東京での育児が難しいと感じる理由

2022年3月14日

子育て

第一章 高い家賃と狭い家

日本一の大都市である東京ですが、実は子育てをする環境としてはとても難しく、問題がたくさん潜んでいるとされています。

東京にはお金持ちとされる富裕層がたくさん存在しますが、実は平均的に見ると非常に貧しい地域と言われているのです。

東京は豊かできらびやかな地域という印象が根付いていますが、それは一部の富裕層の人たちが押し上げている結果であり、本当は食と居住の支出が日本で一番高く普通に生きる為のコストが非常に高いのです。

食と居住の支出額が最も高いとされていますが、それがなぜ子育てが難しいと言われていることに繋がるのでしょうか。

その理由の一つが、他の地域と比べても圧倒的に高い家賃と狭い家です。

東京の家賃は他の地域と比べても高く、例えば2LDK60㎡の家に住もうとなると165000万円程の家賃となります。

家賃が10万円下がるだけで年間の支出は120万円程下がる計算となり、この金額を毎月の積立投資に回して20年間過ごすと約4000万円になるのです。

この金額は子ども3人以上を育てることができる金額であり、家賃が高いということは子育てのために使えるお金が減るということに直結してしまうのです。

教育費は子ども1人につき1000万円と言われていますが、実際には子どもの進路や家庭の教育方針などによって大きく異なります。

しかし、子育てにかかるお金は教育費以外にも衣服や食事、レジャー費などの日常的な生活に関わる費用も必要となり、教育費のピークとなる大学時代に向けて計画的に準備を行いたくても家賃などの生活費が高すぎるとその為の貯金は難しい為、できる限り家賃などの削ることができる出費は抑えたいものです。
東京都の賃貸物件の平均家賃は約76000円で、全国平均は53000円です。

ただし、これはあくまで全体平均であって実際の家賃については希望の間取りやエリアによっても大きく異なってきます。

そこで、家賃が高い地域と低い地域の家賃相場をご紹介いたします。

【東京都23区の家賃相場】
地域     ワンルーム(万円)  1K・1DK(万円)
千代田区   10.61        11.39
中央区    10.07        10.44
港区     10.41        11.96
新宿区    7.52        8.84
文京区    7.28        8.28
台東区    7.02        8.62
墨田区    6.75        7.97
江東区    6.95        8.05
品川区    7.49        8.22
目黒区    7.62        8.46
大田区    6.67        8.46
世田谷区   6.81        7.22
渋谷区    8.75        9.74
中野区    6.02        6.95
杉並区    6.19        6.94
豊島区    6.97        7.4
北区     6          7.01
荒川区    6.44        7.02
板橋区    5.68        6.5
練馬区    5.52        6.35
足立区    5.48        6.1
葛飾区    5.3         6.17
江戸川区   5.61        6.25

上記の数は築年数や設備は全く考慮しなかった平均値なので、築年数が浅い物件や駅から近い物件が希望であれば人気もあがり、平均値よりも最大数万円高くなります。

東京駅がある千代田区や六本木や品川がある港区は一人暮らしの間取りであっても最低10万円程は必要となり、子育てをしているとなると一人暮らしの間取りでは難しいので、より金額は高額となります。

東京都の23区周辺を丸い形で線路を繋いで走っているJR山手線から内側はかなりの高額となっていますが、その山手線から離れれば離れる程家賃は安くなりやすいです。

次に、23区外の平均家賃相場をご紹介いたします。

【東京23区外の家賃相場】

地域     ワンルーム(万円)  1K・1DK
八王子市   3.68        3.9
立川市    4.74        4.81
武蔵野市   5.76        6.34
三鷹市    5.61        6.42
青梅市    2.93        3.56
府中市    4.42        4.9
昭島市    4.08        3.85
調布市    5.01        5.87
町田市    4.28        4.21
小金井市   4.91        5.34
小平市    3.96        4.19
日野市    3.65        4.27
東村山市   3.97        4.4
国分寺市   4.64        5.09
国立市    4.89        4.74
福生市    3.41        3.91
狛江市    4.97        5.49
東大和市   3.34        4.15
清瀬町    4.15        4.16
東久留米市  5.37        4.26
武蔵村山市  3.62        3.78
多摩市    4.05        4.25
稲城氏    4.26        4.36
羽村市    3.41        3.68
あきる野市  4.26        3.64
西東京市   4.35        5.28
西多摩郡瑞穂町3.3         3.64
西多摩郡日ノ出町         4

