2022年3月8日
発達障害
我が家には現在、小学校一年生で7歳の長男、年中で5歳の長女、3歳の次女の3人の子どもたちがいます。
今回は幼稚園の先生のすすめで五歳児検診を受けることになった真ん中の長女の話です。
定期検診は乳児期や低年齢の幼児期には多くあるものの、後期の幼児期になると少しずつ回数が減る自治体が多いかと思います。
実際、私の住む自治体では三歳児検診が終わると、その次は五歳児検診となります。
しかし、私は幼稚園の入園や子どもの個性が強くなり始め、心配になる事が増えるこの時期こそ、面談や相談できる場所が必要なのでは?と感じていました。
とはいえ、親からすると五歳児検診で保健師さんとの個人面談をすることは少しハードルが高く感じられるかもしれません。
五歳児検診は子どもの発達の特性を理解し、親の育児不安の軽減が目的であるとしています。
しかし、少し悪い言い方をすると親側としては
「手のかかる子や小学校の就学に向けて日常生活を送ることに不安要素が見られる子を就学時前に振り分けておく」ような役割があるように感じます。
なぜならば、個人面談の必要がないと判断される子がいることは事実だからです。
私も子どもの性格に良い、悪いはないと頭ではわかっていて、そう思っています。
それでも、個人面談の必要がないと判断された時点でこの子は〇、個人面談が必要ですと判断された子は△あるいは×と言われた気がする親は少なくないと思います。
ましてや幼稚園や保育園の先生から個人面談が必要だと言われると、親としては「あれ?もしかしてうちの子ってグレーゾーン?」や「うちの子、大丈夫なの?」と思い悩み、心配になる方も多いでしょう。
私自身もまさにその一人でした。
長女は以下のような性格や様子です。
・三人兄妹の真ん中でとてもマイペース
・自分の意見や考えを表に出すのが苦手
・我慢強い(痛みにも精神的にも)
・自己犠牲の念が強い
・泣いている子がいると心配してあげる
・自分がしたことのない事や不得意なことへの挑戦が苦手
・競争や戦い、比較されることがあまり好きではない
また、五歳児検診の面談を促されたとき、長女は以下のような状態でした。
・5歳0か月時点でひらがなの読み書きができない
・登り棒などの運動が苦手で、挑戦する意欲もあまり見られない
・家では三人の兄妹の中で一番行動が遅く、支度や食事などあらゆる行動がゆっくり
・かなりかみ砕いて、ゆっくりと内容を伝えないと理解ができない
・自発的に活動するのが苦手
・幼稚園で先生がみんなに向けて話をしているときにうわの空であったり、説明を理解していないことが多い
・幼稚園でトイレに行く時間でも、一度先生に確認してからでないと行けない
・泣いている子がいると心配してあげたり、自分の持っているおもちゃをお友達が欲しがるとすぐに渡してあげる
私の住む自治体での五歳児検診の進め方は、事前に幼稚園や保育園を通してマークシート式の問診票が渡され、園に回答を提出すると同時に保健師さんとの個人面談を希望するかどうかを確認されます。
個人面談を行う場合は、親子で保健センターに直接行くか幼稚園や保育園に保健士さんが来て、親子と先生を交えて行うことが多いようです。
事前の問診票は5歳になる年の9月頃に幼稚園を通して配られました。
マークシート式の問診票で枚数は1枚ですが、裏表びっしりと設問が書かれており、すべての質問に回答するには30分以上かかりました。
また、設問のシチュエーションに置かれた状況を見たことが無かったり、設問自体の意図を理解するのも難しかったように思いました。
このような回答しづらい設問が多かった事も時間のかかった一因だと思います。
しかし、そのような回答に少し無理のある設問から考えて、よほど目に余るという行動がない限りは問題はないものだと思い、私はあまり深く考え込まずに回答するようにしました。
当時の長女は、マイペースではあるものの、わかりやすい言葉できちんと話せば意思の疎通もできました。
また、家庭では下の子だけでなく兄を心配したり、気にかける様子もことも度々あり、状況判断等にも問題はないと思っていました。
