なんともいえない表情が愛らしく、目で見るだけでも楽しい作品です。
この絵本は、「はらぺこあおむし」などで有名な、エリック・カールが初めて描いた絵本です。この絵本がきっかけで絵本作家になり、その後数多くの作品を生み出しました。元々は、広告デザイナーをしていたエリックにイラストの依頼をしたのが、ビル・マーティン・ジュニアで、この絵本の文章を書いた人です。彼は幼児教育の研究者で、幼児に分かりやすく読み方を教えることを進めてきた第一人者でもあります。色彩豊かな絵に注目がいきがちですが、出てくる文章も、短く分かりやすいうえに、押さえておきたい文法のポイントが入っており、楽しく身につけられるようにとても計算されています。
まず、この絵本全体の内容についてお伝えします。絵本に出てくる文法のポイントが2つあるので、そちらもあわせて覚えていただけると嬉しいです。

この絵本に出てくる文章は、ほとんどが、下記の2パターンの繰り返しです。リズムにのって自然に口から出てきやすい、シンプルで短い文章です。

  1.  ○○, ○○, What do you see?「○○、○○、なにがみえる?」
    2.  I see (a) ●● looking at me.「わたしをみている●●がみえるよ」

○○と●●の部分には「動物」や「人」が入ります。動物たちは色とセットになっていて、brown bear「茶色の熊」、 red bird「赤い鳥」、 yellow duck「黄色のアヒル」、blue horse 「青い馬」、green frog「緑のカエル」、purple cat「紫の猫」、white dog「白い犬」、black sheep「黒い羊」、goldfish 「金魚(※色は金色)」の順に出てきます。動物たちの後は、teacher「先生」、最後はchildren 「子どもたち」です。最後の子どもたちが見るものが、今まで出てきた全ての動物たちや先生、という流れです。最後の見開きページに、今まで出てきた動物たちと先生が描かれていて、That’s what we see.「これが私たち(子どもたち)のみえるものだよ」という文で終わりです。
※出版のバージョンによって「先生」の部分は、変わります。
日本語訳版を読んだことのある方はお気づきかと思いますが、日本語版は内容のニュアンスが少し違っています。「○○、○○、なにみてるの?」に対して、「●●をみているの」の繰り返しが続く、原書よりもよりシンプルな内容になっています。実は原書では、see「(自然と視界に入って)見る」ことと、look「(注意を向けて)見る」ことの違いを体感し、自然に身につくように意識されているのですが、日本語訳ではその部分はカットされています。この部分が1つ目のポイントです。seeとlookの違いは、日本人にはあまりピンとこないですよね。

2つ目のポイントは、「動物たちの名前(名詞)」についてです。実は、「固有名詞」と「普通名詞」が意識的に使い分けられています。具体的には、上記でご説明した絵本に出てくる2パターンの文のうち、1の文中の動物は、大文字で始まり「a」を付けませんが、2の文中の動物には「a」を付けて小文字で始めます。同じ動物でも、使い方を分けているのです。

例えば、
(2の文):I see a red bird looking at me. 
(1の文):Red Bird, Red Bird, what do you see?
小文字で書かれているのが「普通名詞」で、大文字で書かれているのが「固有名詞」です。
日本語では、「赤い鳥」(普通名詞)と「赤い鳥さん」(固有名詞)という風に、違いを表します。普通名詞は呼び捨てにし、固有名詞は呼び名なので「さん」をつけるわけです。

英語の冠詞の使い方は定着しにくい部分です。絵本を通して何回も読んでいるうちに、その使い方が自然に身につくように考えられています。

この2つのポイントを知るだけでも、この絵本の内容の奥深さを感じていただけると思います。成長してきた子どもに、より英語の使い方を意識させたい場合には、このような文法面にも意識を向けさせるとよいと思います。

次に、5つの読み聞かせのアイデアをお伝えしたいと思います。

① 子どもに考えさせる

この絵本では、順番に動物たちや人が登場しますが、新しいワードが出る度に日本語訳しないように意識していただきたいです。例えば、brown bearが出てきた場面で、「茶色い熊のことだよ」と教える必要はないということです。これはこの絵本に限ったことではなく、英語絵本の読み聞かせをする際は、その都度日本語訳する必要はありません。英語は英語のまま伝えてあげて欲しいのです。子どもは成長するにつれ、自分で考え、自身の持つ日本語の知識と結びつけるようになります。子ども自身から質問があった場合には、答えてあげてください。

② 効果音をつける

見開き1ページに動物たちの絵が大きく描かれているので、各ページで鳴き声などの効果音をつけてみると面白いです。日本語と英語では、擬音の表現が違います。馴染みのある表現を使っても、英語表現でも、組み合わせてみてもよいと思います。私も、その時々で変えています。