東京23区と東京23区外とでは、家賃相場が大きく異なり、23区外が安い傾向にあります。

しかし、23区外だからといって安いということではなく、23区に近い、もしくは交通の便がいい(急行が止まる、複数線路が入っている駅が多い)と家賃相場は上がりやすくなります。

上記の数字も23区と同様に築年数や設備等は全く考慮されていない平均値なので、築年数が浅い物件や駅から近い物件を希望する場合は人気があがり、平均値よりも値段は高くなります。

次に、東京都の家族向けの区や街の家賃相場をご紹介いたします。

【家族向けの家賃相場】
地域     評価    2LDK~3DK(万円)  3LDK~4DK(万円)
江戸川区   4.65    10.6         12.7
文京区    4.57    18.9         27
世田谷区   4.49    15.3         20.7
杉並区    4.39    14.1         18.1
練馬区    4.34    11          13.1
大田区    4.26    13.5         17.8
品川区    4.15    19.5         26.6
府中市    4.15    10.1         12.4
調布市    4.05    11.2         14.4
江島区    4.03    17.3         19.7
東京都相場        12.8         17.2

東京都の相場と照らし合わせてみると、江戸川区や練馬区、府中市などは比較的家賃相場が低い傾向にあります。

しかし公園や緑の環境も多く、子育て環境に適している傾向にあるのでとても人気を集めている地域となっています。

また、世田谷区や文京区は家賃相場が比較的高い傾向にありますが、非常に教育に力を入れているということもあり補助や教育へのサポート環境が完備されている暮らしやすさを感じます。

そして、高い家賃の他にも狭い家というもの東京での育児が難しいと感じる要因の一つです。

子どもを育てるとなると、狭い賃貸アパートでは手狭となり窮屈となってしまいます。

子どもが小さい時であればあまり気にしませんが、子ども部屋はいずれ必要になるものです。

子どもに部屋を与えることで、掃除や片付けなどを覚えさせることもでき、自主性を育てることにも繋がります。

また、子どもといっても中学生、高校生と育っていくにつれて大人になり、一人になりたい時間もでてきます。

そんな時に子ども部屋というのはある意味逃げ場となり、子どものストレスを上手に発散させてあげることも出来るのです。

子どもも一人の人間であり、プライバシーを守るという観点からも一人部屋を作ってあげることは大切なことなのです。

子育て中のお母さんの息抜きや、子どもの将来の為にも出来る限りスペースは欲しいものですが、一体なぜ東京の家は狭いと言われているのでしょうか。

1980年代後半、東京23区の戸建用地は平均40坪ほどであり、地価の高まりなどもあって現在は20坪以下の戸建用地も増えてきました。

都心の土地がコンパクトになる要因の一つが、都心の土地は坪単価が高いということです。

東京の地価は2020年の基準地価で1坪343万101円となり、基準地価で考えると東京に40坪の土地を購入する場合は1億円以上のお金が必要という計算となります。

1億円を超える土地を購入できる人はそれほど多くないので、20坪以下の土地となって市場にでてきやすくなったのです。

国土交通省は「住生活基本計画」の中で、世帯人数ごとの最低限の面積と推奨面積を設定しています。

最低面積は、「健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」とのことなので、これを下回ると生活に支障が出てくるレベルということになります。

計算方法は下記の通りです。
① 単身者25㎡
② 2人以上の世帯10㎡×世帯人数+10㎡(5人以上の場合は×0.95の値)
3歳未満の場合は、0.25人、3歳から6歳は0.5人、6歳から10歳は0.75人研鑽で計算します。

4人家族の場合は、10㎡×4人+10㎡=50㎡となります。

次に推奨面積ですが、こちらは「豊かな住生活の実現の前提として多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準」とのことです。

計算方法は下記の通りで、一般型と都市型とで計算式が異なります。

① 一般型誘導居住面積水準
(1) 単身者55㎡
(2) 2人以上の世帯 25㎡×世帯人数+25㎡
② 都市居住型誘導居住面積水準
(1) 単身者40㎡
(2) 2人以上の世帯20㎡×世帯人数+15㎡
3歳未満は0.25人、3歳から6歳は0.5人、6歳から10歳は0.75人で計算する。