このような状態から、親としては「長女の性格や成長、行動はゆっくりだけど、状況判断能力や発達には問題なく、保健師さんとの面談は必要はないだろう」と判断しました。
そして、その結論を園側に伝えたところ、逆に幼稚園からは面談を受けるよう勧められました。
正直に言って聞いた瞬間はとてもショックでした。
面談を勧められた理由として、幼稚園内での消極的な態度やクラス全体への指示だけでは活動ができずお友達のマネばかりしてしまう事、長女本人に直接指示をしないと行動に移れない事が多い点や製作が苦手でなかなかこなせない事などを告げられました。
また、仮に現段階で発達や判断能力に問題がなかったとしても、長女のゆっくりした性格等について一度保健師さんに相談してみる価値があると言われました。
それは、相談した履歴が小学校の先生にも伝わるようで、小学校に就学した際に先生に目を掛けてもらいやすくなるためです。
小学校では幼稚園ほど子ども一人一人のペースに合わせてくれることはなくなるでしょうし、小学校に入学する頃には子どもごとに可能な活動のレベルは大きく異なります。
確かに、小学校の先生に長女の性格を事前に知っておいてもらえる可能性が高くなることはとても価値があると私自身も考え、保健師さんとの個人面談を受けることを決めました。
保健師さんとの面談は後日、直接電話で日程調整の連絡が来ることになりました。
その後、幼稚園の先生からお互いに長女の様子を伝える機会を設けたいという事で面談の申し出があり、保健師さんとの個人面談を受ける前に、幼稚園の先生と面談することになりました。
10月中旬、担任の先生と副担任の先生、その他全体を取りまとめている教頭先生と母親での四者面談を行いました。
結果としては家庭内と幼稚園内で活動や行動における誤差はそれほどありませんでした。
実は、この四者面談を行った10月中旬頃は、長女の行動や活動もだいぶ早くなっていて、幼稚園でも状況や指示に対して以前よりもスムーズに行動できるようになっていたようです。
ただ、9月頃はクラス全体への指示を出すときに違う方を見ていたり、全然話が通じていなかったりという様子が多かった事を説明されました。
製作の手順も2つくらいまでしかわからず、止まってしまう事もたびたびあるようでした。
これは私の想像ですが、保健師さんとの面談を勧められた9月頃には体力測定があり、長女が苦手な登り棒や縄跳び、ボール投げなどが毎日のように行われ、日々これらについて競争していました。
苦手な分野に対して積極的に取り組むことをあまりしない上に、競争自体があまり好きでない長女にとって、この時期は幼稚園での活動が全体的に楽しいものではなく、製作や活動に対してもあまりやる気が起きなかったのかもしれません。
そのため、このような長女の様子が担任の先生はより心配だったのかもしれません。
友人関係については入園後早い段階から非常によく、自分が持っているおもちゃをお友達が欲しがっていたから、という理由だけでお友達に渡してあげられるやさしさや、誰かがいつ泣いていたという話を先生に伝える様子もよく見られるとの事でした。
これについては、私も「家庭ではもっとわがままになって自分が使いたいときは自分が使いたいとアピールしてもよいよ」、「長女の思っていることを伝えるのは悪い事じゃないんだよ」と伝えていることを先生方に話しました。
我の強い長男と末の次女は自分の欲しいものやしたいことがある場合には、大声で、時には泣き叫んで主張をします。
しかし、その反動からか長女だけはそのような行動はあまりとらず、欲しい時も我慢をしたり、とられた時もぐっとこらえてしくしく泣いているという様子をよく見る事が多かったためです。
このような長女の様子を見ていて、長女は自己顕示欲や自己肯定感が低いのかなと私は感じていて、そのことを先生方にも伝えました。
この頃には担任の先生も長女の発達に関する心配はあまりしていないようでした。
結果、長女の性格との向き合い方や今後の成長をどのようにサポートしていくかの相談も含めて、保健師さんと話をしてきていただきたいです、というスタンスで四者面談は締めくくられました。
10月中旬に担任の先生方と母親での四者面談を行う当日、偶然でしたが保健センターから個人面談の日程を確認する電話がありました。