擬音語の例:
※表現は多数あるので、一例としてご紹介します。英語の発音は、音に近いものをカタカナで表しています。
・bear→ウヴゥ、ガオー/roar(発音:ロゥアー)
・bird→チュン/tweet(発音:トゥイート)
・duck→ガー/quack (発音:クゥアク)
・horse→ヒヒーン/neigh (発音:ネェイ)
・frog→ケロ/ribbit (発音:リビッ)
・cat→ニャー/meow (発音:ミィアゥ)
・dog→ワンワン/bow-wow (発音:バウワウ)
・sheep→メー/baa (発音:バー)
・goldfish→ブクブク※水の泡の音の表現/glub(発音:グラッブ)

③ 読み方を変える

I see (a) ●● looking at me. 「わたしをみている●●がみえるよ」の部分は、動物たちや人が、what do you see?「なにがみえる?」の質問に対してそれぞれ答える場面なので、声の高さや読むスピードを変えてみるのもよいです。子どもが興味を持ち、集中が続きやすくなります。読み聞かせをする人の主観が入ることになりますが、面白さがある方が小さな子はひきつけられるので、試してみる価値はあります。

④ 指差しをする

動物たちが一覧になっている最後の見開きページでは、ひとつひとつ指をさしながら、どのことを言っているのか分かりやすくしてあげるとよいです。まとめのようなページなので、ゆっくりと確認してあげると、子どもの理解も深まります。その他、何か注目して欲しい部分がある場合などにも、指差しを取り入れながら読んであげるとよいです。

⑤ 内容について質問する

読み聞かせに慣れてきたら、内容について質問してみてください。例えば、本を読み終わった後、適当なページを開いて、What’s this?「これは何かな?」と聞いてみてもいいですし、最後の見開きページを使って、Which animal do you like?「どの動物が好きかな?」などと聞いてみてもいいと思います(※正確には動物以外も描かれていますが)。質問をする際、英語表現を使えそうであれば、是非使っていただきたいです。子どもが、質問の意図を理解するのは難しいように感じるかもしれませんが、指差しなどを交えると、日本語の補助なしで理解できることも多いです。英語表現を使って質問するのが難しいようなら、もちろん日本語でも大丈夫です。子どもに答えさせる時には、絵本に出てくる英語を使って答えるように導いてあげてください。まだ自分で答えることができない小さな子にも、語りかけるように聞いてあげると、絵本を一緒に楽しんでいるという感覚が深まります。

4【物語の理解を深め、興味を広げよう】

第3章でご紹介した「Brown Bear, Brown Bear, What Do You See? 」を例に、絵本をベースにしたアクティビティを3つご紹介します。少し発展的で学びにつなげていく内容です。お子さんの好みにあいそうであれば、無理のない範囲で試してみてください。絵本に出てきた内容を深く理解し、興味を広げるのによいと思います。内容から派生させて、ご自身でアクティビティを考えてみるのもよいです。

アクティビティをするときの指示などは、英語を使えそうであれば使っていただけると、よりよいと思います。前章でもお伝えしましたが、指差しなどのジェスチャーを交えると、英語のままでも、想像して理解できる場合が多いです。お母さんお父さん自身がモデルとして、実際にやって見せてあげることで、理解しやすくもなります。英語で指示を出す場合は、日本語で細かく訳すことはせず、できるだけ子どもに考えさせるように意識してみてください。短く簡単な指示や質問、褒め方などの定型文をいくつか用意しておくと、別の絵本でも使えます。一部を下記にまとめておきますので、チェックしてみてください。

簡単な定型文
指示・提案
●動詞の原形で始める文(「○○して」という指示を表す)
例:Touch (your) ○○「(あなたの)○○を触って」、Think about ○○「○○について考えて」
●Let’s ○○.「○○しよう」
●Can you ○○?「○○してくれる?」
●Please ○○. 「○○してね」
質問
●Is this ○○?「これは○○かな?」
●Where is ○○?「○○はどこかな?」
●What is ○○?「○○は何かな?」
褒める・肯定する
●Good job(try).
●Excellent. など
「いいね、頑張ったね」
●That’s right.「そうだね」
答えたことを褒めてあげた後に、改めて正しい答え方を伝えたり、but…「でも…」で続けて別のやり方を提案したりすることもできます。

指示などはできるだけ短く簡単なもので、ご自身が使いやすいものがよいです。

では、アクティビティをご紹介します。③は難易度があがるので、5、6歳以降のお子さんが楽しめると思います。①や②は、質問の仕方などで難しさを調整できるので、年齢が小さいうちから試してみてください。