4人家族の場合は、一般型では25㎡×4人+25㎡=125㎡
都市型では20㎡×4人+15㎡=95㎡となります。

世帯人数ごとの最低限の面積と推奨面積を計算して、出来る限り子育てをしやすい広さを確保し子育てをしていくことが、東京での子育てを乗り越える一つの方法となるのです。

第二章 過酷な職場環境

東京都は職場環境が他の地域と比べて過酷な状況と言われています。

都道府県別のフルタイムで働く人の平均可処分時間は全国平均736分であり、埼玉県は728分、兵庫県は725分、東京都は723分、神奈川県は705分という結果となり、全国の中で最も可処分時間が長かったのは鹿児島県という結果となりました。

可処分時間とは24時間のうち、通勤、通学、仕事、学業、家事、身の周りの用事、介護、看護、買い物に関わる時間を除いた時間のことを言い、具体的には食事、睡眠、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、休養、趣味、娯楽等のことを言います。

フルタイムで働く人の一日のうちの可処分時間の平均が一都三県はいずれも低水準となっており、東京圏や大阪圏に住んでいる人は1日の自由時間が少ないという結果となっています。

1日の自由時間が短いということは、子育てに費やせる時間も短いということに繋がり、一都三県の家庭では朝から晩まで働いて、帰って寝るだけの生活の繰り返しになっている可能性があります。

では、一体なぜそんなにも自由時間が取れない環境となってしまっているのでしょうか。

① 通勤時間が長い
東京都や大阪府内へ電車で通勤・通学する人の半数以上が片道1時間以上かけて職場や学校に通っています。

東京都内や大阪府内へ電車で通勤・通学する人を対象に調査をすると、東京では、片道1時間以上かかっているという結果となり、1日24時間のうち2時間以上もの時間を職場や学校への行き帰りの時間に費やしているのです。

しかし、必ずしも電車の乗っている時間が長いわけでは無く、それ以外の時間によって通勤時間が長くなっています。

通勤にかかる所要時間のうち、電車の乗車時間以外に考えられるのは自宅から最寄り駅までや目的地付近の駅から職場までの所要時間、さらには乗り換えにかかる時間も含まれます。
自宅から最寄り駅までの平均所要時間は首都圏、近畿圏ともに約11分ほどであり、交通手段は主に徒歩となり、次いで自転車、その次がバス・路面電車の順となっています。

一方で、駅から職場までの平均所要時間は首都圏が約10分なのに対して近畿圏は約12分と少し長めとなりました。

これは、交通手段は徒歩が圧倒的に高く、次いでバスや路面電車となり自転車で通勤する人は一番少ない結果となっています。

このことから、自宅最寄り駅までのアクセスと電車を降りた駅から職場や学校までの所要時間で20分以上費やすのが平均的な通勤や通学する人の姿ということなのです。

また、電車での通勤で避けられないのが乗り換えです。

乗り換え時間にも一定の時間が必要となり、東京で働く人には乗り換えは必要不可欠となっているのです。

通勤の際に電車に乗っていない時間は乗り換え回数1回の場合は東京では25.4分、大阪では27.4分となり、電車の乗車時間以外で30分近い時間を要しているということになりました。

乗車時間では30分から35分という結果が多く、それを重ねると通勤時間はほぼ片道1時間以上となってしまい、都心までの乗車時間が30分程度の駅が最寄り駅だったとしても駅までのアクセスや電車を降りた後の徒歩、さらには乗り換えに要する時間などで通勤時間が1時間近くになってしまうという結果になるのです。

② 業務量の多さ
そして次に、自由時間が取れない環境となってしまっている要因は業務量の多さです。

日本で最大の都市となっている東京は人口が900万人を超えていて、それだけ多くの人が住んでいるのが東京都です。

しかし、それだけ多くの人が住んでいるからこそ職場環境が整っていない企業が多く存在し「こなすべき業務」が溢れてしまっているのです。

都心の人数が多いと、それだけ社員やアルバイトがやるべき仕事が多くなります。
例えば、地方で飲食店を経営していたとしても、地方ではお店に来る人の数が少なく、必然的にお給料も低くなります。