併せて、今回面談を希望した理由についても確認されました。
「幼稚園での行動がちょっと心配なので担任の先生に受診を勧められたのですが」と前置きをしたうえで、以下のように回答しました。
「長女の発達については両親としてはあまり悩んではいないんです。
今までは家でも片付けができないことも多く、言われたこともあまりできないので心配をしたこともありました。
でも、最近、私たち両親はそれも彼女の個性なんだととらえるようになりました。
確かに行動はゆっくりで遅く、理解も追い付かないことが多いです。
なので、このあたりについては保健師さんにご相談したいと思っています。
でも、長女は兄妹の中で一番やさしく、我慢強く、周りのこともよく見ています。
妹や兄、お友達が泣いているときはすぐに近くに行き、声かけや頭をなでてあげられるやさしさがあります。
自分が欲しいもの、大事にしているものでも他の人が欲しがったという理由で渡してあげてしまいます。
ある意味、自己犠牲に美学を感じている部分があるようにも感じます。
確かにできないことは多いし、苦手なことはやりたくない!という性格なので、先生も心配なのかなとは思います。
でも、成長してきたらできるようになると思うし、もしできないままだったとしても、それも個性だと思うようにしていこうと考えています。
ただ、彼女の活動や成長がゆっくりなのは間違いないので、小学校の就学前に学校の先生にこの相談が少しでも伝わればよいと思い個人面談を希望しました。
また、このような長女と今後どのように関わりを持って行くかについても相談したいと思っています。」
とりとめのない話しでしたが、保育士さんは相槌を交えながら真剣に聞いてくれました。
そして、電話の最後に、保健師さんと1月中旬に保健センターで個人面談を行う事を決めました。
幼稚園の先生方と四者面談を行い、長女の園と家庭での様子を確認したことは第一章でお伝えした通りです。
個人面談は平日に行うため、当日の朝に次女を幼稚園に送り届け、長女と二人で保健センターに向かいました。
長女には「幼稚園じゃないけど、幼稚園の先生みたいな人がいるところに行くよ。A(長女)といろいろお話したり、問題みたいなことを聞いてくると思うから答えてあげて。」と伝えておきました。
長女は新しいところが少し苦手で、人見知りのような態度をとることがあります。
しかし、私には嫌なのではなく、少し気恥ずかしい事への照れ隠しのように見えていました。
そのため今回も移動中は少し照れながら笑顔で、「行くのが楽しみ」と言っていました。
到着すると保健師さんの一人が対応をしてくれ、広い一室に案内されました。
そこには案内をしてくれた方を含めて3人の保健士さんがおり、みなさんにこやかに笑顔で挨拶をしてくれました。
長女はやはり照れ臭くなり、私の後ろに隠れて「ママ、早く入って!」など威張るような口調で話しをしていました。
しかし、やさしそうな保健士さんにほっとしたのか笑顔でした。
一人の保健士さんが小さなテーブルの前に座っており、テーブルをはさんで二枚の座布団を示して「こちらにどうぞ」と告げました。
残り二人の保育士さんは少し離れたところからこちらを見守る、という様子でした。
まずは挨拶をし、保健師さんが丁寧に名札を魅せながら自己紹介をしていただきました。
長女は保育士さんから名前を聞かれると、まだ照れくさく、もじもじしながら答えていました。
雑談のような、幼稚園の様子を聞くような雰囲気でやさしく保健師さんが質問をしました。
「制服、かわいいねぇ。どこの幼稚園に通っているの?」、「Aちゃんは何組なの?」、「年中さんは他に何組があるの?」と終始やさしく質問をしてくれました。
長女は幼稚園や組については答えられましたが、他の組については忘れてしまったのか「ママが言って!」など威張っていました。
私がヒントを出すと長女は回答できました。
少し、長女がその場に慣れてきたのを確認できたのか、保健師さんが問診を始めました。
まず、一人の子が積み木を独り占めしていて、残りの子どもは困った顔をしているイラストを長女に見せました。
「この子達、みんな楽しそう?」と保健師さんが聞き、イラストをじっと見ながら少し考えて「たのしくなさそう」と長女が答えます。