① 色

絵本には9色の色が出てきます。成長に伴い、色の認識がしっかりできるようになってきたら、英語での色の表現にも目を向けさせるとよいです。絵本を何度も読んでいると、出てくる色について、自然と名前が結びついているはずです。第3章のアイデア⑤でお伝えしたように、口頭での絵本の内容に関する質問、例えば色に関してなら、What color is this?「これは何色かな?」のような問いかけだけでも理解は深まると思いますが、より楽しくアプローチするなら、折り紙を使ってみてください。絵本に出てくるものと同じ色の折り紙を用意し、色のワード(例えばbrownなど)を言って、子どもに色を選ばせます。カルタのような遊びです。折り紙でなくても、クレヨンや家にある別の物を使ってもできます。Can you choose a brown origami (paper)? 「茶色の折り紙を選んでくれるかな?」など、質問の仕方や指示を変えるだけで、同じ色についての内容でも、別の英語表現にふれさせたり難易度をあげたりできます。絵本に出てこない色を追加してもよいです。
また、子どもの答え方も、初めはワードだけでもよいですが、徐々に慣れてきたら、文で答えるように導いてあげてください。例えば、brown「茶色」と答えたら、Yes, it’s brown.「そうだね、(それは)茶色だね」というように、文に直して伝えてあげます。それを繰り返していると、違いに気づき、マネをして言えるようになります。子どもの答えには必ず好意的な反応を示し、自分で伝えることを楽しいと思えるようにすることが大切です。この、子どもの伝えようとする姿勢を尊重しつつ、自然と正しい答え方に導くやり方は、全てのアクティビティにおいて共通しています。

② 体の部位

動物たちの体に注目して、遊びを交えて覚えます。人とも共通する主な部位としては、
・head(発音:ヘッド)「頭」
・eye (アイ)「目」
・ear(イァー)「耳」
・nose (ノゥズ)「鼻」
・mouth (マウス)「口」
・neck(ネック)「首」
・shoulder(ショウルダー)「肩」
・arm(アーム)「腕」
・hand (ハンド)「手」
・finger(フィンガァ)「指」
・back(バック)「背中」
・stomach(スタマク)「お腹」
・buttock(バトック)「お尻」
・leg(レッグ)「脚(太ももから足首まで)」
・foot (フット)「足(足首から下)」※feet(フィート)で「両足」
・toe(トゥ)「足の指、つま先」
などがあります。
※表現はいくつかあるものもあります。

その他、動物たち特有のものとして、
・tail(テイル)「しっぽ」
・bill(ビル)「鳥のくちばし」
・mane(メイン)「たてがみ」
・whisker(ウィスカー)「(猫などの)ひげ」
・feather(フェザー)「鳥の羽」
・scale(スケイル)「魚のうろこ」
などもあります。

動物たちの絵の該当部位を指差したり、子どもの体の同じ部分をさわったりしながら、どこの部分の名前なのかを覚えていきます。「Head, Shoulders, Knees & Toes」という英語の遊び歌はご存じでしょうか。なんとなく耳にしたことがあるかもしれません。YouTubeなどでも簡単に探せるので、こういった曲をアレンジして、音楽やリズムに乗って覚えるのもよいと思います。
一通り部位についてふれたら、絵本のページを見ながら、Touch horse’s head.「馬の頭を触って」やWhere is horse’s head?「馬の頭はどこかな?」など、指示や質問をしてみます。絵本に出てくる動物ではなく、your「あなたの」やお子さんの名前に変えて、子ども自身の体を使って答えさせるのもよいです。その際は、お母さんお父さんも、自分の体を触るジェスチャーをしながら、指示や質問をしてあげると、それがヒントになります。わざと動物にしかない部位、例えば、tail「しっぽ」などを言ってみるのも面白いです。

③ seeとlook

前章で、この絵本に出てくる文法のポイントとして、seeとlookの違いがあるとお伝えしました。日常の中で、この使い分けを意識させるようにします。seeの感覚を身につけさせるのによいのは、家の中や出掛けた先で、What do you see? 「何が見える?」または、What ●● do you see?「何の●●が見えるかな?」と聞いてみることです。●●にワードを入れると、見えるものの範囲を限定できます。例えば、スーパーマーケットであればvegetables「野菜」やfruits「果物」などが使いやすいです。動物園に実際に行って、絵本と同じように聞いてみてもよいです。What else (do you see)? 「他には(何が見える)?」という聞き方は、次々と答えてもらいたい場合に便利です。
lookに関しては、意識的に視線を向ける動作に使われるので、子どもに答えさせるようなアクティビティをするというより、お母さんお父さんが、Look!「見て!」と言って注意を向けさせたり、Let’s look at ●●「●●を見てみよう」と促すように使ったりするのがよいと思います。lookを使って意識的に注意を向けさせ、seeを使った質問をして答えてもらうということを繰り返すうちに、使い分けの感覚が身についてくるはずです。
※似たような意味にwatchがあります。これは、主に動いているものに対してじっと見ること(watch TVなど)に使われます。変化がないかどうか確認するというような意味も含みます。lookは主に静止物に対して意識的に見ること、また、「目線を向ける」という動作自体に主体が置かれています。watchまで含めると難しくなってきますね。子どもが成長して日本語の理解力がついてきた時、これらのワードの使い分けに興味を持ったら、説明してあげてもよいと思います。

【おわりに】
英語絵本の魅力や読み方についてお伝えしてきました。この記事が、英語絵本を手に取っていただけるきっかけになれば嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。

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