しかし、地方では生活費が安く済むので給料が低くてもあまり問題はなく、東京と比較して少ない給料であっても生活をすることが出来、それでも上手く回っていくのです。

ですが東京ではある程度のお客さんが来なければ、社員の給料を支払うことも出来なくなります。

その為、東京は職場環境が過酷と言われてしまっているのです。

東京都は人口密度が高くそれだけお店の数も多い為、結果、辛くて勤務時間が長い仕事が多くなっているのです。

では、過酷とされているブラック企業とはどういったものを言うのでしょうか。

東京都で子育てを円滑に行う為に、ブラック企業の特徴を詳しくご紹介いたします。

【ブラック企業とは】
ブラック企業とは、極端な労働時間や過剰なノルマ、残業代や給与等の賃金不払、ハラスメント行為が横行するなどコンプライアンス意識が著しく低く、離職率が高い若者の使い捨てが疑われる企業の総称とされています。

●残業時間の基準
残業時間については月45時間を超えることが恒常化している場合にはブラック企業となる可能性が高いです。

法律上、会社が命じることができる残業の上限は原則として月45時間までとされていて、1か月に22日の出勤がある人だと、出勤日に毎日残業をしたとして、平均すると1日あたり2時間程度の残業をすることとなります。

9時に所定業務が開始となる場合、8時には家を出ると、仕事を終えて家に帰るのが21時頃となり、育児に関わる時間も削られ、プライベートの時間さえも仕事に浸食され始めているような状況となります。

●労働条件に付いての基準
ブラック企業では「賃金」や「休日」、「休憩」などの労働条件が劣悪なことが多々あります。

その際のチェックポイントとしては6点あります。
(1)最低賃金を下回っている
(2)説明なく一方的に賃金を下げられる
(3)サービス残業が横行している
(4)休日が年間105日を下回っている
(5)有給休暇を自由に使えない
(6)45分または1時間の休憩時間が与えられない

(1)最低賃金を下回っている
最低賃金を下回っているかどうかはブラック企業を判断するうえでの指標の一つとなります。

最低賃金を下回っている場合には、その会社は法律に違反して低廉な金額で働かせているということになります。

(2)説明なく一方的に賃金を下げられる
説明なく一方的に賃金を下げられる場合にもブラック企業に該当する可能性が高いとされます。

会社が賃金を下げる場合には根拠が必要不可欠となり、賃金を下げる根拠は6つあります。
・懲戒処分としての減額
・降格に伴う減額
・給料の査定条件に基づく減額
・就業規則の給与テーブルの変更による減額
・労働協定に基づく減額
・合意に基づく減額

いずれにせよ説明なしに一方的に減額されたり、減額の理由が不明確であったりする場合には違法である可能性が高いです。

(3)サービス残業が横行している
サービス残業が横行している場合にもブラック企業の指標となります。

労働基準法は、労働者が残業をした場合に残業代を支払わなければいけないとしていますが、実際には東京に限らず多くの会社で十分な残業代が支払われていないのが現状です。

このようなサービス残業が横行している会社は、法令を遵守する姿勢が希薄なので注意が必要です。

(4)休日が年間105日を下回っている
年間所定休日が105日を下回っている場合にも、ブラック企業の可能性があります。

1週間の法定労働時間は40時間とされていて、1日の所定労働時間が8時間の会社では、週5日働くと40時間の労働をすることとなり、多くの会社では1週間の休日は2日程度設けられることになります。

1年間は365日÷7日=52.14週あり、1週の休日が2日あるとすると年間の休日は105日程度となります。

その為、1日の所定労総時間が8時間の会社に勤めている場合には、年間の休日が105日を下回るとブラック企業の可能性があるのです。

(5)有給休暇を自由に使えない
有給休暇を自由に使うことが出来ない場合にもブラック企業の指標となります。

年次有給休暇については労働者が自由にその時期を指定して、これを使うことができ、会社の承認は必要なく、有給休暇をどのように利用するかも労働者の自由なのです。

会社は事業の正常な運営を妨げる場合には、時期の変更をするようにと求めることが出来ますが、これは例外的な場合です。

その為、有給休暇を取るのに会社の承認が必要とされている場合や理由を言わなければ有給休暇をとることが出来ない場合には、ブラック企業の可能性があります。

(6)45分または1時間の休憩時間が与えられない
休憩時間が十分に与えられていない場合にもブラック企業に当てはまる可能性があります。

会社は労働基準法上、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくても1時間の休憩時間を労働者に与えなければいけないとされています。

その為、45分または1時間の休憩さえも与えられていない場合は注意が必要です。

●人事権についての基準
ブラック企業では恣意的な理由で人事権が行使されることがよくあります。

その際には以下の項目を確認しましょう。
・合理的な理由なく解雇される
・退職届を出していないのに退職扱いされる
・会社に不都合な意見を言うと降格や転勤を命じられる
・退職届を出しても退職させてもらえない