「そうだねぇ。なんでだと思う?」と保健師さん、「だってこの子がひとりじめしちゃっているから」と長女。
「そうだよねぇ。一人でみんな使っちゃってて、他の子が遊べてないよね。よくわかったね。大正解です。」と保健師さんの答えに、長女もうれしそうにしていました。
二枚目は、先生が紙芝居を読んでくれて、それを見ている子どもたちのイラストでした。
こちらでも、一人の子が先頭で立っていて、後ろの子どもが見えず困った顔をしています。
「これ、何してるかわかる?」と保健師さん。
具体的でない質問内容に回答に詰まり、イラストをじっと見つめる長女。
すると保健師さんは質問を変え、「先生、何してくれてるかな?」と具体的に聞いてくれます。
しばらく考え、「ご本読んでる。」と長女が答えると「そうだね、ご本みたいなの読んでくれてるね。あんまり聞かないかもしれないけど、かみしばいって言うんだよ。」と保健師さんは教えてくれます。
まず、否定をせず、相手の答えを肯定してから教えてあげる。
とても基本的なことですが、すごく自然にしてくれていて勉強になるな、と感じました。
「みんな楽しいかな?」と保健師さん、「…つまんない」と長女。
「そうだねぇ。つまらなそうな顔してるよね。なんでかな?」
「前の男の子が立っててみんな見えないから」。
「そうだよねぇ。この子だけが立ってて、他の子は見えないもんね。つまんなそうだよね。よくわかったねぇ。こっちも大正解。Aちゃん、すごい!」と保健師さんがほめてくれました。
私に隠れながらもきちんと答えることができ、長女も満足そうでした。
「それじゃあ、Aちゃんは他の先生と遊んでてもらおうかな。」と保健師さんが伝えると、後ろにいた保健士さんの一人がたくさんのおままごとの道具を準備して「こっちで遊ぼう」と声をかけてくれました。
長女はほめられてうれしかったことも相まってか、私を連れて行こうとすることなく、すぐにそちらに向かいました。
「それでは」と改めて長女に質問をしていた保健師さんと私との面談が始まりました。
保健師さんからは「まず、先程の問診ですが、見ていただいてお判りいただけましたと思いますが、現段階でAちゃんは何も問題ありませんので、安心してください。」と言っていただきました。
その一言で本当にほっとしました。
大丈夫だろうとは思っていたものの、やはり保健師さんからの一言で安心できました。
続いて、電話連絡で伝えた面談を希望した理由について確認をされました。
「今回はAちゃんの行動がゆっくりなのと、言葉の理解が少しできないんじゃないか?とご心配されていたんですかね?」と保健師さん。
その質問に対して、私は電話で話したのと同様に、以下の四点について再度説明をしました。
1. 三人兄妹の真ん中で兄と妹は素早く動く中、長女はいつでものんびりゆったり行動する
2. 言葉を話すときにはできるだけかみ砕いて話さないと伝わらない
3. 砕いて言ってもすぐに行動に移さないことも多くあり、本当に伝わっているのかが怪しい
4. クラスでの一斉指示をしたときに理解が追い付いていないのか、行動に移すことができない
5. しかし、両親としては一つの個性として向き合っていて、発達の心配はあまりしていない
このような私の話に、保健師さんは次のように答えてくれました。
「先程の問診の回答の様子でもわかるように、Aちゃんの性格は何をするにも慎重に考えてから行動するタイプです。
考える時間が長い分、他人よりも行動を起こしたり、それをこなすのにも当然時間がかかることもあると思います。
しかし、物事を熟考することこそがAちゃんの個性なので大切にしてあげてください。
そうしてあげることで本人の世界が広がり、深みを増していくのでできるだけAちゃんが熟考する時間を大事にしてあげてください。
親や先生など大人側の話や意見を聞かなかったり、スルーしたりするのは「自分のままでいたい、自分の考えや思いを通したい」という表れの可能性があります。
Aちゃんが回答や返答をしないのは、Aちゃんが発言した内容に対して否定されたり、叱責されるのではないかという不安な気持ちがあるからかもしれません。