●ハラスメントについての基準
ブラック企業ではハラスメントが横行していて、これを解決する体制が整っていないことが多々あります。

その際は下記の項目を確認しましょう。
・パワハラやセクハラが行われているのにこれを是正する措置が講じられない
・パワハラやセクハラを相談する窓口がない
・パワハラやセクハラを相談することで不利益な扱いをされる

ブラック企業とは、従業員がブラック企業の言いなりになってしまうといつまでたってもなくなりません。

東京では地方に比べてブラック企業率が高く、生活するためにと必死に働いている人が多く存在します。

しかし、いつまでも過酷な環境で働いていると子育てに関わる時間が余計になくなり、結果仕事によって子育てを円滑にすることができなくなってしまうのです。

第三章 高額な教育費と困難な教育環境

子育てとお金には様々な問題がありますが、その中でも特に気になるのが教育費です。

東京は全国の中でも特に教育熱心な地域と言われていて、東京の人は金があるから教育費にたくさんかけられると思われていますが、実はそうではありません。

東京都民は基礎支出が高く、東京都は全国で6番目に貧困な地域とされていて、東京都は基礎支出だけでなく教育費も全国で一番高いという結果となったのです。

私立中学校は多額の学費がかかると言われていて、幼稚園や小学校から私立に通える名実ともにお金持ちであれば問題ありませんが、一般人が狙う私立中学校の学費は公立中学校の約3倍となります。

3年間で300万円もの差となり、300万円の価値があるかどうかを見極める必要があるのです。

それでは、なぜ東京都民は教育費や教育環境に対して貧困なのでしょうか。

① 公立中学校の位置づけ
東京の都心では、小学校までは公立校に通わせる家庭が多いのですが、中学になるとその数は激減し、2つのクラスしかなかったということもよく起こる話です。

これだと公立中学校に通わせることを躊躇してしまう親が増えてしまうのも無理が無く、公立中学校ならではの普通の多様性が求められなくなっているのです。

公立中学校が「私立や国立の中学校に行けなかった人たちが行く中学校」という位置づけになっていることが、東京都で子育てをしにくいと感じる要因の一つとなります。

また、電車を使うような地元を離れた学校に通うようになると子供も親も地域社会との結びつきが薄れてしまい、子どもたちが地元の学校に通わなくなることで地域社会や都市が危機的な状況に陥ってしまう可能性があります。

② 地域社会の希薄化
地元を離れ、地域社会の繋がりが薄くなっていくと成人式なども成り立たなくなります。

成人式ではその後に二次会なども開かれますが、それが成立しなくなり、子どもが大人になったころには小学生の同級生の顔をそこまで鮮明に覚えていません。

また、東京都では幼稚園が最後の砦となっているとし、小学校から私立や国立など地元を離れた小学校に通うがために幼稚園繋がりでパパ友やママ友を継続せざるを得ない状況になっている地域も存在します。

③ 地域住民との希薄化
東京都の小学校に通う子どもは、都心の真ん中にあるにもかかわらずバス通学をする児童が多いことで有名です。

通学路というのは小学生の遊び場でもあり、通学時間は貴重な時間です。

友達を待ち伏せしたり、草花を観察しながら通学したり、虫を捕まえるために寄り道をしたり、上の学年になるとお菓子を買い食いしたりと、通学時間はさまざまな発見がある貴重な時間であり、大人にとっては無駄に感じる時間でも子どもにとっては大切な学びの場なのです。

しかし、バスで通学するとなると、その大切な学びの時間が削られるだけでなく、地域の大人たちとの接触もなくなり、結果お互いを知らないままになってしまうのです。

④ 教育虐待
都市部では8割程の小学生が中学受験することが多く、それが教育虐待に繋がってしまう可能性があります。

中学受験をする家庭の全てが富裕層というわけでは無いのですが、中間層の人たちが「公立中に進学させるわけにはいかない」と感じ、経済的あるいは学力的に無理してでも受験させる家庭が多く存在します。

それは今の親世代が「下に落ちてはいけない」と脅迫観念を抱き、格差社会が広がったことで社会が二極化しているのが原因と言えます。

競争社会が激しい東京だからこそ、自分の子どもが転落することを恐れ、より強い強迫観念が働くようになってしまったのです。

そして、英語やプログラミング、学習塾などに無理をしてでも通わせ、子どもたちに時間的にも精神的にもどんどん追い詰めて「教育虐待」をしてしまう親が増えてきているのです。