そのため、もし間違っていたことがあってもできるだけ否定せず、まずは肯定をしてあげてください。」
「幼稚園や家庭内での一斉指示に対して、聞いていない様子や理解ができていないのは、Aちゃんの頭の中に何か「ひっかかり」や「疑問」、「想像」などが浮かんでいる可能性が高いと思います。
年中くらいになると、担任の先生や親はいくつかの指示をまとめて出します。
例えば、幼稚園において先生が
①「はさみとのりをお道具箱から持ってきてください。」
②「次に、持って来た人から折り紙を取りに先生のところに来てください」という二つの指示を出します。
このような指示を出されたときに、Aちゃんの頭の中では以下のような考えが巡っている可能性があります。
『…お道具箱ってどこにあったっけ…?』、『…今日は何を作るんだろう…?』、『…前回は…何を作ったっけ?』などなど。
①を先生が話し始めたときにAちゃんの頭の中でこれらの問いや想像が生じているために、先生の②の指示が頭に入っていないという感じです。
そのため、Aちゃんは二つ目の指示が理解できていなかったり、考えを巡らせているうちに一つ目の質問も忘れてしまっているのかもしれません。」
このような説明を受け、私はとても腑に落ちました。
日頃から長女は人の話を聞いているけどどこかぼぉっとしていたり、こちらの顔を見て話を聞いているのに全く話を理解していないことが多々ありました。
このようなことが長女の頭の中にめぐっているのであれば、理解が追い付かないのは当然です。
私が深く相槌を打っていると保健師さんは続けてこう話しました。
「ただ、今はそのようなAちゃんでも成長とともにそのような問いかけや想像もだんだんとなくなったり、少なくなったりすると思います。
小学生になるとさらに要領がよくなり、もし聞いてなくても周りのお友達に聞くなど、次第に知恵がついていくものです。
なので、できるだけ今は叱責せずに『あぁ、この子は今こんな風に考えているのかな?なにか引っかかることがあったのかな?』とAちゃんの目線に降りてきて考え、成長させていってください。
是非、このような個性を大事に、潰すことなく大切にしてあげてください。
それが一番、Aちゃんの成長や世界を深めていくために大切なことです。」
保健師さんのその言葉を聞いて、思わず涙が出てきそうになってしまいました。
長女は兄妹の中でも、もともと口数こそ少ないものの、感受性が高い子でした。
ぼぉっとしているように見えたので、気づいていないようでもきっと敏感にいろいろ感じ取っていたのかな、と思いました。
長男は私の言うことなど全くと言っていいほど聞かず、毎日のように大きな声で注意をしています。
その様子をずっと近くで見ていた長女は、知らず知らずのうちに叱責や注意を必要以上に恐れてしまっていたのかもしれません。
「私もせっかちな性格なのでついつい長女をせかしたり、強い口調で注意してしまうことがあるので…気を付けていこうと思います。」と伝えました。
そんな私の言葉に、保育士さんはすかさずフォローを入れてくれました。
「でも、ご両親がAちゃんのゆっくりな行動を『個性』であるとしっかり受け止めてくれているだけで、Aちゃんにとってはすごく良い事ですよ。
しかも、Aちゃんの自己犠牲に美学を感じている部分についても理解をし、それを肯定してあげることもAちゃんの自己肯定感を高めるのにとても大切なことなんです。
確かに、ゆっくりが個性だと理解できていても毎日の生活の中ではついつい口うるさくいってしまうものです。
母親だって人間ですからね。
でも、ご両親がそれを個性だと思えているのと思えていないのでは、全く違うんです。
状況はいろいろあるけど、最終的にご両親が受け止めてくれるということが一番Aちゃんの成長に繋がっていきます。
すべての行動を受け止めてあげることはできなくても、そのような気持ちを持っているだけで充分なんですよ。」
月並みですが、本当に「ありがとうございます。」の言葉しか出てきませんでした。
保健師さんは長女だけでなく、母親である私のことまでしっかりとフォローしてくれました。
さらに、家庭でのかかわり方について保健師さんから以下のような質問をされました。