東京都内では教育熱心な学区やそうでない学区は少なからず存在しますが、ひとくちに良い学区と言っても家庭の教育方針によって異なります。

いい大学に入れたいという家庭もあれば、部活動を一生懸命やっているから強豪チームの学校が良いなど、重要視するところも家庭によって変わりますが、どの家庭でも大きな選択肢になるのが「私立中学受験をするかどうか」というところです。

東京23区内の「私立中学受験率」は同じ都内への進学者に限っても22.6%で、結果不合格となり公立中学校に進学する生徒を含めると受験者の数はもっと増えることになります。

この私立中学受験率は区によっても大きく異なり、私立中学進学率は下記の通りとなります。

文京区   42.3%    江東区   25.2%    小平市   13.8%
千代田区  39.5%    中野区   24.9%    足立区   13.3%
中央区   38.7%    大田区   23.5%    葛飾区   12.7%
港区    37.5%    北区    22.2%    多摩市   12.3%
目黒区   35.1%    荒川区   21.8%    稲城市   12.3%
世田谷区  33.1%    狛江市   18.5%     西東京市  12.2%
渋谷区   32.3%    調布市   18.2%    府中市   10.7%
品川区   31.7%    三鷹市   18.2%    江戸川区  10.6%
新宿区   30.3%    練馬区   16.6%
豊島区   30.0%    墨田区   16.3%
杉並区   29.4%    国立市   15.5%
武蔵野市  29.0%    国分寺市  15.1%
台東区   25.9%    板橋区   14.9%

都心部や西側のエリアの進学率が高く、中学受験することが普通なのか一部の子どもだけチャレンジするのか大きく変わってきます。

なぜ都心部が人気なのかというと「有名中学受験塾」の所在地です。

小学生が塾に通うのであれば距離や時間というのは最重要であり、毎日の通塾はできるだけ負担がかからないことが大切です。
塾もその立地を選定するにあたって、教育に投資する価値を感じている保護者が多い地区を狙って決めていて、比較的いい環境で良い学区とされる場所に多くなります。

そこで、23区の中でも代表的な名門学区を抱える区を詳しくご紹介いたします。

① 文京区
東京で教育環境が優れているとされる文京区は、東京大学を筆頭に名門大学やその付属高校から幼稚園までが都内に多く存在し、教育に対する意識も地域として醸成されています。

国立・私立中学校への進学率も過半数に届きそうな数字であり、2人に1人が受験校に進むという非常に高い水準となっていて、それなりに高い年収の地域であると言われています。

中でも高い人気を誇る名門公立小学校4つは「3S1K」という通称で呼ばれ、その学区内の物件は物件数がそもそも高額で取引されています。

② 千代田区
文京区と同じく公立小学校の教育レベルが高いと言われている千代田区。

番町小学校や麹町小学校をはじめ港で名門校と呼ばれる名高い区立小学校が揃っています。

この千代田区の二大名門小学校から麹町中学校、日比谷高校、東京大学へと進むのが伝統的なエリートコースとされていて、同じ道を我が子にも進んでいって欲しいと希望する両親も多く存在します。

③ 港区
東京の三大名門公立小学校とされるのが千代田区立番町小学校、港区立青南小学校、港区白金小学校の3校です。

3校のうち2校を抱えるのが港区であり、古くから高級住宅街として知られているエリアの為、教育熱心な高所得層が多く存在します。

青南小学校、白金小学校も明治時代に創立された伝統校であり、千代田区と同じく日比谷高校、東京大学への伝統的なエリートコースがいまだに根付いています。

④ 文京区
文京区は他の区とは異なる「特認校制度」という学校選択制を採っています。

住所に基づいて指定した通学区域を前提にしつつも、施設に余裕のある特認校への入学を希望できる制度です。

全16校から自由に選択できるという制度ではありませんが、選択の余地があるというのは大きな特徴となります。

また、文京区は学校の建て替えも頻繁に行っていて、建て替えされている小学校が多いということは校舎の老朽化ももちろんですが区の財政状況がよく、今後も街の活性化が図れるということが背景にあります。

子どもが生まれると子育てを視野に入れた住まい選びが重要となり、重要視するところは家族によって異なります。

共働き世帯となると保育園の待機児童数、家賃相場や仕事への通いやすさなど、問題はさまざまであり、その家庭によって無理のない環境を選ぶことが東京で上手に育児をしていくポイントとなるのです。

第四章 東京で快適に育児をするには

東京で子育てをするとなると、少しでも快適でストレスのない環境で育児をしたいものです。

東京での子育ては難しいとの意見が多く、実際に子育てがしづらいとの声が多く聞こえますが、子育てにとって何が大切なのか、何を重視するのかをしっかりと確認することで、東京でも快適に子育てをおこなうことが出来ます。

そこで、東京で快適に育児を行う為に大切なポイントを詳しくご紹介いたします。

●子育て支援事情
子どもが小さいうちは、認可保育園と認可外保育園を事前に調べておき、認定こども園や保育ママやファミリーサポートなどの「子どもを預けられる施設やサービスが多く整っている地域」を選ぶことが重要です。

保育園の数だけではなく、子どもが3歳を超えてから通うことが出来る幼稚園の数や、小学生になってから通うことが出来る学童保育の数も把握しておくと安心して子育てをすることが出来ます。

共働き世帯の場合は、子どもの預け先をしっかりと確保しておくことが大切です。

仕事だけでなく、急に体調を崩した時に一時的に子どもを預かってくれるサービスがあれば、万が一の時も冷静に対応することが出来ます。

万が一保育園に入れることが出来なかった場合は、家から少し離れた認可外の保育園や幼稚園に入れるという選択肢も視野に入れておくことをおすすめします。

また、子育て支援拠点をチェックしておくことも重要です。

地域子育て支援拠点とは、就学前の子どもを遊ばせ、地域の保護者と交流できるスペースのある施設のことを言います。

地域の保護者たちと交流することで、子育ての孤独感から解放され、子どもに自宅ではできない遊びや同世代の子どもたちとコミュニケーションを学ばせながら、職員さんに子育ての相談もすることが出来る大変貴重な場と言えます。
地域子育て支援拠点は登録することで無料で利用することが出来て、子育て世代にとってありがたい場所です。

しかし、自治体の中でも場所によっては規模が異なるので事前に見学に行くことをおすすめします。

小児医療費助成金という制度も事前に確認しておきましょう。

子どもは頻繁に熱を出したり、怪我をしたりする為、病院にかかる機会はとても多いです。

小児医療費助成金とは、子どもにかかる医療の自己負担金額を助成してくれる制度のことを言います。

しかし、自治体によっては「所得制限」や「費用負担」「助成方法」が異なり、特に「対象年齢」は15歳(中学生まで)の地域や大学卒業(22歳年度末)までの地域があったりと、費用負担に関しても全額助成なのか一部助成なのかが地域によってさまざまなので、事前に調べておく必要があります。