「Aちゃんはたまにおうちで、わーっと怒ったり泣いたり、感情を爆発させるようなことってありますか?」
そのことについては、きちんと伝えていなかったので私は少し驚きました。
実は、長女は普段はのんびりゆったりした性格なのですが、家のなかではすごい勢いで怒ったり、時には物を投げたり蹴ったりと暴れることがよくあったのです。
そのことを保育士さんに話すと、次のように説明をしてくれました。
「家庭内で怒りを表しているときは、外の幼稚園や集団生活で溜めてきたストレスを本人なりに吐き出しているんです。
つまり、自分の中で心の整理をしたり、リセットする大切な時間なんです。
この時間や経験を積んでいくことで、だんだんと怒りのコントロールや処理の仕方を自分で覚えていくことができるんです。」
私もこの長女の怒りの爆発問題は気になっていて、その寄り添い方を悩んでいました。
そこで「親としてはどのように寄り添えばよいのでしょう?今までは関係ないものに八つ当たりしちゃだめだよ、など注意してきたこともありました。今後は見守ってあげるべきなのか、それとも大丈夫?と声をかけるべきなのでしょうか?」と聞きました。
すると保健師さんは
「対応の仕方はどれが正解というものはないのですが、できるだけAちゃんの様子を見ながら、親御さんは怒りで返さず、見守り、寄り添ってあげるようにしてあげてください。
例えば、遠くで一人でぐちぐち言っていたら、そっとしておく。だんだんと親の近くに寄ってきてまだぐちぐち言っていたら、そろそろどうしたの?と声をかけてほしいのかな?みたいにAちゃんの様子を少し伺いながら話しかけてみてください。」と教えてくれました。
そして、以下のようにまとめてくれました。
「Aちゃんは周囲をよく観察していて、協調性もあります。
普段はあまり出さないかもしれないけど自分なりのこだわりがしっかりあるので、それを認め、大事にしてあげることで自己肯定感が高まります。
それにより、Aちゃんの本人のアイデンティティが確立し、結果的にAちゃん本人の自立や成長に最も繋がっていきます。
今はまだゆっくりかもしれないが、『個性』を尊重し、適度な声かけと見守りを大切してあげてください。」
最後に、「困ったらまたいつでも連絡してくださいね。」と言っていただき、個人面談は無事に終了しました。
結論として私は五歳児検診の個人面談で期待以上の結果を得ることができ、受診して良かったと感じました。
正直、受診する前までは「毎日見ている親の方が、子どものことをきっとよくわかってる」と思っている部分もありました。
しかし、私が予想していた以上に保健師さんは子どものことをよく理解していました。
保健師さんとの面談できたことで、私自身が日々考えていたもやもやとした長女とのかかわり方がとてもすっきりしたように感じます。
個人面談から数ヶ月が経ちましたが、長女は相変わらずののんびりさんです。
しかし、6ヶ月前までは全くできなかったひらがなの読み書きが今ではほとんどできるようになり、最近は進んで自分から本の文字を読む姿もよく見かけます。
冬休みにドリルを買ってあげると2日ほどで30ページ近くあるものをすべて終わらせたり、カルタに凝って毎日5回くらいしたりなど、ずっと拒否していたひらがなも今では大得意になりました。
保健師さんとの面談後、私は長女にひらがなを覚えるように強制することをやめ、長女が自分から興味を持ち、読んだり書いたりするまで待ちました。
すると長女は、ひらがなが読めるようになった喜びを知り、どんどん覚えていき、そこから次に書いてみようと思う、さらに声に出して読んでみようというように、自分から成長していきました。
長女の場合、学びやするべきこと、させたいことがある時には無理強いするのではなく、まずはそれを好きになってもらうことが大切だと感じました。
否定や叱責を嫌う長女は、わからないことや苦手なことに挑戦するのがずっと怖かったのかもしれません。
長女にとっては、好きになることこそが最初にして最大の一歩なのかもしれないなと、この6ヶ月ほどの成長で痛感しました。
頑固でマイペースで、手こずることも多い長女ですが彼女の「個性」を大切にして、これからも彼女の成長を一番近くで見守っていきたいと思います。