子どもの体質によって年間にかかる医療費は異なりますが、出来るだけ手厚い助成が受けられる地域を選ぶことが、東京で快適に育児をするコツなのです。

●自然環境
子育てをする場合は公園や緑の多い街がいいという方は多く存在します。

実際に子どもが小さい時は遠くにお出かけをするより、家の近くの公園で過ごすことが多くなります。

また、子どもと日々生活する場所としてもなるべく緑や田畑が多い自然を感じられる街を選ぶことが、子どもにとってものびのびとした環境となります。

住宅街のなかの自然環境といえば、緑地や公園、農地などがありますが、街全体の緑の割合は「緑被率」というデータで調べることが出来ます。

「緑被率」とは、公園や農地、樹林などの地域における緑地の面積が占める割合で、東京都内では市区町村ごとに緑被率が公表されています。

●住環境
落ち着いた住環境で子育てすることも重要です。

向上や商店が立ち並ぶ街は、人通りや騒音の問題も起こります。

子育てをする場合は、出来るだけ静かな住宅街で、子どもが安心して過ごせる治安の良いと言われている地域を選びましょう。

また、子どもが小さいうちは仕事や家事、育児などと毎日が大変忙しくなります。

スーパーや銀行、病院などが家の近くにあることも育児を快適にする重要項目なのです。

●教育環境
保育園に始まり、小学校や中学校、高校などの評判や、児童館、習い事、塾などが充実しているかもチェックしましょう。

また、スポーツ施設や博物館、美術館などの文化施設等が整っている街も子育てにおいて魅力的なポイントです。

学校や施設だけでなく、子育て支援サービスが充実しているか、子育て支援サークルや子育て講座があるかなども、実際に子育てをしていくうえでとても重要です。

子どもは家庭内だけでなく、地域の中で育っていくという側面もあります。

暮らす地域の住民や、子育てや教育への意識の高さなども子育てにおいては必要になってくるのです。

東京で子育てを行うには、子育て支援事情や住居環境、教育環境などさまざまな点を確認する必要があります。

そこで、東京23区内での子育てにおすすめの地区3つを詳しくご紹介いたします。

① 世田谷区
通勤に便利な地域で、緑も多く、子育て世代に限らず住みたい街ランキングでは必ず上位に入るのが世田谷区です。

実は世田谷区は待機児童数が23区内で第1位となっているのですが、それだけ子どもが多く、子育て世代に人気の街ということになります。

都心へのアクセスも良く、便利なイメージの世田谷区ですが、世田谷公園や駒沢公園などの大きな公園も多く、緑被率も23.6%と練馬区に次いで第2位となっています。

また、世田谷区は農地も多い区と言われていて、「せたがやそだち」というブランド野菜があるように、農業も盛んで野菜の直売所が区内に300か所以上もあります。

都心でありながら多摩川などもあり、ゆったりとした自然を身近に感じることが出来るのです。

世田谷区の教育の特色として、小学校からコミュニケーション能力や日本文化を理解するための独自教科「日本語」を実践しています。

中学受験率は35.9%と、都の平均19.4%と比較しても教育熱が高い地域と言えます。

また、スポーツ施設や文化ホール、文学館や美術館などのさまざまな教育施設が充実していて、習い事や塾は駅ごとに豊富にあり、子どもの教育環境がしっかりと整えられた街なのです。

② 港区
高層ビルが立ち並びビジネス街が多い港区ですが、実は不妊治療への助成や出産一時金、未就学児への一時保育サービスなどの、妊娠や子育てに対する行政サービスがとても充実しています。

出生率も23区内第1位であり、子育てしやすい街として人気が急上昇しています。

都心で緑が少ないイメージの港区ですが、国立自然教育園や芝公園などの大きな公園も数多く、緑被率や一人当たりの公園面積ランキングが23区内で五本の指に入る程の緑の多い街です。

また、六本木や表参道などおしゃれな街が多い港区ですが、大通りを一本入ると閑静な住宅街が広がり、白金や元麻布、南青山などのセレブに人気の住宅街がたくさんあります。

平均年収ランキングでもダントツの1位であり、居住者も富裕層が多く、高級住宅街で落ち着いて子育てができる住環境と言えます。

教育環境でも、日本にある大使館・公館の約半数が集まる港区は外国人児童が多く、国から「国債費と育成を目指す教育特区」の認定を受けています。

全区立小学校に外国人講師を配置し、全学年に「国際科」の授業を導入しました。

さらには、区立小学校の児童、生徒の短期海外研修などの国際的な街にふさわしい独自の教育が行われています。

③ 杉並区
杉並区は、交通の便が良く活気のある商店街も多いなど、生活に便利なエリアとされています。

加えて独自の子育て支援サービスもあり「子育てのしやすい街」として人気を集めています。

善福寺緑地や和田堀公園、柏の宮公園などの大きな公園もあり、緑被率も23区内で第3位となっています。

住環境では、浜田山、久我山などの閑静な住宅街が多い杉並区。

中央線沿線は駅前に大型商業施設があり、商店街には古くからのお店とお洒落なお店が混在し、買い物環境も充実しています。

住環境と交通の便が良いうえ、比較的家賃が安いことも杉並区の人気の理由の一つでしょう。

また、独自の子育て支援サービスが特徴であり、0歳から5歳までの子育て家庭に、一時保育や子育て講座などに利用できる「子育て応援券」を配布し、各家庭が自由に子育てサービスを選んで利用することが出来ます。

また、全章中学校の普通教室に電子版黒板機能付きプロジェクターを設置しており、さらに一部の学校ではタブレット型端末も配備しました。

杉並区はデジタル教材を使ったICT(情報通信技術)教育が推進されています。

少子化や待機児童の問題など、東京での子育て環境は厳しいイメージがありますが、各区とも「子育てしやすい街」を目指して取り組んでいます。

子育てをする上で何を重視するかは家庭によって異なります。

各区にはそれぞれの個性があり、いい所も不便なところもあるので、各家庭に合った環境を見つけるようにして下さい。

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